17 ガロレンとの会話
「貴重な品を使わせてしまいました、申し訳ございません。」
重雄は丁寧に謝罪をする。
「うむ、使ってしまったのは仕方ないとして色々と聞かせて貰うぞ。」
ガロレンに対して事の経緯を細々と話し出した。
「う〜む、前代未聞の珍事だのぅ」
ガロレンはそう呟くと腕を組み目を瞑り深く考え事をしているように見えた、辺りはとっぷりと暗くなっている。
頭は上げたが正座したままの形でガロレンが何か言うのを待つこと数分
「まず第一にお主はゴーストではない。」
理由を聞くとガロレンクラスの精霊であれば普通ゴースト相手にすり抜ける様な事は無い、更に言えばゴーストが光の下で真っ昼間から動き回れる様なものでもないと言う。
限定的に薄暗い場所や負の力が溜まる、溜まりやすい場所なら多少見聞きする程度のもので、光の下ダッシュで走るなんて有り得ないそうだ。
「それでは一体私は何なんでしょうか?」
重雄は一番気になった事を聞く。
「前列は無い、無いが……意識を持った魔素、この言葉が一番しっくりくるかも知れんな。」
魔素…。魔法の元になる力もしくは、力そのものを表す言葉として重雄のやっていたファンタジーゲームでよく出てくる言葉だった。
この考えを言葉にしてガロレンに聞けば
「概ねその通りだ、お主の身体を通り抜けた際に力の奔流を感じた。」
と言った。
珍事も珍事、前代未聞の珍事だ、これはウナスよりよっぽどメディアス様案件かも知れない。
ガロレンは自身が処理できる範疇を軽く超えていると気付くと重雄に向かってこう言った。
「監視と言うと言葉が悪いがお主はそういった存在に値する、ただ少しばかり見知った仲であろう者を付けよう。」
ガロレンが何か唱えだすと紫色の重なった紋が浮かび上がる。
紋の下に緑のマリモもどきがポトリと落ちてきた。
「うえええぇぇぇぇ!?」
緑のマリモもどきの目が飛び出す勢いで見開き驚愕しているのが分かった。
ガロレンは緑のマリモもどきに近付き目前に立つと
「風の子よ、お主にはこの者の監視をしてもらう。」
重雄を指差しそう言った、更に続けて
「この者とは会話が出来る状態になっている何かあれば報告するように、では任せるぞ。」
一方的に事を決めたガロレンはまた何か唱えると紫色の重なった紋が現れ、今度はガロレン自身が消えていった。
残されたのは正座したままの重雄と前回いきなり攻撃して来た緑のマリモもどき
何だかとてもバツが悪い…
それでも今来たばかりの緑のマリモもどきより話が分かっている重雄がまず口を出した。
「改めましてこんにちは、異世界から来た【田中重雄】と申します。」
異世界という単語にまた驚愕している風の子も重雄の丁寧な態度と、今度は言葉が通じた安心感からか言葉のキャッチボールに応じた。
「おいらは風の精霊、名前はまだ無い子供の精霊さ!ガロレン爺には逆らえないから監視させてもらうぞ」
何だか少し偉そうに話してきた風の精霊が急に可愛く見えた重雄が言う。
「名前が無いと話しづらいねぇ ん〜そうだ!フウタとフータどっちが良いかい?」
急に名前をくれると言ってきた重雄に対して戸惑いながらも
「どっちかならフウタが良い」
と応えた。
「それではフウタと呼ぼう」
瞬間 重雄の身体から魔素が抜けフウタの身体の中に入った。