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赤と青のコード  作者: 異伝C
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第五章 『待ち合わせ』


「デートって……」

「そう、デート。 これから私たちは楽しいデートをするの」

 雨美はそう言うと、俺へ紙切れを一枚渡してきた。

「その紙は最後の問題を解くのに重要なものだから、絶対なくさないようにね。 もし無くしそうな自身があるなら、その文をどこかに〝メモ〟っとくか、いつでも開けるように〝ブックマーク〟しといた方がいいかも」

 俺はそのメモを見る。


4『【バーガー・ベア】 1【図書館】 7【ファッション・フェザント】

2【ホテル】 5【ホテル・モンキー】 1【シネマ・アント】 

1【ヴィンテージショップ・レジェンド】 3【蕎麦屋】 2【ガソリンスタンド】

4【ダーツ・ストロベリー】 8【パスタ・スフィンクス】 3【カラオケ・フロッグ】

2【インテリア・リバー】 3【スイーツ・レモン】 6【エステ・ピーコック】

7【アクセサリー・エレキ】 3【レストラン・サニー】 1【スポーツジム・キメラ】

5【スーパー・メロン】 2【居酒屋・よござんす】 4【ゲームセンター・ハデス】

6【ボウリング・ムーン】 1【動物園・コアラ】 6【電気屋・サイダー】 

2【ネットカフェ・ヴォルケーノ】 6【レストラン・ピッグ】 3【レストラン・サーモン】』

1【オリンピック・スタジアム】 1【エキシビジョンセンター】 2【警察署】

4【薬屋・メディカルハロー】 


「何だコレ?」

 メモには商業施設の名前だろうか? 特に規則性のない名前が書かれていた。


「それが、私とのデートを盛り上げるためのチケットだよ!」

 雨美は人差し指を立ててウインクする。 ……かわいい。

「今から悠一のスマホに問題文を送ります! 私は正解の場所で待ってるから、悠一はそのメモと睨めっこしてもらって、正解を導き出したらそこに書かれてる場所まで来てくださーい! ちなみに書かれてる施設はすべてこの区にある実際の施設だから、行き方がわからなかったら経路をスマホで調べてね! 見事正解の場所まで行けたら、ついでに爆弾の解除手順も教えてあげる!」

「ちょっと待て! なんだよそれ意味わかんねえ!」

「できれば悠一一人で考えてほしいけど、どうしてもわからなかったら電話で誰かに聞いてもいいよ! ただし、警察と話すのはダメね!」

 雨美は言い終わると、俺から背を向けて走り去っていく。

「お、おい待て!」

すぐに俺も追うが、足がまだ少し震えるのと、そもそも雨美の足が尋常ではないくらい早かったのでたちまち見失ってしまう。

「くそ……!」

 俺はしばらくその場に茫然と立ち尽くした……。

周りはいつもの日常と何も変わらない。

 でもこのタワーの中では、非現実的な〝事件〟が起きている。


――しばらくそうして立ち尽くし、陽が俺の顔をチリチリと焼く不快感を感じたので、そこでやっと俺は足を動かした。

 目の前に小さい公園がある。 ひとまずそこへ行こう。


 公園へ入り、ベンチに座った。

 公園の噴水から水が涼しそうに噴き出しているが、俺の頭の中は全く涼しくない。

 状況を整理するため、いつも剣道部でやるように心を無にする。

 一体、何がどうなっているのか。 今の状況を冷静に受け止めなければいけない。


 ――まず、雨美が鬼だって?


これは俄かには信じられないが、少なくとも普通の人間ではないのは明らかだ。 タワーのAiを操って爆弾を用意してる時点で全然普通じゃない。

 それにエレベータの中では投げ飛ばされた。 あの一瞬で何をされたかは分からないが、恐らく雨美に投げ飛ばされたのは間違いない。

 しかもこの俺の体を空中で回転させるほどだ。 相当武術に心得があると思われる。


――今やることは?


そう、これが重要だ。

「そうだ……」

 俺はスマホを手に取ると、流星に電話してみた。 ガスはただ眠るだけだと雨美は言っていたが、みんな大丈夫だろうか?

