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騎士ロサム 騎士ブラッドベル 騎士ロイド 騎士ゴーシュ 騎士ハード 騎士ルギウス

 騎士ロサム


 騎士ロサムは、隣国シエラの若き騎士だ。コキアスとは同期に近い間柄で、仲も良かったようだ。

 ナーセリ、シエラ両国の国境付近に大量の魔人が出現した際には、ラクレウスらとともに討伐隊の一員に選ばれ、コキアスと二人でユリウスの麾下に入った。

 剣の腕はなかなかのものであったようだ。シエラでの武術大会の一回戦でテンバーを負かしたのはこの男だ。明るくあけすけな性格であったそうだから、生きていればテンバーともウマが合ったのではないだろうか。

 少し迂闊というか、慢心しがちなところがあったようで、魔人“のっぽ”との戦いではそのせいで負傷することになってしまった。

 魔王“北風”との戦いで、戦死した。

 生き残っていれば、コキアスとともにシエラを支える一廉の騎士となっていたはずの男だ。




 騎士ブラッドベル


 騎士ブラッドベルは、シエラで長く騎士として戦った男で、俺もその堅実な剣さばきを武術大会で数度、目にしたことがある。

 武術大会での最高成績は、三回戦進出程度であったろうか。中堅どころの、謹厳な騎士であった。

 年を経て剣技は上達したが、今度は体力の方が持たなくなってしまった。それさえなければ、大会でももっと上位まで進出できるだけの実力はあったはずだ。難しいものだ。

 魔人との戦いで瘴気に呑まれ、魔騎士と化し、最後はラクレウスに討たれた。

 死すその時まで剣を手放すことはなかった。そういう男ほど早く逝くのだ、この世界では。




 騎士ロイド


 ロイドは、ナーセリの若手でも筆頭格と言ってもよい騎士だ。以前はテンバーほどでないにせよ、ふわふわと落ち着かぬところも目立ったが、ユリウスとともに参加した国境の魔人討伐の後からは、格段に騎士らしくなったと聞く。

 成長のきっかけとしては、国境での戦いの際に負傷してしまい、他国の騎士であるラクレウスに迷惑をかけてしまったということが大きかったのではないか。

 恥は、時に人を大きく成長させる。人を曲げてしまうこともあるがな。逆境を糧にできるのかどうかは、周囲の環境と、何よりもその人間の器次第だ。

 魔人討伐を重ね、魔王“詩人”討伐の一員として、アーガらとともに魔王と戦った。負傷しながらも生き残り、これからのナーセリを支える騎士として、今さらに大きく成長しているところだ。

 今戦っても、さて、俺も勝てるかどうかわからぬな。そんなことを言えてしまう程度には、一線から離れたのだ、この俺も。




 騎士ゴーシュ


 ゴーシュもロイドらと同じく、若手の優れた騎士の一人だ。

 テンバーと特に仲が良かったようだ。シエラでの武術大会には、選手決定戦でそのテンバーに敗れたために参加することができなかった。

 もともとの下馬評はゴーシュの方が上だっただけに、本人もまさか自分が武術大会に出られぬとは、とかなり落ち込んだようだ。

 そういう関係もあって、その後はテンバーをからかったり揶揄する言動が多かった。

 二人で仲良く酒を飲んだり遊んだりもしていながら、内心では大きな嫉妬心も抱えていた。男同士とはいえ、その感情は単純ではなかろう。まあ俺も、気持ちは分からぬこともない。

 魔王“詩人”討伐隊に名を連ね、生き残った。だが、魔王が相手では、ほとんどまともに戦うこともできなかったようだ。

 ライバルのテンバーは、魔王に一太刀浴びせて死んだ。それをゴーシュはこれからも忘れないであろう。そして、それを忘れぬ限り、この男は強くなり続けていくのであろう。




 騎士ハード


 ハードは、最も若くして魔王討伐隊に名を連ねた騎士だ。

 武術大会参加経験はないが、魔人討伐を始めてわずか一年余りの間に目覚ましい活躍を見せ、その才能の煌めきはナーセリ王をはじめ、誰もが認めるところであった。

 将来のナーセリを背負って立つ逸材である、と。

 しかし、魔王討伐はこの才能あふれる男の人生に暗い影を落とすこととなった。

 通常よりも遥かに濃い瘴気にあてられ、ハードは魔王の元までたどり着くことなく脱落してしまったのだ。一人、元来た道を戻り、救援隊と合流することになってしまった。

 残りの六人は見事魔王のもとにたどり着き、その首級を挙げたというのに。救援隊とともにアーガら三人の遺骸と対面した時のハードの気持ちはいかばかりであったか。

 それ以来、ハードは口数が少なくなり、笑うことも減ったそうだ。

 毎日、黙々と剣を振るっているとか。

 魔人の出現が絶えた今では、恥辱を雪ぐ機会にも恵まれぬ。いつか、この男にも心から笑える日が来ることを願っておるよ。




 騎士ルギウス


 ルギウスは、長きにわたりナーセリ国内を転戦し続けたベテラン騎士だ。

 武術大会の出場経験もあり、その堅実な戦いぶりと経験に基づく冷静な判断力は、他の騎士からも信頼されていた。

 ルギウスにとっての不運は、出現した魔王と、それと知らず一人で相対する形になってしまったことだ。普通、強い魔人は強大な瘴気を発するが、魔王“詩人”はその辺りが特殊だった。

 ルギウスはそれでも命を懸けて騎士としての役目を果たした。アーガやユリウスら精鋭の騎士が王都に集結できたのも、ルギウスがこの敵を魔王と看破したおかげだ。

 決して目立つ騎士ではなかった。だが、こういう男たちの一つひとつの働きが、今の世の平和を作っているのだということを、ルギウスの顔を思い出すとき、俺は強く感じる。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 一つ一つのエピソードについて、ああ、あのときの騎士か、と思い出し、これは読み返したくなりますね。 ユリウス本編においては、さほど目立った出番の騎士ではなかったかもしれませんが、こうひて一人…
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