24 セリーヌとリーネ
「くぅ~ここからが一番大変だった話なのにぃぃ!」
黒紫茶色の三体が腕を組んでウンウンと頷く、主はジュリオだが三体はフウタの手下の様に従う。
黒い精霊を(ヤミー)紫の精霊は(ライ)茶色の精霊には(ドッさん)とジュリオは名付けた。三体は其々闇、雷、土の精霊でフウタが暇つぶしに連れて来てジュリオとの親和性が高く人付きになった精霊達だ
ドッさんだけ名前の毛色が違うのは言うまでもなくドッシリしているからだ。
「僕の目が見えるようになるまで2ヶ月ちょっと待ったんだろ!」
ヤミー、ライ、ドッさんをフウタに放り投げるとグエ、グエ、グエッとフウタの上の枕に積み重なる
三体の重さ(主にドッさん)にフウタが潰れるのを見てケラケラ笑いながらごめんごめんとフウタを引っ張り出す
「しげ、ジュリオ幼くなり過ぎじゃない?」
というのも赤子の時から殆ど泣かない、半年もすれば単語を喋り、1歳の頃にはそこそこしっかりした文章で話しだし、イタズラも無ければ嫌々もない幼児にしては落ち着き過ぎた息子をジュリオの母親であるセリーヌ・ブラウゼアが心配したからだ。
「母親に心配かけられないからね!」
ヤミー、ライ、ドッさんが手をパチパチ叩く、どうやら人付きの精霊は感情が豊かになるようで街で見掛ける精霊とは一線を画す存在だ。
フウタは最初からその傾向があったが、ジュリオとの付き合いで話す内にもっと感情豊かになっている。今では人の言葉も理解している程だ。
ジュリオは重雄だった頃から精霊語を日本語へと変換して聞こえていたが、2歳を過ぎた頃に此方の人の言葉で聞こえるようメディアス様にお願いしたらすんなりやってもらえた。
また知識の書の1ページを使う事になってしまったが、幼児がどこの言葉とも分からない言葉をペラペラ話してるのを誰かに聞かれたら都合が悪いからね。
仮に元の世界に戻れるといった話があっても戻る母体はとっくに溶かされているし、5年も経ってるから居場所もないだろう。
「ウインド」
ジュリオが手を伸ばし呟くとそよそよと気持ち良い程度に流れ出した。
ログハウスの入り口がゆっくり開くと乾いた洗濯物を両手に抱えた女の子が中へ入ってきた。
二つ年上のお姉ちゃんであるリーネ・ブラウゼアだ。整った顔立ちで少し日焼けしているリーネはジュリオを見付けるとにっこり笑って言った。
「ジュリオ、お姉ちゃんにも風くれる?」
「はーいどうぞ〜」
ジュリオはリーネに手を向けウインドを唱える、風が吹き涼しそうなリーネを見ると
「ありがとうジュリオ」
喜んでくれた、元の世界の曾孫と同じ年のリーネをジュリオは本当に可愛く感じていた。
弟なのに爺目線なので両親は時折首を傾げることもあるが、ジュリオが直ぐに修正するのでお姉ちゃん大好きな弟で済んでいる。
リーネには青色の精霊、水の精霊が付いている。
元々はフウタが暇つぶしに連れてきた内の一体だがジュリオには親和性が足りなかったのか興味無さそうにしていた所、リーネを見つけるとテクテクと歩いてリーネに付いてしまった。
寧ろ喜ばしい事なのでジュリオは手を叩いて祝福した程だ。
水の魔法は非常に重宝されるのだ、ジュリオの知る限り街には二人水の魔法を使える者が居るが精霊付きではない。
4つしかないこの山の麓の集落には当然一人も居なかったのだ、山を登った先の湧き水を汲みせっせと溜める必要も、街にいる二人の元へ水を買いに行く必要もなくなった。
涙を流して喜んでたのはセリーヌだったけどね!