第7話 竜帝ムラデン
さて東欧の竜王って意外なことに城下町を持って人間と共存しています。別の物語になりますが『勇者ヤノーシュと黒竜フェルニゲシュ』というハンガリーの物語でも竜王たちの力を借りて竜王フェルニゲシュを退治してます。
そしてもう一つの特徴が東欧の竜王達は負けそうになると領土の半分をあげるから許してくれみたいな事を言う事です。どっかのゲームに非常によく似ています。なので竜王が「世界の半分を与えよう」というストーリーを書いても実はこれ著作権法違反にならないのです。昔話の著作権などとうに切れているしそもそも民族的に有名な昔話は民族に与えられた無形財産です。「桃太郎」や「浦島太郎」そのものに著作権が無いのと一緒です。
おそらくこの「竜王」たちの正体は実際にドラゴン騎士団あるいは名前が類似する騎士団に所属していた諸侯たちで神聖ローマ帝国に属していたというのが真相ではないでしょうか。ハンガリーにしてもセルビアにしてもどちらも神聖ローマ帝国の版図内だったからです。まあ「神聖」でも「ローマ」でも「帝国」でもないのですがね。別名第一ドイツ帝国です。
今日紹介するのはセルビア民話『ストイシャとムラデン』です。勇者ストイシャと竜王ムラデンの話。この竜王ムラデンも城下町を持ち人間たちと共存しています。なので人間の城下町を襲う竜というイメージと全く離れていることがよくわかるでしょう。
さてストイシャは生まれる前に三姉妹がいましたがすべて三兄弟の竜王に取れ去られます。出たよ。お姫様をさらう竜。ちなみに姉妹を寄越さないと村を焼き尽くすという脅し付きです。三姉妹がさらわれたあとにストイシャが生まれ18歳の時に竜退治を決意。それぞれの竜王をねじ伏せます。ここで命を奪わないというのがポイントです。三兄弟の竜はストイシャと義兄弟の契りを交わしそれぞれ三つの城の緊急避難通路を伝えます。その上でもっと強い竜帝ムラデンというものがいるということでもっと強い竜と戦えると分かり戦いに挑みます。ここでポイント何は姉妹たちはいまだに竜王にとらわれたままなのです。なぜなら后になっているからなのです。
そして竜帝との必死の死闘の末決着がつかず逆に死闘の果てに友情が芽生えます。実はムラデンという名前の意味は末っ子。ストイシャも末っ子なので意気投合し義兄弟の契りを交わすのでした。そして竜帝王軍が三兄弟の国に攻め込みます。三兄弟は一か所の城に集まりましたが歯が立たず緊急避難通路で逃げようとします。しかしそこはもうストイシャが藁を引いた後。燃えやすいラ藁と共になんと竜王ムラデンは三兄弟の炎属性竜王を焼き殺します。そのうえで三姉妹を取り戻し資産はストイシャに国土はムラデンの者となって姉妹を取り戻しましたとさめでたしめでたしということなんですが、この物語の最大の特徴は
――ドラゴンライダーが民話上実在するという点です
19世紀以上の児童文学とかアニメではなく長い間伝えられた本物の昔話にこのような話があるだけでも胸熱じゃないですか。なお人間くさい竜王の正体は竜王と言う称号をもらった諸侯だったことは言うまでもありません。娘をさらったのも多分正室が子宝に恵まれなかったとかそういう理由だったのでしょう。