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お菊さん、実家に行く

(7)お菊さん、実家に行く


武は水の生成に成功した。はしゃぐ武の頭を撫でながら、お菊さんは弟子の成長を喜んでいる。


そんな中、すっかり忘れ去られた前鬼は話に割って入っていいものか迷っている。

粗相そそうによってお菊さんに2度殺されかけているから、前鬼は話しかけるタイミングを見計らっている。


お菊さんは様子をうかがう前鬼に気付いた。


「ごめん。すっかり教えるのに夢中になってしまって・・・」

お菊さんは申し訳なさそうに前鬼に言った。


「いえ。自分は全然問題ありません!」前鬼は上官に接するように言った。


「せっかくこっちに来たんだし、少し中を見てもいいかしら?」とお菊さんは前鬼に尋ねた。


「それは構いません。ただ、武くんは部外者なので入国名簿に必要事項を記入してもらう必要があります」


そう言うと、前鬼は記入用紙をお菊さんに渡した。

お菊さんが武の代わりに用紙に記入して、前鬼に渡した。


「結構です。それでは、出口に案内します!」


武と猫とお菊さんは前鬼について行く。


「お菊さんは久しぶりの故郷じゃないの?」武はお菊さんに聞いた。


「そうね。久しぶり。400年以上戻ってなかったから、街並みもすっかり変わっているんだろうなー」

お菊さんは400年以上に及んだ皿屋敷伝説を思い出しながら言った。


3人と猫がしばらく歩くと建物の外に出た。

武は周りを見渡す。


― これが異世界かー


武の目に入ってきたのは、高層ビルと歩いている人だった。

車のようなものが空中を飛んでいるのも見えた。


ただ、残念ながら武がイメージしていた宇宙人はいないようだ。

歩いている人は、見た目が地球人と一緒。

異世界に来た実感が沸かない。


確かに、この惑星の文明は地球よりも高いことは分かる。

でも、SF映画に出てくる宇宙ではない。

ついでに言うと、妖精やモンスターもいなさそうだ。


少しがっかりしながらも、武はお菊さんに質問した。


「これがお菊さんたちの惑星?」


「そうよ」


「想像してた宇宙人がいないんだけど・・・」


「ああ、いないわね。うちの惑星は地球人と同じ見た目よ」


「妖精とかモンスターとかいるの?」


「いないわねー。犬とか猫はいるよ」


「地球と一緒? ビルの形も似ているけど・・・」


「ええ、そうね。うちの惑星の技術者が、地球の技術者に技術指導しているから、似たような乗り物や建物が多いと思う」


― ファンタジーの要素が一つもない・・・


地球人は『宇宙人は変な形をしている』とか『異世界にはドラゴンがいる』とか空想したいのだろうけど、現実はこんなもんだ。


「近くに私の実家があるけど、寄っていく?」お菊さんは武に聞いた。


武は宇宙人の生活に興味がある。宇宙人の生態を知ることができる絶好の機会だ。


「お邪魔じゃなければ、ぜひ!」と武は答えた。


***


武と猫はお菊さんの後を歩いている。

大通りには銀行、薬局、スーパーマーケット、コンビニなどが並んでいる。

この惑星の文化を参考にして地球人が都市計画をしているのであれば、似たような街並みができるのは納得できる。


ただ、異世界に来た実感がない・・・


しばらく歩くとお菊さんの実家についた。実家の前に立つお菊さんは感動している。


「400年以上ぶりだけど、引っ越ししてなかった!」


「まだ、家族は住んでるのかな?」


お菊さんは震える手で、玄関口のチャイムを押した。

インターフォンから声が聞こえた。


“はーい。どなた?”


「お母さん、わたし。菊よ・・・」


しばらくすると、玄関のドアが開いてお菊さんにそっくりな女性が出てきた。


「お母さん・・・」


お菊さんはその女性と抱き合った。


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