15 アヴェーナ地方精霊の住処
爺と言われるガロレンはここ最近の報告の多さに辟易していた。
その殆どが昼間でも動き回り奇行をする年老いたゴースト、その上聞いたことのない言葉を話し、風魔法も一切効果なかったという異常な相手の事だった。
オマケに見た者全てが邪気は感じられないと言うからガロレンは頭を抱えてしまう。
いや、その内の一体、話し掛けられて咄嗟に攻撃したという風の子だけは異常なゴーストが鳩に対して悪さをしているように見えたと言う。
風の噂等と言うほど報告が適当な事の多い風の精霊からの報告なので信憑性は薄いが、その精霊が一番の当事者なのは間違い無い。
近くで見たという闇や火、土の子からの報告はどれも的を得ない報告だったし、遠巻きに見たと言う木や光の子達はゴーストが昼間から走り去ったというようなしょうもない話しだったからだ。
王に申し開きをするべきか迷うが何せ材料が足りない、ガロレンより立場が上なのは精霊王であるメディアス様しか居ない。
他の地方を治める精霊はガロレンと同じ立場だ。
「はぁ、ただでさえ物理が効かないゴーストが魔法にも強いって何なのさ」
溜息をつき、軽く愚痴を吐いたガロレンは美しい鏡の様な魔導具の前に立つと、王都を治めている(ウナス)に通信を繋いだ。
「ウナス聞こえるか?」
「あぁガロレン!丁度相談したい話があったのよ」
「へっ、お主も?実は…」
ガロレンが話すのを遮ってウナスが興奮した口調で話だす。
「聖女ちゃんが呪われて死んじゃったんだけど、生き返ったの。」
とんだ爆弾発言だった。
「しかもよ?聖女ちゃん付きの光の子が言うにはその時子供ゴーストがチョロチョロしてたんだけど、急に見当たらなくなったとか何とかって言うのよ。」
「ウナスそれは完全にメディアス様案件じゃないか?ってこっちはこっちで奇行種のゴーストの事で相談するつもりだったんだが…」
「え〜何それ同じゴーストでも重要性が段違いでしょ?私これからメディアス様のお手を煩わせてしまうからガロレン貴方は自分で何とかなさいな。」
ポンポンと言いたい事を先に言われてしまったガロレンが新たに話し掛けようとするも既に通信が切られていた。
一番懇意にしているウナスではあるがガロレンにとって姉さん的な存在だ、しかも今回の話では明らかにウナス側の話が重要だろう。
「はぁ〜。」
大きく溜息をついたガロレンは奇行種ゴーストの件は自分で何とかする事を決めた。
まずもう一度風の子から話を聞いた後に闇、火、土の子達から話を聞こうか、別々でなくてもいいだろう。
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面談後
纏めると話し掛けられたのは風の子だけで声を聞いたのはその風の子と闇の子だけだったが、言葉とは言えない唸り声の様なものでは無く、しっかりとした、それでいて通じない言葉だったと言う。
知恵があるならこれが使えるかも知れない。
それはメディアス様から有事の際使えと渡された知識の書から破られた1ページだった。
「えーっと座標は…」
ガロレンは転移魔法を唱えると重雄の居るブラウゼアへと飛んだ。