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18 名付けの効果

「何か抜けた!」

「魔素が入った!」


 ほぼ同時に一人と一体が声を上げた。


 抜けたものが魔素と気付いてもなかった重雄は、特別何がどう変わったという事も無かったがフウタの変化は劇的だった。


「トゲトゲゴムボールみたい。」


 元の世界の記憶から似た物を引っ張り出し伝えたが全く伝わらない。


 フウタは困惑して自身の身体をペタペタと触っている。


「何ていうか、ガロレンに少し近付いたって言えば分かるかな?あぁでもまだそこまでトゲトゲしては居ないよ。」


 外はまだ暗いままで重雄と似た所もある精霊であれば、姿形を映し出して見る事は難しいだろうと判断した重雄が客観的な意見を伝えた。


 フウタは先程まで目の前に居た偉大な長の姿を思い浮かべた、途端に滝のような汗を流し始める。


 ヤバいこれ完全に報告しなきゃならないやつだ、ガロレンが去って数分の間にやらかした事に気付いたフウタだった。


 本来であれば名前を付けるのはガロレンより上の存在の精霊王メディアス様が統治者に名付けるパターンと、親和性の高い人付きになりパートナーと共に成長して絆を深め、更に精霊が見えるレベルまで己を高めた者が名付け親になってくれる2パターンしか無いらしい。


 努力を重ね一歩一歩進んでも宝くじに当たるような確率を突破しなきゃ名前は持てないものだが、ガロレンに命じられ()()()()になり、最初から精霊が見えていた重雄が言葉まで分かって会話が出来る迄深く通じてしまう。


 重雄本体がイレギュラーな存在であり魔素の塊な為に誰よりも高みにいるので起こった有り得ない事故だった。


「ん〜だけど成長って悪い事じゃないでしょ?結果オーライで良くないか?ガロレンには呼びづらいからって名前付けられたらこうなっちゃいましたって報告したら良いよ、怒られたら一緒に謝るし。」


 重雄にそう言われると、フウタも何だかそんな気になってきて寧ろ有り得ない程の超ラッキーなのかもと思い始めるのだった。


 そもそもアヴェーナ地方の住処にはガロレン以外の名前持ちは誰も居ないのだ、このあいだ馬鹿にされた同類のあの子にだって二度と馬鹿にされることは無いだろう。


 懸念すべきはガロレンに叱られる事だが、重雄が庇ってくれるみたいだし…。


「しげじぃ〜今後共宜しくお願いします!」


 結果的にフウタが重雄に超絶懐いた。


 外見は劇的に変化があったとして、性能(なかみ)はどう変わったんだろうね?


 重雄が疑問を投げ掛けるとフウタは今気付いたとばかりにあっと声を漏らす。


 フウタが説明を始める


「この間しげじぃに放っちゃった魔法は風の中級攻撃魔法で、エアシュート · エアーサイクロン · エアーバーストの順で初級、中級、上級と威力と範囲が上がるんだ」


 成る程前回のはエアーサイクロンという風の中級攻撃魔法だった訳ね、ワチャワチャ聞こえた言葉の意味が分かり重雄がウンウンと頷くと続けてフウタが言う。


「で、一度見せた同じエアーサイクロンをそこの街路樹に放つからしげじぃも違いを見てほしいな」


「分かったよフウタ」


 名付けられたばかりで改めて名前を呼んでもらったフウタは力が漲るのを感じた。


 両手を前に出し街路樹に狙いを定める。


「エアーサイクロン!」


 途端に前が見えない程の土煙が舞い上がったメキメキメキと音が鳴りドスンと響いた。


 やっと視界が開けると重雄の太腿の太さほどある街路樹が根元から折れていた。


 前回は砂煙が舞い風が渦巻いていた程度に見え重雄がノーダメージだった魔法がだ。


「どぅぇえぇぇえぇぇ!?」


 ぶっ放したフウタがギャグ漫画で見掛ける顔をしていた。


 ここは大通りで商店が乱立していたが夜は閉まっていて、隅の街路樹での騒動は幸いな事に被害を齎す(もたらす)事は無かった、近くの住人が何だ何だと窓を開けてキョロキョロしてる程度だ。

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