 ……数回のコール音のあと、電話は通話モードになる。

「流星!? 大丈夫か!」

≪悠一か……一体、何が起きたんだ? 棚田さんは?≫

 流星の声は少し辛そうだったが、とりあえず普通に話はできる感じだった。

「みんな無事か?」

≪ああ、なんとかな。 今みんな起きて、ムラちゃん先生がみんなの様子を見てくれてる。 たぶんみんな無事だ≫

「よかった……」

≪棚田さんは?≫

「ああ、それなんだが……」

 俺はこれまでの経緯を流星に話した。


≪なんだよその深夜アニメみたいな展開……」

「その例えはよくわかんねえけど、とりあえず爆弾が本物の可能性は高い。 それに、俺から警察に連絡する事は禁じられた。 しょうがないが、そっちで何とか対応を――」

≪ああ。 もうそれは皆瀬さんが通報済みだ≫

「はあ……大変な事になったな……」

≪棚田さんはお前のスマホに問題を送るって言ってたんだよな? 何か来てるか?≫

 俺は通話を切らずにメッセージアプリを開く。 ……雨美から十分前にメッセージが来ている。 俺はそれを開いた。


【私は全知全能の神。 しかし知識を自分だけのものにはしない。 求める者にはその知識を披露しよう。 私はある場所に居る。 求めたくばその場所を探せ】


 さらに追加でメッセージが送られている。

【第一の問題だよ。 私はそこで待ってる。 早く来てね】

「あ~もう! なんだよこれ!」

 俺はメッセージを見て頭を抱える。

≪どうした悠一≫

 俺は流星に雨美からのメッセージの内容を伝えた。

≪どうやらそのなぞなぞみたいなのを解くしかないみたいだな……一応俺にもコピペして送信してくれ。 みんなで考えればきっと答えが出るはずだ≫

「わかった!」

 その後、流星はみんなに俺の状況を伝える。

≪もしもし? 佐々宮くん!? 村岡だけど!≫

 ムラちゃん先生だ。

「ああ、先生……」

≪そっちは大丈夫なの!?≫

「ええ、こっちは大丈夫っす……。 でも、爆弾の解除手順は雨美しか知らないと思います。 早く問題を解かないと――」

 電話の向こうでは女生徒の泣きわめく声や、男子生徒の叫び声が聞こえる。

 どうやらあっちの方もかなり混乱が酷いらしい。

≪こっちはとりあえず皆瀬さんが警察に通報したわ。 今指示を待ってるところだから、あなたはそこに居なさい。 警察が来るのを待つの≫

「先生……」

 雨美は爆弾を遠隔で即起爆できるような事を言っていた。 ここで俺が警察に保護なんかされたらきっと雨美は容赦なく爆破するだろう。

「たぶん雨美の目的は俺とのゲームです。 それを妨害されればきっと雨美はタイムリミットに関わらず爆弾を起爆するはず。 だから俺は一人でも雨美を探します。 警察にも、事情を説明して俺に近づかないように言ってください」

≪でも……≫

 ムラちゃん先生はしばらく考え込んでいたが、やがて口を開いた。

≪わかったわ佐々宮くん。 でも警察には一応事情を伝えてみるけど、危ないと感じたらすぐに自分の身を守るのよ。 いいわね?≫

「はい!」

 そして電話は流星に変わった。

≪悠一、さっきから探してるんだが、凪羅が居ないんだ。 お前知らないか?≫

「凪が?」

 さっきまでタワーの中に居たのは見た。 でも扉はすべてロックされてるはず。

「トイレとか、どこかに居るはずだ。 よく探してみてくれ!」

≪探したよ! 少なくともこの階の全ての部屋は探した! 外に出たとしか考えられない≫

「唯一の出口のエレベータはロックされてるんだ! 外に出れるわけ――」

 俺はそこまで言って雨美の言葉を思い出す。

〝――三十分後には、誰もこのタワーからは出られなくなるでしょう〟。

 もしかして、その間にタワーから出たのか?

 俺はスマホの時計を確認する。 現在の時刻は十時十五分。 すでにタワーから出て四十分近くは経とうとしていた。


「佐々宮ァ!」

 突然声を掛けられる。 驚いて振り向くと、そこには――。

「凪!?」

 そこには凪が居た。

「凪! お前、どうしてここに!?」

「タワーから何とかね……うう」

 凪は具合が悪そうにその場にしゃがみこんだ。

「大丈夫か!?」

 俺は凪のそばへ行き背中をさすってやる。

「あのガスのせいだ……。 何とか息を止めて、エレベータが戻ってきたから、それで降りてきたんだよ……」

「そうだったのか……無事でよかった! 安心しろ、あのガスは意識を失うだけだ。 害はない。 少しここで休んでろ」

 俺は凪に肩を貸してベンチに座らせた。

「雨美は? どうなったの?」

「ああ……」

 俺は今の状況を凪に一から説明する。


「ばか雨美……なんでこんなことを……」

「俺も信じられない……。 あの雨美――あ、棚田さんがこんなことを……」

 凪の前で〝雨美〟と呼ぶのはどうも気が引ける気がして名字に呼び変える。

「凪、お前なにか棚田さんから聞いてたか?」

「ううん、何にも。 でも、雨美が鬼だなんて……」

「本当に鬼なんてもんがいるのかはわからねえ。 とりあえず、爆弾を止めるためにも雨美の出した問題を解かなきゃいけないんだ」

「そうみたいだね……。 ねえ佐々宮……私も考えるから、雨美を見つけよう。 雨美を止めなくちゃ」

「そうだな」

 凪は不安げな表情で俺を見る。

「この問題を見てくれ。 どう解いたらいいかわかるか?」

 俺はさっきスマホに送られてきた雨美の問題文をメモと一緒に見せる。 凪は眉間に皺を寄せながら問題文を熟読していた。


「そういうことか……」

 凪はそう静かに呟く。 解けたのだろうか?

