25 ジュリオ親和の儀
家族四人揃って礼拝堂に着く、父親のダルク・ブラウゼアが明るいうちから一緒に居る事は真冬と天候が酷く外に出れない嵐の日以外は殆ど無かった。
夜が明ける前から狩りの準備をして薄暗くなる少し前に家に戻り、道具の手入れをして終わる頃にはどっぷり日が暮れている
寡黙だが家族思いの真面目な父親であるダルクをジュリオは尊敬していた。
重雄として生きてきた実年齢を加えれば人生の半分どころか1/3に満たなくともだ。
ドアを開けて礼拝堂の中へ入ると神父様が既に待っている、他は誰も居ない、光の精霊は何体か居るが人は居なかった。
親和の儀は秘匿性を高める為に神父様と家族しか入れないような処置の為だ。姉であるリーネの親和の儀の時に来て名前を聞いた覚えはあるが2年ぶりだ、既に忘れている。
「ゼーレ様ご無沙汰しております。」
ダルクが一家を代表して挨拶をする
そうそう、そんな名前だったゼーレ様だったなぁ。ダルク、セリーヌ、レーネが胸の高さで手を組み跪く、慌ててジュリオもそれに習って同じポーズを取る
「クロノス様へ祈りを。」
神父様が厳かだが優しい声で祈りを促す
クロノス?確か時間の神とかじゃなかったっけ?ウーンうろ覚えだがメジャーな神様だったはずだ。
2年前は気付かなかったな
「顔を上げ、立ち上がりなさい。」
言われた通り顔を上げ立ち上がる
「ジュリオ・ブラウゼアは前へ。」
名前を呼ばれたので慌てて神父様の前へと進む
「本当に大きく育ちましたねジュリオ、瀕死のあなたをダルクが抱えて訪ねて来た時の事を、今でも昨日の事の様に思い出します、あの日あの様な奇跡に立ち会えたのは私の人生でも初めての経験でした。」
うん、知ってるけどね!
「私が話しても問題ありませんか?」
と神父様がダルクに話を振ると
「はい、神父様どうぞお話下さい。」
ダルクは畏まってそう応えた。
コホンと咳払いをしたゼーレ様は物々しくそれでは、と話し出す
「あの日あなたは息を引き取ったのです、私が使用できる中級回復魔法のヒーリングの効果も虚しく…私自身もダメかと諦めた時、クロノス様の像が光り輝いたのです。
驚いた私はクロノス様の像から光が消える迄見て居ました、その後赤子だったあなたが息を吹き返していました。」
像が光ったとか流石に気付かなかったよ、なにそれ怖い
「そんな奇跡の子が次はどんな奇跡を見せてくれるのか楽しみですね。」
ちょっとハードル上げないでよね!振り返ると両親は涙を流しているし、リーネは初めて聞いた弟の死と復活にガタガタ震えていた。
「さぁジュリオ・ブラウゼア此方の魔導具に手を置きなさい。」
ここに手を置けと言わんばかりに手の形をしている台とその先に繋がっている8つの透明な玉が付いている魔導具だ
ジュリオが手を置くと一瞬8つ全部が点灯して焦ったが、残ったのは4つ緑黒紫茶だった。
ですよね~結果を最初から知ってるジュリオは苦笑いをしていると
神父様はそんなまさか!?と自分自身の手を台座に置き調べる、付いたのは白だけだった…。
「そんなまさか…ダルクさん此方に来て魔導具に手を!」
呼ばれたダルクが台座に手を置くと玉は黒が付いた
「そんなまさか…セリーヌさん台座に手を、だいぶ焦っているのか神父様は端折って言う」
呼ばれたセリーヌが台座に手を置くと玉は茶が付いた
「そそんなま、まさかレーネさん次お願いします!」
壊れたラジカセみたいに神父様がレーネを呼ぶと
呼ばれて我に返ったレーネが台座に手を置くと玉は青が付く
「ももも、もっもう一度ジュリオ台座に手っ手をお!」
パパパパッと玉は緑黒紫茶が付いた
魔導具が壊れている訳じゃないのを確認した神父様は2度目の奇跡を目の当たりにするのだった。