37 黒毛玉
帰路の途中に気になった事をダルクに投げ掛けた、既に道標は見えている
「お父さんは付いてる闇の精霊に名前付けないの?」
「ん?黒毛玉の事か?だから黒毛玉って呼んでるじゃないか」
何を当然の事を言ってるんだと闇の精霊を見ながら返す
えっ!?と驚いたのは闇の精霊だった。
途端にダルクから魔素がゴッソリ抜けて闇の精霊に入っていく!
ダルク以外の一人と一体が見掛けの通称だと思われていたものが名前だと判明した瞬間に名付け効果が作用した。
「オエッやたら気持ち悪い」
魔素不足になってフラフラしているダルクをフウタがフライで浮かせ両手をジュリオが持ち、両足をリーネが担当して家迄運んだ。
いつの間にかトゲトゲゴムボールになっている黒毛玉が主人の枕元に居た
目線がぶつかると話し出す
「アイヤーまさか名前だとは流石に思ってなかったアル」
絶妙にインチキくさい口調で喋ってくる
ダルクは黒毛玉の事をずっと前から見えていた程度には親和性が高かったようだ。
素朴な疑問を投げ掛ける
「なんでお父さんに付いたの?」
無関心な精霊が人付きになる原因が知りたかった、これは良い機会だ。
「はぐれ狼に食べられそうになった時に助けてもらったから興味をもったアル」
あぁこれ絶対にたまたまだわ
黒毛玉に絶対絶命の危機を救ってもらったダルクの過去は何度も聞いたことがあった、そのおかげで僕らが今ここに生きてるんだが、大本はたまたまだった。
心配そうに主人を覗いてるトゲトゲゴムボール姿の黒毛玉には黙っておこうと誓う
他人に魔素を纏わせる事が出来るなら、譲渡する事も可能なのか?ついさっきの事を思いながら考察する
「水、水をくれ」
リーネがコップに水を汲みパタパタ近付いてくる、これは元々アクアで造られた水だ。
ストーンバレットの時にも気付いたが足元にある石を浮かせて使用する訳じゃない、魔素が固まったものを生成して飛ばしていた。
もう一度コップの水を見る、リーネがアクアで作った水は山の湧き水より美味しく感じる、これも無から魔素で作られてるよな??
渡されたコップを手に取りダルクが水をゴクゴクと飲み干していた。
「お姉ちゃんもう一度汲んできてくれる?」
うんと頷くとリーネがもう一度水を汲んでパタパタと持って来るのを受け取り魔素を流す、質量のない魔素はコップの水を溢れさせること無く蓄積されていく
こんなもんかと魔素を流すのをやめ、試しに一口飲んでみる美味しい、いつもと変わらない味だ。
水ソムリエなんて肩書のある人には違いが分かるのかも知れないがぶっちゃけ全く分からない、でも魔素を多く含ませてある
「お父さんもう一杯お水飲んで」
飲んだばかりだから要らないとは言わせない程ジュリオはグイグイ圧を強める
受け取って飲み干しもういいか?とまた横になる
これできっと大丈夫とまだ心配してる黒毛玉の頭をジュリオはポンポン叩いた。
セリーヌが食事の支度をしながらもチラチラ夫の身を案じて見ているので
「もう大丈夫なはずさ」
僕が言うならもう平気なんだろうと謎の安心感を覚えたのか料理に集中する
リーネに視線を移すと他にやる事が無いのだろう、教わったフライを使ってふわふわと飛んでいた
いつもの四体はまた相撲を取っている、今日はライとフウタが取り組んでいる、中々良い勝負に見えた。
「リチャードさんの所へ行ってくる、すぐ戻るから!」
セリーヌの反対を聞く前に外に出て一番下にある家へと進む、窓から見える部屋が明るいから居るだろう
コンコンとドアをノックした。




