41 始まりはいつもリンゴから
お腹が空いてきた、この丘に来るまで歩いて来たしリーネが空を飛んでるのも含めてそろそろ2時間は経過しただろう。
俗に言うお昼って時間になる。
飲み物はリーネが居るからほぼいくらでも飲めるが食べ物は別だ、お弁当もおにぎりもない。
パンの一つや二つ持って来るべきだったのだろう。
あっ!と思い出した、この前のゴール地点とした丘の先にリンゴの木があったはずだ。
5年前に見た限りだが、管理された場所ではなかったしまだ有れば儲け物だ、お土産に家に持って帰ったらセリーヌだって喜んでくれるだろう。
「お姉ちゃん、この間飛んだ先の丘覚えてる?そこよりちょっと先にリンゴが有るかも知れないんだけど、飛ぶ練習ついでに行ってみない?」
リンゴという甘い言葉にリーネも飛びついた、何で有るのを知ってるかなんて疑問にも思わなかったようだ。
「わーい、リンゴ!行こう行こう」
とその気になっている、無かったら糠喜びさせちゃうけどね…
そうと決まれば行動は早かった。
「フライ」 「フライ」
リーネが唱えるのを少し待って浮いたのを確認してまずはあの丘ねと指を差し
「ウインド」 「ウインド」
リーネに付いた風の精霊がちゃんと機能してるか確認をして飛んでいく。
フウタが三体を連れて付いてくる。
丘にはすぐ到着しそこから少し上昇してリンゴの木を探す、確かあっちに…
あった!ポツリと一本だけのリンゴの木が見えた、時期も良さそうだ所々赤い実が見える。
「お姉ちゃんあっち、あっち!」
そのまま見付けたリンゴの木に向かって飛んでいくと浮いたまま赤く美味しそうなリンゴを探し二つもぎ取る。
降りてリーネに一つ渡すと一度服で磨いてから齧り付く。
リーネも同じように一度服で磨いてから齧り付いていた。
「甘くて美味しい!」
「おいしいねー!」
ほぼ同時に歓喜の声をあげる。
四体はイモムシを見付けて突付いていた(やめてやれ)
暫く夢中で二人は食べている、久々に食べる甘い果実は一つじゃ足りなかった。
もう一つ食べようと浮いて美味しそうなリンゴを探していると。
西の空に赤い点が見えてきた…
瞬間的に脳内に警鐘が鳴り響く、ヤバい、リンゴに気を取られていて忘れていた、ロック鳥だ!!
そうだ、前に見た時もこの辺りで見掛けたんだった。
慌てて降りてリーネの手を取り木の陰に隠れる、どんどん赤い点が大きく見えてきた。
隠れながら見ているがダメだ完全に此方を視認してるようだ、真っ直ぐ向かってくる。
リーネも気付いたようで小さくヒッと声を漏らす。
「お姉ちゃんはここに隠れていて」
「ドッさんはお姉ちゃんを守ってくれ!」
ドッさんにお姉ちゃんを守るように指示を出すと頷いてアースウォールで土の壁を出し囲む。
「リーネは土の壁で囲まれ暗くなった中で初めて知った恐怖にガタガタ震えている」
完全に狙いはジュリオ達だった、もう既に目前まで来ている、とんでもなく巨大だ!
翼を広げてる姿は5メートルを越えてるように見える。
ここら辺りにはこのリンゴの木しかない、そしてこのリンゴの木の下には幼いリーネがいる、ここを戦場にする訳には行かない!
「フウタ、ヤミー、ライ、援護して!」
「ストレングス、フライ、ウインド」
いいだろう、お前の土俵に乗ってやるよと木の陰から飛び出した。




