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門番は厨二病

(2)門番は厨二病


武は大きなアレに話しかけられ、思わず足を止めた。


「止まっちゃダメ」お菊さんは武に小さく言った。


武は同級生から聞いたことがある。


― ヤンキーと目を合わしたらいけない!


武は同級生の言葉を思い出し、何事もなかったように歩き始めた。

自分を無視して立ち去ろうとする武。アレはもう一度言った。


「だから、見えてるだろ? 聞こえてるだろ?」


― やっぱり絡まれた・・・


武は目でお菊さんに合図したら、お菊さんは「やれやれだぜ」のポーズをした。

武は仕方なく、アレに言った。


「分かったよ。見えてるよ。何か?」


アレは武が反応したことに気分を良くしたようだ。


「そうか。我が名は前鬼ぜんき。冥界より生まれし地獄の炎をまといし鬼神・・・」


― 中二病(厨二病)だ・・・


武がそう思っていると、隣のお菊さんが急に腕を上げた。

すると、アレの横にあった大木が真っ二つに裂けた。


気分よく話している途中に攻撃されるとは思っていなかったのだろう。

アレはお菊さんの攻撃力にビビっている。


「何すんだよ?」


「うるさい! 次やったら、本当に殺すわよ!」お菊さんは何かに怒っている。


アレは気を取り直して、再び話始めた。


「我は冥界の門番としてこの地を守護するもの・・・」


またアレが話している途中、隣の石碑が真っ二つに裂けた。


「次やったら殺すって言ったよね?」お菊さんの怒声が飛ぶ。


アレは明らかに困惑している。きっと、こう思っているはずだ。


― 何のことか分からない・・・


お菊さんが何に怒っているのか、武にも分からない。

でも、お菊さんが本当にアレを殺すのはまずいと思う・・・。


「お菊さん、どうしたの? 何を怒っているの?」と武は静かに尋ねた。


アレも静かにお菊さんの答えを待っている。

不用意に行動すると、今度こそ殺されてしまうから。


「その話し方、イライラする・・・」お菊さんはボソッと言った。


「え? そこ?」


「ええ」


お菊さんは中二病のセリフが嫌い。

アレが理解したか心配になったから、武はアレのところへ近づいた。


武は小声でアレに言った。


「普通に話した方がいいみたいだよ。『我は・・』って言ったら、多分死ぬ・・・」


アレは少し不服そうだ。でも、アレはお菊さんに逆らう勇気はなさそうだ。


「分かった。あの話し方は止める。参拝に来てたガキが言ってて、俺が使うとカッコイイと思ったんだ・・・」


「普通に話せて良かった。僕は山田武。この猫はムハンマド。さっき攻撃したのはお菊さん。おじさんは?」


「だから、俺は前鬼ぜんき。さっき自己紹介したと思うんだけど、聞いてなかった?」


「ごめん。中二病のセリフが気になって、話に集中できなかったんだ」


「まあ、いいけど。それで、お前らは何しに来たんだ?」と前鬼は言った。


「ムハンマドがボス猫の『オヅノ』に会いにきたんだ。僕たちはその付き添い」


「そうか、猫の『コヅノ』に会いに来たのか・・・」


「コヅノ? オヅノじゃないの?」


「猫は『コヅノ』だ。『オヅノ』は俺のボスの名前だ。似てるけど、間違えると大変なことになるから気を付けた方がいいぞ」と前鬼は言った。


「ねえ」とお菊さんが前鬼に言った。


前鬼は「はい!」と答えた。完全にビビっている。


「もしかして、あなたのボスは行者ぎょうじゃ様?」とお菊さんは聞いた。


「そうです。役行者えんのぎょうじゃ様です!」


※役小角(えんのおづぬ、おづの)は、飛鳥時代の呪術者、修験道の開祖。役行者とも呼ばれる。


「じゃあ、あなたは後鬼ごきの夫の前鬼?」とお菊さんは尋ねた。


前鬼ぜんき後鬼ごきは、役小角が従えていたとされる夫婦の鬼。前鬼が夫、後鬼が妻。葛飾北斎の絵が有名である。


「そうです。後鬼は妻です。よくご存じですね?」


「絵で見たことあるわ。行者様と一緒に描かれている北斎の絵よ」お菊さんは静かに言った。



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