20 精霊の生態
素朴な疑問として、じゃあどうやって増えるのか?これは簡単だった、魔素が必要以上に溜まるとポンッと産まれるそうでフウタも気付いたら居たといった形だ
住処へ行かなければならないと本能が知っていて必ず一度は向かうらしい、途中で踏まれて消滅したり食べられる事もあると言う。
人以外には普通に見えるし干渉もあるようだ。
メインはガロレンの居る住処で種属毎にそれぞれの住処があるが、ガロレンの住処へ直通のゲートがあり必ず一度行くそうで、それ以外は好き勝手出来ると言う、ガロレンに命じられない限りだが。
魔素は人や鳥、魚、獣、虫、魔物それぞれから得る事も出来るそうで、人に付いてる精霊は何だ?と聞けば
「人だけじゃなく獣とかにも付くし気に入ったんじゃない?知らないけど。」
との事だった。
個として完成されている様にも見える精霊はある意味非常に不安定な存在だった、魔素以外特に必要としないので欲もなく、行動は大抵何となくだった。
フウタがリンゴを落としたのも何となく落としただけで行動に意味は無かった。
怒っていた木の精霊や喜んでいたフウタを見ると感情はあるようだが、善でも悪でもないのだろうと位置づけた。
欲らしい欲もないので生に執着しない個体も多く、勝手に生まれてくるが必要以上に増えないのもそういった理由からだったが20年に達していない若い個体は本能的に生きる事を選ぶようだ。
話してる内に夜が明けてきた。
まだ聞きたいことは有るが聞いてもフウタは知らない事の方が多い。
今日はこんなもんかと先程した約束を守ろうかと外に出ようと提案する。頷いたフウタが唱える
「ウインド! はっ?あわわわわぁ」
突風が吹いたように見えフウタが飛んで行ってしまった。
慌てて飛んでいった先へ走って追いかけると門の近くで転がっていた
幸い怪我はしていないように見える
「これも知ってるウインドじゃない!」
やはり強化されているようで調整が出来なかったみたいだ。
フウタに怪我がない事に安心した重雄は取り敢えず外に出ようと促した。
門へと歩くと後ろをぴょんぴょんと付いてくる、どうやら今度は魔法を使わないようだ。
早くなり過ぎないように、後ろを気にしながら外に出て周囲を見渡すと、特に何もない広場を見付けた。
「あそこにしようか」
指を差しフウタに伝えると、フウタはもう一度ウインドと唱え突風が吹いた
今度は上手く調整出来たようで重雄の指した広場付近に着地し手を降っていた。
「やっぱ便利だよな魔法」
そう呟くと突風が吹いた事で門番が何か話しているが、聞き取れない。
あれ?と思いながらそれ以上門番が話さないので首を傾げながらフウタが飛んでいった広場へと歩みを進めた。
広場に着いた重雄がフウタに今あった疑問を投げ掛けた。
「門番の言葉が分からなかったんだが?」
門番?首を傾げて門番が何か知らないフウタに門番を指しあの人の言葉だと伝えると
「人の言葉はおいらも知らないよ?精霊語しか分からないよ?」
精霊語!ハッと思い返せばガロレンは知識の書の事を、今一番必要なことに対して答えを見出すものと言っていた。
あの時一番必要な事はガロレンが重雄の言葉を聞き取れるように精霊語として変換して聞こえるようになる、そして重雄にも精霊語が聞き取れるように日本語として聞こえる事だ、重雄の思っていた此方の世界の言葉全般ではなく、精霊語限定だった。
「うわぁそういう事かぁ」
めちゃくちゃ便利といったものではなかったが、それでもガロレンやフウタと会話が出来る非常に貴重な品を使わせてしまったのでここは有り難いと考えないとな。
そう思い直してソワソワしてるフウタに
「お待たせ」
と声を掛けた。




