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こんぱいら?

※本話は内容に偏りがあります。



(5)こんぱいら?


お菊さんは武に原子を操作する方法を説明し始めた。


「まず、この世界には魔法なんていう非科学的なものは存在しないの」


「この前まで、自分のことを雪女とか妖怪とか言ってた人のセリフとは思えない・・・」

武はボソッと言った。


「仕方ないでしょ。説明するのが面倒だったから。悪気は無かったのよ」

そう言って、お菊さんは『ごめんね』のポーズをした。


「別にいいよ。それで、原子の操作はどうするの?」


「そうね。水を作る場合は、水素原子2つと酸素原子1つを合成するよね?」


「そうだね」


「原子を操作する時に必要なのは大きく2つ。1つ目は、水素原子と酸素原子の情報」


「だろうね」


「2つ目は、水を生成するためのプログラムね」


「プログラム?」


「ええ、プログラム。例えば、水を作る場合、チマチマと水素原子2つと酸素原子1つを合成しても、大した量を作れない」


「水素原子2つと酸素原子1つを合成してできるのは水の分子1つだけ。そういうこと?」


「そうよ。1グラムの水を作るのに、水素原子2つと酸素原子1つを何回合成しないといけないと思う?」


「急に難しい問題を出してくるなー」


「頭の体操よー」お菊さんは楽しそうだ。


武はお菊さんの出した問題の答えを考え始めた。

水素原子の原子量が1、酸素原子の原子量が16。だから、水(H2O)の原子量は18だ。


「水18gで1molだ。アボガドロ数(6×10^23)を使うと、(6×10^23)÷18だな。だから、1gの水を作るためには、3.3×10^22回の合成が必要?」


武は計算結果をお菊さんに確認する。


「そうね。330がい回ね。普通の人は一生掛かっても水1g作れないわね」


「僕の人生はそんなに短いのか・・・」武はしみじみと言った。


「だから、水を生成するためのプログラムを使うのよ」


「どうやるの?」


「一番簡単な方法はコンパイラを使うの」


※コンパイラ(compiler)とは、人間が書いたコンピュータプログラムをコンピュータが実行や解釈できる形式に変換するソフトウェア。


「こんぱいら? あの、コンパイラ?」


「そうよ。見せた方が早いわね」


お菊さんはそう言うと、武の目に手をかざした。

すると、武には簡単なコード(下記)が見えた。


<水の生成>

==========

$j = 10 // 回数

$a = H; // 水素原子の情報

$b = O; // 酸素原子の情報

$x = $a * 2 + $b; // 水分子


for ($i = 1; $i <= $j; $i++) {

 $x .= $x;

}

print $x;

==========



「え? これコードだよね?」


「そうよ。これは水素原子2つと酸素原子1つを合成して水の分子を作って、それを2^10回繋げているの」


「じゃあ、水を出すのはprint?」


「そうよ。無詠唱の魔法みたいでしょー」お菊さんは得意そうに言った。


「分かるよ。分かるんだけど、ファンタジーのイメージが崩れていくなー」


武は少しショックを受けている。

お菊さんはガッカリした武を見かねて言った。


「試しに、これで水を出してみようか?」


― これで水がでるの?


武の科学者のクローンだ。一気に機嫌が直った。


「うん!」武は勢いよくお菊さんに言った。


「いくよー」お菊さんはそう言うと、手を上げた。


“じわっ”


お菊さんの手が湿った。

2^10個の水分子ではこれくらいだろう・・・


「手が湿ったね!」武はテンションが上がっている。


「回数を増やせばもっと水が出るんだけど、ここだと危ないから・・・」

お菊さんは申し訳なさそうに言った。


「別にいいよ。原子操作のイメージが分かったし。原子の情報とプログラムかー」


「原子を構成している陽子・電子・中性子も同じ理屈で操作できるわ。でも、処理する内容が原子よりも複雑になるから、処理速度が速くないと使い物にならないね」


「パソコンのCPUみたいだな。じゃあ、扱える原子量はパソコンのメモリみたいなもの?」武はお菊さんに聞いた。


「いい例えね。その通りよ。実行するまでの間、作成した原子量を保持しないといけないから。スペックが重要なのよね」とお菊さんは説明した。


スペックか・・・

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