36 風魔法でビューン
取り敢えずリーネには伝えておくかと声を掛ける。
「ねぇお姉ちゃん、新しく風の精霊がお姉ちゃんに付いたよ〜」
「え?」 「はぁ?」
リーネとダルクが同時に声をあげる。
「えーうそぉ〜嬉しい!」
ぴょんぴょんと飛び上がって喜んでるリーネを尻目に、父親はコイツまたなんかやったな?と僕に目を向けた。
僕じゃないし!今回のはフウタが連れてきた風の精霊が気に入っただけだし!
助けを求めようとフウタを見るとウチの四体は棒を持ってワーワーチャンバラをしていた。
この四体は個性が強い、人付きになるとこうなるのか?名前があるからか?
家族の精霊を見ると特別な個性は見られなかったからきっと名前だなと当たりをつける。
「ともかく、戻って来たんだろ?精霊だったらさっさとやる事終わらせるか」
ごもっともだ、チャンバラしていたフウタを持ち上げダルクに付ける。
「ストレングス」
リーネを背負う、ヤミー達三体も乗っている少しリーネの方が大きいが問題無かった。
「フライ」 「フライ」
ふわふわと地面から足が離れる。
「おおっ おっと おぉ」
変な声がダルクから漏れるが気にしない。
「ウインド」 「ウインド」
風に方向性をつけて身体が宙を昇る。
「あまり高く昇る必要はないぞ!見られる可能性が無いこともない」
それもそうだと5メートル位のところで昇るのをやめる。
「どの程度コントロールできるんだ?」
聞かれたので木を起点にぐるぐる回ってみる。
「すごぉーいすごいねー!」
語彙力をなくしたようにお姉ちゃんがキャッキャッと楽しんでいた。
「この先の丘まで競争ね!」
フウタにそう伝えると
「おいらが勝つけどね」
「んじゃ、用意〜ドン!」
こういうのは言った者勝ちだと先にビューンと飛び出すと慌ててフウタも着いてくる。
遮る物は一つもないから直線を猛スピードで飛んでいると直ぐに丘が見えてきた。
いつの間にかフウタの付いたダルクが前に見えている、流石は風の精霊と感心する。
「そこでいいよ!」
フウタに聞こえるように声を張り上げると徐々にスピードが落ちるので此方も落とす。
リーネはキャッキャッと喜んでいるが、ダルクは初めて体感するスピードに青ざめていた。
とんでもないスピードだ、これなら本当にひとっ飛びで着くだろう。
「わっ分かった、さっきの木まで戻ろうか、今度はもう少し抑えて飛んでくれ」
そう指示を出すと皆で木に戻るのだった。
「あ〜楽しかった!」
リーネが開口一番話すと思い出して続ける。
「風の精霊様が付いたのなら私も自分で飛べたりする?」
んー確かにフライやウインドなら僕が教える事も出来るし、指導が出来るなら簡単に覚えられるんじゃないかな?
「お姉ちゃんこっち来て」
近付いたリーネの手を握ると説明を始めた。
「魔素を全身に隈無く包む感じで」
「フライ」
ふわふわとジュリオの足が地面から離れていく。
んーんー んー
コツがまだ掴めないリーネに一度おりて手解きをする。
「んーとこんな感じで魔素を覆うんだよ」
リーネの身体を僕の魔素が包む、他人の身体に自身の魔素を這わせるのはとんでもない技術だったが、誰もその事には気付かなかった。
「あっ何となくわかったかもー」
僕の魔素の下からリーネの魔素が自身の身体を覆い始めたので魔素を解除する、足のつま先から頭のてっぺんまで包み込んでいく
「んじゃその状態でフライを唱えて」
「フライ」
リーネの身体がふわふわと地面から離れていく
浮いて重みの感じないリーネの両手を握ってぐるぐると回りだした。
「やったねおめでとう!」
「あははははやったー」
独り除け者にされているダルクが規格外になりつつある長女を見ながら溜息を吐く、ガシガシと頭を掻いて
「帰るぞ」
一言だけ伝えると帰路につく。
黒毛玉がポンポンとダルクの頭を叩いていた。




