51 モンベルの漁村
楽しみにし過ぎて何度も起きたり寝たりを繰り返したのでダルクが起きてゴソゴソやっているが少し眠い。
「ほら起きろ」
身体を揺さぶられ目を擦りながらファーッと背を伸ばした。
ほぼ真っ暗闇だ、セリーヌが魔導具を使い灯りが闇を照らすとぼんやりと視界が開けてくる。
リーネも既に起きていた、着替えは枕元に置いてあるので直ぐに着替える。
毛布を引っ剥がすと四体が顔を見せる、睡眠は必要としないのに毛布は心地良いらしい。
まだ夜明け前だがそこそこ急がなくては。
コッコ達の餌と水は昨日のうちにリーネがタップリ用意していた多過ぎない?と思った程だから問題無いだろう。
台風でも来なければアースウォールで造った格子は壊れないのも確認した。
準備は出来ているのを持ったあとはロック鳥の羽根を蔓で固定したものを羽織るだけだ。
「持ち忘れてる物は無いな?」
灯りの付いた魔導具を腰に付けたダルクが小声で確認を取る、全員大丈夫そうだ。
「アースウォール」
鍵の無いドアの前に土の壁を作った、これで誰も入れない。
事前に行き先を下見してもらったフウタはダルクに付く、魔導具の灯りを頼りに僕とリーネは飛ぶのだ。
フウタに確認を取ると
「ダイジョーV」
精霊は夜でも目が利くから問題ないそうだ。
「ストレングス」
両手に荷物を持って羽根を羽織ったセリーヌを背負う。
「フライ」「フライ」「フライ」
リーネの代わりに風の精霊がフライを唱えた。
「んじゃ行くぞ!」
「ウインド」「ウインド」「ウインド」
フウタはスピードを抑えて飛んでいるし、リーネがちゃんと付いて来てるか確認もする。
頼りは魔導具の灯りだ、何度も確認しつつダルクの後ろを飛んでいる。
「もうすぐ見えてくるよ」
フウタから声が聞こえると空が段々白くなってきた、遠くにぼんやり海と漁村が見える。
モンベルの漁村にはブラウゼアの街とは違い門番はおろか、門も無い。
全部で50軒程度の漁村が近付いて来たのでフウタに声を掛ける。
「そろそろ降りて!」
此方をチラっと見たフウタは高度を落とし降りていく。
連なってジュリオとリーネも降りていく。
スタッ スタッ
先に降りているダルクが全員の足が地面に着いたのを確認した。
セリーヌもジュリオから離れる。
少し早く着き過ぎたかも知れないが人が飛んでるのを見られるよりはマシだ。
羽織った羽根を仕舞うと漁村まで残り1キロに満たない道を皆で歩く。
漁村に住む村人の朝は早かった、早過ぎたと思っていたが、村に着く頃には海に船を出している人もチラホラ見えた。
元々住んでいた村の中をセリーヌがズンズンと進んで行く、村の中心にある他より少しだけ大きな家に向かっているようだ。
その家の前に着くと大きく深呼吸したセリーヌがドアを開け
「帰ったわ!おとんおるけ?」
と大きな声で言った。
家の中からガタガタッと音がして
「セリーヌけ!?お前何しに帰ってきたんけ!」
と、また大きな声が聞こえた。
顔を出したのは真っ黒く厳つい爺さんだった。
「この子はリーネ、こっちの子はジュリオ、おとんの孫よ!」
「こっちは私の旦那さんダルク・ブラウゼアよ、おとん」
お爺さんは四人を交互に見て目を白黒させた。
うまいな、セリーヌは緩和材代わりに僕とリーネを紹介してからダルクを紹介したのだ。
まさにジャブの後にストレートを打ち込まれた心境だろう。
ダルクも僕も何て話し始めればいいか困っていると
「わーいお爺ちゃん会いたかったー」
リーネが抱き着いた、この子最強かよ!
※ジュリオの一人称を僕にする事があります。




