83 爆弾娘
僕は野次馬の様な心境で家の扉を見ている。
ダルクがドアを開けると先程の太った男が顔を出す。
ダルクを見て一瞬怯んでいた、ダルクは大男で最近では髭を蓄えている。
横幅だけは負けてない太った男が先程の僕に向けた言葉より威勢が弱くなっているが。
「アニーが居るはずだ、返して欲しい」
と言った。
「返すも何も俺が連れてきた訳ではないぞ」
そう言って外の土壁に囲まれた中に建ててあるテントを見た、ダルクの目線を追った太った男はテントに気付いた様だ。
見た目的に年齢はダルクと同じか少し下位に見えるからアニーの親父さんって事は無いだろう。
きっと逃げた相手の婚約者だなと当たりを付けた、そしてそれはうちの問題ではなくアニー達当事者の問題だ、暴力沙汰にでもならなければ手出し無用だ。
流石にアニーを殴る様な事があれば話が違ってくるが…。
外から喧騒が聞こえたのだろうクリスとアニーがテントから出て来た。
男と鉢合わせた事になったクリスは顔を顰める、ゲッと聞こえてきそうだ。
後は知らんがなとダルクがドアを閉めて戻って来る、外からワーワー争うような音が聞こえてくる。
フライパンという武器を片手にセリーヌが外に出た。
「うるさいけ!」
ガン、ガン
2度程音が聞こえて4人が家の中に入って来た男二人は頭を擦っていた。
「何じゃけあんたは朝っぱらからうるさいけ!」
昨日は普通の話し方だったが興奮するとまだモンベルの話し方が出てくるようだった。
セリーヌから怒られている太った男はまだ頭を擦りながら
「すっすいませんです」
と気迫に負けて謝っている。可哀想。
「で、アニーちゃんをどうするつもりけ?」
どうやら取り仕切るようだ。
「アニーは俺の婚約者だ!ダルクさんのとこに匿われてると知って、返してもらいに来た!」
「アニーちゃんはあんたの所有物じゃないけ!」
「うちの親父の決めた事だ!文句は言わせない!」
「父親が言う事は絶対なのけ!?あんたの意思は何もないのけ!」
「もう止めて!私の為に争わないで!」
マジか、ガチでそれを聞く日が来るとは思わなかった。ただ、アニーさんよ、相手と争ってるのうちのマイマミーよ!
「そうじゃないでしょ!」
あっしまった、つい声が、出てしまった、全員が僕の顔をなんだ?と見てくる。
「あっあの、お互いのきっ気持ちとかあるんじゃない、ですか…ねぇ?」
なんとかはぐらかせたはずだ、危ない危ない。
「幼児が偉そうに何を言ってる!」
何を、僕だって若い頃にはブイブイ言わせて…ないな。美奈子さんだけだったわ、元気かなぁ美奈子さん、まだ生きてるのだろうか。(遠い目)
「クソッ、分かったこのままじゃ埒が明かない、ブリッツ・ブラウゼア・サンジェルの名に掛けて俺とお前で決闘だ!」
「は?」「サンジェル?」「ゲェェッ!?」
マジかよコイツ、サンジェルって領主の息子かよ!アニーさん良いとこのお嬢さんだとは思ってたけど、とんだ爆弾娘だったのかい!
確かにこの世界で太る程食える奴はそうそう居ない。気付くべきだった、服も確かになんか良さそうなの着てるし。
しかもマミーさっき領主の息子フライパンで頭殴ってたし、どうすんのコレ?
セリーヌは朝が苦手です。




