61 バリンの失墜
結局ヨウジさん達が山の麓に着いたのは次の日だった、高齢な人達だから2日では着けなかったのだ。
特に急ぎという訳でもないので問題はない確認したが積んである荷物も保存の効くものだし移動時間だけで考えれば本来まだ着いてない。
まずは腹ごしらえと家の中に案内されたヨウジさん達は決して裕福でもないダルクの家に驚く。
「豪華な家だけぇ」
何も無い我が家と比べて素直な感想を言い放つと、ダルクは謙遜するが比べればそうだろうなと嫌味にならない程度に抑えた。
昨日の内に獲ってきたウサギの肉を振舞って英気を養わせる、食べた事の無い肉を大喜びで食べている。
漁師のヒデさんはアクアを使えるが水はリーネに任せていた。
外に出て荷物の積んである台車を引く、嘘のように軽い、フウタがフライをかけている。
「風の精霊が手伝ってくれてるんじゃないですかね?」
と伝えると納得していた。
ブラウゼアの街まで2キロある、ダルクはどうするのが効果的か考えていた案を話す。
「まず、御三方共言いたい事は山程あるでしょうからある程度騒いでも大丈夫です、頃合いを見て私がエリンさんと商談します」
そう伝えると3人は闘志をメラメラと燃やしていた。
ブラウゼアの門に着くと門番がボロボロの服を着た見慣れない一同をチラっと一瞥するがダルクを見て通してくれる。
エリンさんの商店に着くと3人は手筈通りワーワーと騒いでいた。
「責任者を出すけ!」
「ワシ等を殺す気け!」
「どうなっとるのけ!」
番頭が相手をしている、中々やり手の番頭はエリンさんを呼ぶ気はなく3人を突っぱねている。
何事かと人々が集まりザワザワしている、ここは大通りだ普段から人の出入りは多い。
「これのことじゃけ!」
ヨウジさんがバリンの名前が書かれた契約書を見せる、マジマジとそれを見た番頭の顔から血の気が失せている。
「しっ暫くお待ちを」
番頭は急いでエリンを呼びに行く。
奥から悠然と出て来たのはエリン・ガイナンだった、番頭から話を聞いたのだろう。
ヨウジから数枚の契約書を受け取ると目を通した、サッと顔色を曇らせた。
流石エリンは海千山千の者だ、慌てる事なく
「ここじゃ人の目が多い中へ」
と店の奥に案内をする、ダルクが荷台を店の中に入れ番頭に
「この品を査定してくれ」
と言ってるのを見聞きして、この男が一枚噛んでるのを察した。
四人がエリンの後を着いていくのを見て、フウタは僕の元へ帰ってくる。
ダルクも入った事の無い店の奥に案内された応接間だろうかなり豪華な造りだった。
四人を長椅子に座らせたエリンは対面に座るといきなり頭を下げた。
「うちの馬鹿息子がご迷惑をかけたようじゃ申しわけ無い」
謝罪からスタートだった為幾分か溜飲の下がった3人だったが、それでも言いたい事は伝えた。
暫くしてダルクがエリンさん実は…と、事の成り行きを説明した。
「ふむ、人魚が使役してるのか、仲間なのかは良くわからんが、兎に角風の精霊が手伝って荷物を載せた台車が空を飛んでダルクの元へ来る、で間違い無いか?」
要点だけを集約してエリンが聞いてきた、そこ迄に至った経過は一部分以外は商人として大きな問題ではなかった。
エリンにとって必要なのはこれからも塩の取引が続けられるのか、聞いたこともない交易路である空を使った交易がこの先も出来るのかだった。
「まだ実験段階ですが、おそらく出来ると、ただ価格次第なのと村人を納得させるのに息子さんの処遇はある程度覚悟が必要かと」
空を飛ばせるのだ、納得出来なければ他の街へ持って行くと言うのだろう。
エリンは番頭のハルクを呼んだ、ハルクと呼ばれた番頭が顔を出す。
「持ち込まれた品の査定は済んだのか?」
ハルクが細々した魚の査定以外は出来ているのをエリンに伝えると
「すまんが待ってくれ」
そう言って番頭を連れ査定しに行った。




