10 色々なマリモ
攻撃して来たということは、あのマリモもどきは可愛く見えてもモンスターとか化物の一種なのかも知れない。
重雄が考えながらも歩いていると、よくよく見たらチラホラマリモもどきがいる。
ただ色が違う、白かったり土色だったり、黒かったり。
だけど統一して薄っすらとした感じに見えた、何かいるな?と注視したら見える程度。
先程ノーダメージだったが攻撃らしきものを受けた重雄は一つ懸念があった。
マリモモドキは此方を視認出来ていたのは間違い無いだろう、マリモもどきのジェスチャーに重雄が頷き返してからの攻撃だし。
と、すると緑のマリモもどきの風攻撃は平気だとしても、他の色のマリモもどきの攻撃は属性が違うとかならヤバいかも知れない。
精神系のやつとか有るかも?それにあのちっさいマリモが起こした風はかなり強そうだった。
能力なのか魔法なのか、ここが異世界なのなら重雄には意味の分からないものもあるだろう。
「ぶっちゃけ自分が浮遊霊もどきだしな」
今の境遇を顧みて重雄は浄化とかされたらちょっと嫌だなと、マリモもどきには近づかない事に決めた。
爺だが重雄は環境適応能力が高い、曾孫相手でも隊員にだってなれるし孫のゲーム相手だってドンと来いだ。
そんな重雄だから今の状況を楽しめるようになってきた、何なら痛い所もないから生前よりずっと良い。
残して来てしまった妻の美奈子や孫の直樹、奥さんの加奈さんそして当然曾孫の大輝と光輝の事は気になるが、死んだだけならまだしもここが異世界であれば全くもってどうにもならない。
楽しめだしたは良いが本人が一番意味不明な存在だ、浮遊霊?だし。
お迎えが来ないと思っていたが、そもそも異世界には天国〜とか地獄〜といった死後の世界が無いのかも。
魔法があるのなら死んだら魔素や魔力になるとかね。
そういったファンタジー要素も重雄は充分に理解しているつもりだ、孫が部活で忙しくて相手してくれない時にファンタジーゲームをやり込んでた経験からだ。
そうすると今の状況が詰む可能性があるのは浄化もしくは成仏や、精神異常で考える事も出来なくなるのはまずい。
後は飛べないから登れる箇所がない場所への落下や、自力で出れない場所へ閉じ込められるとかかな?
ひとしきり考えながら歩いていると辺りは薄暗くなってきた。
疲れは無い食欲や排泄欲も無い当然眠くもないが、このまま無闇に動くのは得策とは言えないだろう。
「キョエエエエエ」
甲高い声が聞こえた方向を見ると相当高い位置に赤い巨大な鳥が現れた、巨大な鳥は重雄が進んで来た道を戻るようにして飛び去っていった。
「あんな巨大な鳥もいるのか」
丁度小高い丘が少し先に見えてきたので、今日はそこまでと決めた。
完全に暗くなる前に丘の頂上と言える場所へ着いた、疲れもなく眠気もないが、それが当然とばかりに地面に身を倒した重雄は、両手を頭の下に置き足を組みながら今日あったことを整理していた。