第６話 バラウール
ということでバラウール。中欧ルーマニアの竜です。「美童子」ファトフルモスに退治される竜ですがこの勇者ファトフルモスの名前自体が「イケメン」という意味なのでなんかうざいです。その竜退治の理由もよくわかっておりません。王の末っ子で腕試し的に竜を倒して最後は妖精と結ばれております。竜にとっては迷惑な事でしょう。
さてそんなバラウール。地下（井戸）にも天空にも住み「靄」の具現化とも言われています。そしてなんと雲や地下水を自由に操れるというのです。バラウールは海水から水を引き上げると言います。
もうわかりますね。全然悪竜じゃないのです。さてそんなバラウールを操る資格を持つために魔術学校ショロマンツェに７年も通うのですが教えられるのが悪魔なのです。ですがこの悪魔たちも本当に悪いことしてるのかよくわかっていません。この学校は絶対に太陽の日が当たらない洞窟の中で過ごし７年を経て『ショロモナルの書』という自然に関する奥義を書写して卒業となりますが10名中1名のみここに残って天候師という天候を操る者になります。まあ「卒論」って奴ですね。竜を操つる王冠「金色の頭絡」を持ちます。もちろんバラウールに「金色の頭絡」をかぶせて天候を操ります。どのように天候を操るかは自由とされていますが天候師が退治されたなどの伝承が一切ないことから恐らく天候師は尊敬されていたものと思われます。ゆえにルーマニアにあるバラウールの絵や銅像にも王冠がかぶせてあります。
そもそも何で悪魔なんだ？ 悪魔って自然科学や動物の言葉や竜の操り方なんか教えるっけ？ そもそもこのショロマンツェは各村から選抜して入学して来るものです。邪悪な学校なら教会の神父を初め村人たちが大反対するはずです。
そうなんです。本当はこの学校「ソロマンツェ」といいソロモン王の偉大なる力を身に着けさせる自然科学と動物達の言葉の理解や魔術の奥義を身に着ける学校です。ワラキア人はソロモン王の名前を中世後期には忘れてしまったというのです。だからなまってショロマンツェと言うようになってしまったのです。つまり『ショロモナルの書』も本当の名称は『ソロモンの書』だったのです。
じゃあ次にソロモン王ってどんな人かと言うと偉大なる古代ユダヤ王国の王で指輪を使って天使の命令によって悪魔を使役したとされます。動物の言葉も理解できる指輪も持ちます。ということは悪魔とされる教授陣がだんだんとおぼろげながら見えて来ましたよね。
――この悪魔たちこそソロモン72柱と言われる悪魔たちです。
悪魔と言っても天使の命令によって動く悪魔たちです。ただし制御しないと魔術師自身も食われるのですが……学校内では悪魔たちはそのようなことをしないのでご安心を。この72柱の教授陣がとんでもないビッグネームばかりで中には副魔王ベリアルや大魔公アスタルトというとんでもない有名教授陣とほぼマンツーマンでの授業です。1学級10人制だし。
さて天候師は一応バラウール制御アイテム「金色の頭絡」を持ちますがほぼほぼバディーのような関係です。「金色の頭絡」を持ってないときバラウールはちゃんと待機してくれてます。「金色の頭絡」を持ってない天候師を闇討ちなんてしないのでご安心を。きっと天候師は天候を操ることで人間に恩恵をもたらしたことでしょう。ではなぜそんな竜を退治する物語が生まれたのでしょう。
――分かりません
よって勇者ファトフルモスとバラウール+天候師の間に何かがあった事だけは確かです。後世に伝えるべき物語が欠損してるのですからこの部分こそ創作者が21世紀に伝えるべき物語ではないでしょうか。
なお魔法学校では普通にラテン語での講義です。だってソロモン72柱のことを書かれた魔術書って『レメゲトン』という大魔術書の中の第一章に書かれている「ゴエティア」と言いますが全部ラテン語ですよ。つまり王侯貴族か神父でないと読めないのです。そう、もう選抜している者の正体が分かりますよね。村の神父様ですよ。
最後に……人間は太陽の光を浴びないとうつ病になるので実際100％太陽の光の無い学校生活は無理だったと筆者は考えます。なので実際は「太陽光OKゾーン」と「悪魔ゾーン（太陽光NGゾーン）」に分かれ悪魔が教鞭を取ったりする空間の中でのみ太陽光厳禁という意味だったんじゃないかと思われます。ただし全寮制で「逃げ厳禁」なのは事実のようですね。というか72柱の悪魔や天候師の力で7年間逃げられないようになってるのでしょうけど。
