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ベイロンドの魔女  作者: 路地裏の喫茶店
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第二十六話




「ユン、キリル!」

 私やセラノは突然の来訪者にびっくりした。ユンとキリルもここに私やリィディがいる事にびっくりしていた。


「どうしたの」

 セラノが聞くと、ユンは小さな声でセラノや私に聞こえるように言った。


「よかった――、ランにあえたんだね――そう…肉屋の親父がセラノを見かけたって言うから、ここに来ているんだろうと思ってすっ飛んで来たんだよ。急な話がある。とりあえずアジトに来てもらえないか」


「わ、わかった」


 その眼が語る重大さに、私達はすぐさまユンの提案を受け入れた。


「おいセラノ!どこに行くんだ!」

 セラノのお父さんやマンカートさんがセラノを呼び止めようとしたけど、


「そんな場合じゃないって!とにかく父さんはまだラン達がこの街に被害を与えに来たっていう誤解をしている人達をまわって説得してよ!」


「むうう…なにぃ…」


 セラノのお父さんはセラノに指示を出されて唸っていた。するとマンカートさんがお父さんの肩に右手を置き、私達には左手を出して振り払うような仕草をした。


「わかった!大人達の事はあたし達にまかせなよ。あんた達は他の皆の所に行く必要があるんだろ!」


 私は二人に頭を下げると、セラノの宿屋の外に出て丘の上のアジトに向かった。


「大変なんだ」


 走りながらキリルが呟いた。







「なんですって!」


 私がそう言うとユンはくりくりした眼を伏せがちに苦い顔をした。


 私達が着いた時、アジトには誰もいなくてひっそりとしていた。そこでユンとキリルは事態の説明をしたのだった。


「本当なんだ。町長に嘆願に行った他の少年団の皆は、町長の怒りをかって町長館に軟禁されているんだ」


「俺達はアバンテとセラノがランの所に向かった後、予定通り町長館に行って嘆願をしたんだ…」



 キリルの話した内容はこういうものだった。


 少年団の皆が館で町長さんに会いたいと告げると、彼等は大広間に通されしばらくの間待たされたのだと言う。不思議な事に窓と言う窓は全て閉めきられ、カーテンが閉じられていたのだった。

 トイレに行きたくなったユンとキリルは、我慢しきれなくなりトイレを探しに行った。トイレから戻ろうと大広間に続く廊下を歩いている時、広間から町長さんの声が聞こえた。


 町長さんは何と言っているのだろうと思い、二人が歩調を速めた時だ。


「…こいつらは邪魔だ…地下室にでも軟禁しておけ。計画が終わったら記憶を消して街に放ればいい」


 何の情もこもっていないような冷ややかな声で町長さんはそう言ったのだという。


 大広間へと続く他の廊下のドアが一斉に開く音がして、そこから十数人の騒がしい足音がした。反射的に二人は廊下の物陰に隠れ、広間を見た!


 そこには嘆願に来た少年団の仲間を縄で縛り、地下室へ連れ去ろうとしている使用人の姿があった。大人の使用人十数人に抵抗をしつつも次々に縄で縛られる仲間達。声を出す者もいたが外までは聞こえなかった。


 町長さんは一人残らず地下室へ連れて行ったのを見ると、ドアを開けて自分の部屋に戻っていってしまった。その間、ユンとキリルの二人はあまりの町長さんの変貌振りに震えていたのだという。


 夜になってもその場に隠れていた二人は、隙を見ると誰にも見られないようにして館を逃げ出した。町長さんの冷ややかな人の変わってしまったような顔を見た時、自分達だけではどうしようもできない、そう思ったのだという。


 彼等は街の人達に相談しようとした。しかしその時町長さんが不自然だと言う事に気付いていた人は街のほんの一部だったし、焼けた街の復興に男の人達はまだまだ大忙しだった。

 少年団として普段それなりに悪さをしてもいる彼等である。誰に話しても信じてもらえないのではないか。と思案にくれていた。とにかく、アバンテとセラノが帰ってきたらこの事に相談に乗ってもらうしかない。そう考えていたのだ。




 キリルはすまなそうにそう話し終えた。


「町長がそんな事を…これはいよいよもっておかしい…!仲間を助けなきゃ」

 セラノは話を聞いて憤慨していた。



「キリルの話の中の町長さんの言った言葉――計画が終われば記憶を消して――っていう所…おかしいわよね…」


 リィディが私を見ながらそう言った。


「そうよ、その言葉おかしいわ。普通の人間に記憶を消させるなんていう事できないもの。ユン、キリル、その時の町長さんの事をもっと詳しく教えて」


 ユンとキリルは思い出しながら心底恐ろしそうだった。


「…あの時の町長は…遠くから見ただけだったから見間違いだったかもしれないけど…前よりもずっと痩せていて…頬の当りが角張って尖っているようだった。肌はざらざらとした土気色で…何よりも人を射殺すような眼が怖かったと思ったよ…」


「……」


 私はそう聞いて漠然とした不安がおぼろげな輪郭をかたどって来た印象を覚えた。十中八九、町長には人間界以外のものが干渉して異変を起こしている。


「多分…町長さんには何か悪い精霊の力が働いている。何とかして少年団の皆を助けて、私とリィディは直接町長さんに会って、それが何なのか確かめてみなくっちゃいけないわ」


 私が皆を見回すと、皆大きく頷いた。


 色々相談した結果、仲間の救出計画と町長さんの部屋に行くまでの作戦を練った。


 町長館はアジトのある丘の斜面を背にした格好で街の中心に建っている。私達は斜面側から今日の夜闇にまぎれて忍び込む事にした。




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