【おまけ】竜王に魂を売った勇者ヤノーシュ
お次はこちら。なんでおまけ枠なのって?
善竜とはとてもいいがたいからです。竜王たちは主人公の姉や妹をさらってるし。物語は『勇者ヤノーシュと黒竜フェルニゲシュ』というハンガリー民話です。
父は死の間際に娘たちが求められるがどんな存在でも絶対に逆らうなという遺言を残して世を去ります。その後嵐と共に3竜王が次々娘をさらっていくのですが
――逆らったら町ごと殲滅などと言ってるのです。
すべてを失ったヤノーシュは途方に暮れて旅に出ます。そこで大きな町に当たりなんと王女様に見初められます。最初は使用人として働きその働きぶりが認められて王女様の方からプロポーズされます。
ただし王女様からこういわれるのです。今日は日曜だから教会に行くの。その時封印されている石棺を開けないでと。
もうわかりますね。「するな」のタブーです。3つ分の封印を解き放ったその石棺の中に黒竜フェルニゲシュが封じられており教会から帰る途中の王女をさらいます。
フェルニゲシュという名前の意味は「ワタリガラスのような」という意味なので漆黒の羽のような翼を持つ竜ということでしょう。
ヤノーシュは王に許可をもらい竜退治の旅に出ます。そこで異世界へのと扉を発見します。ヤノーシュはそこに入るのです。この世界に竜王3兄弟が居ました。彼らはヤノーシュを見るやいきなり飲み込みました。しかし吐いてまた飲みました。これが竜族の親愛の証だそうな。
この時ヤノーシュは竜王の真なる姿を見ます。6つ首の竜、12首の竜、24首の竜だったのです。ヤノーシュの姉妹は結婚して楽しく暮らしていました。こんなグロい姿を見ても平気だったのです。
――ここでヤノーシュは選択するのです
竜王の騎士になることに。そして3竜王と契りを交わします。ちなみに黒竜フェルニゲシュも3竜王も普段の姿は竜人です。これを「ズメウ」と言います。竜人伝説はルーマニアとハンガリーとブルガリアにしかいないちょっと珍しい竜です。創作世界では「ドラゴニュート」とか言いますよね。
そしてこの言葉に注目です。
「《《我々の首領》》だが誰もがいまいましく思っていた」
なんとこの3竜王は黒竜王フェルニゲシュへクーデターを画策していたのです。悪いです。邪悪です……。じゃあなんでお前らはフェルニゲシュを人間の王城内に封印出来たのさ?
そう、別にヤノーシュの力を借りなくてもフェルニゲシュを封印できるぐらいの力を3竜王は持っているわけです。つまりリスクを全部ヤノーシュに背負わせて自分たちはいい思いをするというわけです。これこそ勇者が竜王に魂を売った代償です。
そして竜王が持つ馬を使って王女奪還を目指しますが奪い返されます。この時フェルニゲシュの3つ分の命つまり嘆命権を使い切りそして4回目にヤノーシュは細切れにされます。王女はせめて袋に入れて墓まで持って行ってとフェルニゲシュに願って聞き入れました。ちなみにフェルニゲシュは馬に乗って4回も再奪還しています。
ヤノーシュだったものは3竜王のもとに運ばれてきました。ここで彼らは鍛冶屋草というものを使い文字通り鍛えます。そしてヤノーシュは美形にかつより強者の勇者へと鍛えられます。ヤノーシュは「あーよく寝た」と言いながら生き返るのです。よく考えたら腐肉がぶつかりながら蘇生してるわけです。グロいです。
――勇者は完全にパシリです。道具です
そしてもっと早い馬を魔女から手に入れ今度は再奪還に成功します。フェルニゲシュは馬から超高速の状態で突き上げられ落馬させて殺します。ちなみにヤノーシュも馬から突き上げられ3回落とされそうになっては馬が拾っています。馬は「二度と怖い目にあわすなよ」と言ってます。これ「いつでもお前を殺せるからな」という最後通告です。
基本この民話は「数遊び」です。
そして今度こそお幸せにとなるのですがどうみてもいいように3兄弟の竜王に使われたヤノーシュは王女と結ばれ王位をもらい……幸せに暮らしたのでしょうか。
おそらくこの話も「竜王」の称号をもらった諸侯同士の争いと数遊びの民話の融合なのでしょう。ここで気づかないだろうか。政敵フェルニゲシュを殺すように仕向けられた勇者・ヤノーシュであることに。これを「善竜」と言ってよいのか私には分からない。ジャッジとしては3竜王に利用されし勇者だと言えよう。もちろん最後はハッピーエンドだが……。本当にハッピーエンドなのだろうか?
この国、その気になればいつでも3竜王が攻め滅ぼせる状態ではないだろうか。
締めとしては別に「世界の半分をお前にやろう」と言われてはいボタンを押したときの本当の末路がこれだったということ。別に「セカイノハンブン」と書かれた家に閉じ込められるわけじゃないけど竜王に利用されし勇者の末路は悲惨ということである。しかも自分の姉妹は竜にさらわれたまんまなのだから。つまり人質のままと言う事である。もちろん幸せに暮らしているのならそれでもいいのだけど。
ちなみに3竜王は人間をさらった後に溺愛してるのだが。女性陣の意見も聞きたいところではある。それは本当にシンデレラストーリーなの? って。それとも「3食昼寝付き+溺愛」でいいの? 溺愛ってかなり歪んだ一歩的な独占欲の愛だけど。それとも后となった人間に逆に竜族側が支配されるという話に繋がっていくのだろうか。それとも巫女的な存在となるのだろうか。それともやっぱり后となった人間は竜族の都合のいいお飾り的存在なのだろうか。
もちろん生まれて来る子供は半竜という存在になる。彼らは何を意図して半竜の子供を産んだのであろうか。もちろんそれは竜界と人間界の両方を支配する王を生み出すためである。「竜はなぜ人間の少女を求めるのか」という本質をそろそろ研究した方がいい。
そう、この物語は宴を開き国民が歌って踊って王妃と勇者が結ばれましたで終わりじゃないのだ。だって、どうみても「続き」があるじゃないか。
――たぶん




