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27 ダルクの追憶

5歳になった時、ダルクが礼拝堂で親和の儀を行うと闇の精霊との親和性が高いのが分かった。


父親はとても喜んでくれた、闇魔法が狩人にとって如何に有利か知っていたから。


喜びも束の間、問題が発生した。


闇魔法はその性質故に攻撃魔法を覚える場合必ず指導者を必要とするのだが、その費用が莫大だったのだ。


大型の獣の毛皮を何百枚卸せば費用を払えるのだろう?考えるのも馬鹿馬鹿しい金額だ。


父親のウィル・ブラウゼアは狩人として優秀だった。そんな優秀な狩人でも()()として稼ぐ金には限界がある


ウェルは非常に信仰深い人だった。クロノス様ではなくアルテミスという狩猟の女神様だったが


「必要以上に穫れば必ずアルテミス様の怒りを買う」


それが口癖だった。そんなウェルは目標に達したら、目の前に獲物が出てきても危険が及ばない限りは獲らない、子供でも仕留められる距離に居てもだ。


そんな一家はけっして裕福ではなかった、日が悪く獲物が獲れない日だってある、天候が悪く狩猟に出れない日だって当然ある。


そんなウェルと暮らしに嫌気が差した母親はとっくに出て行ってしまっていた。


その日はダルクの12歳の誕生日だった


「遅くなってすまんな。」


ウェルがそう言って初めて誕生日プレゼントをくれた、何だろうと開けるとソレはブラインドの魔法が書かれた魔導書だった。


滑稽だ、書さえあれば何とかなるとでも思っているのか…。


ダルクは文字も読めないというのに。


今直ぐ父親の期待に応えて猛勉強したいのにそのスタートラインにすら立てないのだ


10歳の頃から狩猟の手伝いとして週に3回ウェルに付き添っている、3日は家事や罠等の修理や整備だ、残った1日は朝から礼拝堂の清掃だ。


神父様やシスターの暇を見付けては字を習う


忙しそうな日は商家に行って手伝い駄賃を貰うと質の悪い紙を買った、同じ歳の坊っちゃんに犬になれと言われれば犬になって


ワンワン ウ〜ワン!


と吠えた。


辛酸だって舐める、恥なんて金になるならいくらでもかく、スタートラインなんて作れば良い、金をくれる商家の坊っちゃんの機嫌を損なう訳にはいかない。


丸一年そんな生活をしていたら家に借金取りが来る、どうもあの魔導書の代金が元だった。


「すまないなダルク」


ウェルは本当にすまなそうに目を伏せてダルクに謝った。


ブラインドは補助魔法に分類されるから、指導よりは安いと言え、魔導書は高価な書物だ、大型の獣の毛皮数十枚分の金額だった。


ウェルは狩人を辞め冒険者になった、最初は凄腕の弓使いだと持て囃されたようだが、ウェルの縛りが露見されると直ぐに爪弾きとなる


そりゃ冒険者なんて一攫千金狙う奴等ばかりだ、金になる獲物をやすやすと逃がす奴は凄腕だろうがその辺の石ころ以下の価値しかないだろう。


そうして、ソロでドンドン危険な任務ばかり受けるようになる


魔物や盗賊討伐何時死ぬか分からないような任務だ、なんせ指揮官が無能なら突っ込めと言われて終わりだ。


ダルクが14歳の誕生日を迎える数日前にやっと闇魔法のブラインドを覚える事が出来た。


ダルクの誕生日を一ヶ月超えた頃ウェルの遺品である弓と矢筒、金貨が数枚戻ってきた。


盗賊の狩猟と刺し違えたようだ、弓使いなのに前線で。


金貨数枚で借金は消えた、残ったのは銅貨数枚とこの家と狩猟道具、それと魔導書だけだ。


全てを捨ててやっと使えるようになった魔法を一番見て欲しかった人に見てもらえないなんて



「クソ親父!!」


生まれて初めて父親を悪く言った日だった。


―――――――――――――――――――――――


「ところでレーネ、レーネは何と話してるの?」


「ん?お父さん見えない?ジュリオがね、ここに水の精霊がいるって言うから毎日お話してたら見えるようになったの!」


「そ、そうかレーネところでその水の魔法はどうやって覚えたの?」


「これもね、ジュリオがね、精霊さんとお話してこうすれば使えるって聞いたって教えてくれたの!」


あいつ本当になんなの?我が子ながら凄すぎじゃない?俺の苦労とか何だったんだろう。


この気分を久々に味わうとは、息子に負けた気分になったダルクが犬の遠吠えを真似して吠える、


「ワォーーーーン。」


「あはは何それお父さんあはははは」

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