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第9話 ザルティス

さて、中欧は善のドラゴンの宝庫です。なんといってもスラブ神話の太陽神にして女神サウレの眷属なのです。このザルティスというのは。火竜で竈の近所にいる蛇を殺すのは厳禁でした。ゆえにキリスト教化されてもこのザルティス信仰は生き延びました。東ドイツでも家蛇信仰は盛んでした。日本人の意識ではちょっと考えられませんが毒を持ってない蛇と子供を遊ばせるのです。ちなみにザルティスは蛇にドラゴンの翼を持つので立派にドラゴンです。余談ですが本評論ではバルト3国を中欧とさせていただきます。というのも「ロシアと一緒にするな!」とか「ソ連時代の忌まわしき占領時代を思い出したくない」とかいろいろとバルト3国民から聞こえて来そうなので。


 このザルティス信仰をちょこっとだけ悪魔に貶めたのがアイトワラスという存在で家に憑くとその家は幸せになりますが隣家が貧乏になるのです。隣のものを盗んでくるからです。ご近所トラブル大丈夫?

 そんなアイトワラスの要求する対価はオムレツです。対価とか言ってますがたぶん普通に家に捧げていたお供え物でしょう。ちなみにポーランドでは巨大な黒竜アイトワラスの神輿があるくらいなのでこちらは手のひらサイズとはいかない模様。なお竜とは限らず黒猫にも化けます。


 実は東欧の多神教信仰は中世になっても続き実は独立国家となっていました。このため北方十字軍が派遣され徹底的に殲滅されました。異教徒ヴェンド人も黙ってはおらず11世紀にレトラ神殿を作りました。実はこのレトラ神殿というのは城塞神殿です。東ドイツにあります。なんと最後の異教徒は東ドイツに居たのです。デンマーク軍はヴェンドの神殿要塞であるアルコナ神殿を攻略して破壊しました。既にこのころのバルト3国はキリスト教に帰依していました。ヴァイキングたちは言うまでもっと早くキリスト教に帰依していました。それでもキリスト教を信仰しても竜への信仰は捨てきれなかったのです。

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