「わかったのか!?」

「たぶん、これの解き方はこれで間違いないはず」

 凪はそう言うと、立ち上がった。



    ※


 暗がりの中、私は爆弾のスイッチを押す。

 ――凄まじい爆発音と共に、洞窟の最深部の崩れた岩が砕け散った。 辺り一面が砂ぼこりで舞う。 ガスマスクを着けていなかったら酷い事になっていただろう。

爆発で開いた穴から光明が私たちへ向かって降り注がれている。 私は立ち上がると、その光に導かれるように前へと進む。

「〝エール〟さん! まだ崩れたばかりで危険です!」

 仲間に止められたが、私は構わずその崩れたばかりの穴へ入った。


――中に入ると、壁一面が虹色にキラキラと輝いていた。 一見すると綺麗だが、じっくり見るとその色はどこかおどろおどろしい。

 後ろから仲間たちが駆けつけてくる。 私は彼らに中へ入らないように合図をした。

 すると、腰に付けた機器がジリリと鳴る。 私は機器を手に取り、デジタル表示を確認した。

【3.4 SV】と表示されている。

「お前たちはすぐにこの洞窟から退避しろ!」

 私の声で、仲間たちはすぐに走って洞窟から退避していった。

 私は一人その空間を見回す。 すると、奥の壁に祠のようなものがあるのに気づく。 私はその祠へ近づく。 そして〝それ〟を認識する。

 祠の中に座らせられている〝それ〟は、様々な装飾具を身に付けさせられていた。

 〝それ〟は干からびており、空洞になっている目がただ虚空を捉えている。

 私は無線機を取り出し、外の仲間へ言う。

「ミイラを見つけた。 どうやらここで間違いないようだ」

≪やはりそうか……ではそいつが……?≫

「ああ。 最初の神――『天』だ」

 私はそう言うと、ミイラの目の前に鞘に収まっている〝刀〟がまるで供え物のように置かれているのを発見する。

私はそこで初めて手を合わせた。

≪エールさん! 本部から入電です! そちらに繋げます≫

無線機から私へ呼びかけてくる。

 かつての神に祈りを捧げる時間も取れないのか。 私はため息交じりに了承する。

≪エール聞こえる?≫

「聞こえる」

≪日本の防衛省(MOD)から日本支部へ報せが来た。 いい? 落ち着いてよく聞いて≫

 私は眉一つ動かさずに本部からの報せを聞く。

≪日本のGタワーの防衛システムが乗っ取られ、機能が停止しているらしい。 恐らく高度なハッキングによるものと思われる。 そして十五分前に『テングリ』のリーダー〝タナダ ウミ〟と名乗る人物から日本の防衛省へ直接連絡が来たわ。 彼女は日本のGタワーへ爆弾を仕掛けたと言っている。 それも核爆弾。 タワー内には人質も居るらしい≫

「タナダ ウミ……何者だ?」

≪あなたの中では、すでに検討がついてると思うけど?≫

「……」

≪彼女の要求は、『天』の『刀』の引き渡し。 要求を吞まなかった場合、タワーを爆破し日本を〝朱雀の炎〟で焼き尽くすと言ってる。 タイムリミットは、恐らく日本時間でPM三時≫

「このタイミングでか? 情報はどこから漏れた?」

≪わからないけど、彼女の情報網はすでに我々の内部まで張り巡らされてる。 どこで情報を入手しても不思議じゃない。 どっちみち、あなたにはタナダ ウミを止めてもらいたい。 彼女に対抗できるのは今のところあなただけだからね。 既にヘリをそちらに向かわせてる≫

「こっちの国際空港から日本までどれくらいだ?」

≪最新の〝対ガルーダ戦闘機〟をチャーターしておいた。 あなたもまだ乗ったことは無いと思うわ≫

「まさかスカイフィッシュ?」

≪ええ。 日本までなら約二時間て所ね。 諸々移動時間を含めるなら、そこから出て向かうとして……五時間は掛かりそうね≫

「ギリギリだな。 交渉の余地はなしか」

≪それだけ相手が本気ってことね≫

「副司令はなんと?」

≪最善を尽くせ。 それだけ≫

「ふん」

 私は通信を終えて、その洞窟から出て行く。





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