22 思わぬ転機
「あぁそうだった…これも含めて報告しなきゃ」
苦い顔をしながらフウタがクレーターを指差しながら言う
上級攻撃魔法のエアーバーストで作ってしまったクレーターと名前、姿形の変化の経緯だろう。
フウタを見る限り凄く嫌そう。笑いながら後押しをする
「ガロレンが何かあったら報告せよって言ってたし、これも報告しないとダメだろうね、なぁに怒られる時は私も一緒に怒られるから。」
そう伝えると渋々とだが納得したように
「じゃあ行ってくる!ウインド」
突風が吹きフウタは飛んで行ってしまった。
「待ち合わせ場所を…あぁ」
待ち合わせ場所を決める暇もないまま既に小さくなってしまったフウタを横目になんとかなるさと首を横に振ると門へと歩いて戻る
途中門番が重雄を追い越してもう一人の門番にワーワーと広場を指差しながら何か伝えていた、顔色は変わらず悪かった。
「すいませんでした、本当に。」
見えてはいないだろうが門番に腰を折りながら謝罪するとアヴェーナの街へと入ろうとする、そこに薄着だが獣の皮の様な物を着た男が走ってきた。何やら大事そうに包んだ物を両手に抱えていた、この男の顔色も非常に悪い。
荒々しく門番に声を張り上げると門番も街の方を指差し応じたかのように声を掛ける
何を言ってるか全く分からないが緊迫してるようだった。
通行許可を得たのか男が街の中へ走って行く、重雄も何があったか気になり後を追う
大通りを超えた先に、質素だが立派な建物があった。脇目も振らず男がその中に飛び込むと 間髪を入れずに重雄も続いた。
中へ入ると走る事を止めた男はそれでも早足で何やら奥に置いてある像の前へと進み声を上げる
後を追う途中、白い精霊が何体かいる。ギョッとした形相で此方を見ているので
「大丈夫、私はガロレンのお墨付きさ」
と声を掛けると目を丸くするがガロレンの名前が出たからか警戒を解いたかに見えた。
奥から神父なのか牧師なのか分からないが見た目では聖職者であろう人物が出てきた。聖職者に付いている精霊も居た。
男が大事そうに持っている包を開くと中から赤子が顔を見せたが土色をしていた。まだ産まれたばかりだろう。赤子は泣く元気もないのか黙ったままだ。
髭を生やした男性の像、その前にある供え物を置いてある机の空いてる場所にその赤子をそっと置いた男がその像と聖職者を交互に見据えて祈るように手を合わせている
聖職者が赤子に手を当てて何やら唱えると、温かな光とでも言うような、白とオレンジの混ざった色をした光が赤子を包む
暫くそうしているのを隣で重雄が見ていると赤子から何かが抜けてきた、いや抜けてしまった。それは赤子の魂なのだろう。
赤子の魂は目の前にある髭を生やした男性の像の中へ吸い込まれるように入っていった。
「あぁこんな小さな赤子が…。」
重雄が呟くと同時に聖職者が首を横に振り手から光が消えた。
男が泣き崩れ頭を床につきドンドンと拳を床に落とす
何も出来ない重雄はせめて撫でてやろうかと赤子に手を伸ばし頭に触れる
と、
ズズッズズッ
抗えない力で引き込まれる
ズズッズズッズズッズズッ。
「えっ?えっ?ええ〜っ!?」
重雄が赤子の中に入ってしまった。
読んで下さり有難うございます、次のエピソードから展開が変わります。




