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魔王“片目” “詩人” “北風”

 魔王“片目”


 魔王“片目”は、ナーセリ王が麾下の騎士たちとともに討ち果たされた、かつての魔王の名だ。

 見上げるような大男であったそうだ。

 一言も喋らぬこの魔王は、その名の通りの単眼を光らせて周囲を睥睨し、岩をも砕く剛腕で何人もの騎士の命を奪った。

 鋼のような身体には、鍛え上げられた騎士達の剣であってもほとんど傷をつけられなかったし、受けた傷をたちどころに回復する再生能力までも有していたようだ。

 無尽蔵の体力で暴れまわる魔王に、いくら斬りつけてもすぐに回復されてしまう。騎士たちにとってはまさに絶望的な戦いであったが、最後はナーセリ王の剣が、その唯一の弱点であった単眼を貫いた。

 多くの犠牲を払った末、魔王は滅びた。




 魔王“詩人”


 時を同じくしてナーセリとシエラ両国に一体ずつ現れた魔王のうち、ナーセリに現れた魔王がこの“詩人”だ。

 ひょろりとした若い男で、整った顔をしていたという。

 外見上、異形はどこにも見えなかったが、舌が、何か別の生き物であるかのような異形であったという。

 “詩人”は、言葉を操る魔人であった。

 本人は「天から言葉が降ってくる」などとうそぶいていたそうだが、ふん。何が、天だ。だがいずれにせよ、その言葉通りの現象を己の周囲に発現させて、敵を打ち倒すという極めて強力な能力を持っていた。

 言葉を武器とするという能力のためか、我々人間と会話が成立する、非常に珍しい魔人であった。

 この魔王との戦いで、アーガ、ラザ、テンバーという三人の騎士が命を落とすことになった。厳しい戦いであったが、ユリウスがその肩を切り裂き、最後はアーガが首を斬り落とした。


 “詩人”の武器とした言葉を紹介しておく。


「麗しき光の輪、天より」

 天より、身を切り裂く衝撃力を伴った光が降り注ぐ。


「逞しき岩の腕、地より」

 地より、巨大な岩の腕が現れ、敵の身体を打ち砕く。


「わが身、空にして虚ろ」

 己の身体を虚ろにし、敵の攻撃をかわす。


「良き剣、矢にて応えよ」

 光の矢が飛来して敵を撃つ。


「傅け、刃」

 無数の刃が沸き起こり、敵を切り裂く。


「留まるは闇、喰らいつきて」

 不定形の闇が現れ、敵の身体を噛み砕く。


「光り、貫く槍を」

 光の槍を指から放ち、敵の身体を貫く。




 魔王“北風”


 魔王“詩人”と同時期にシエラに現れた魔王、それが“北風”だ。

 “詩人”とはまるで対照的な巨漢で、氷の刃と暴風とを自在に操り、シエラの騎士たちを寄せ付けなかった。

 常に風と冷気をその身にまとっていたので、周囲はまるで真冬のような寒さになったという。

 シエラ第一の騎士ラクレウスが、うむ、そうだ。ラクレウスがこの魔王を追い詰めたものの、敗れ去ってしまった。

 それで最後は、コキアスに先導されたユリウスと俺が再度“北風”討伐に赴き、魔王と対峙したユリウスがその息の根を止めた。以上だ。






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― 新着の感想 ―
[良い点] ナーセリ王の勇猛さ、ナーセリの騎士たちが忠誠を集めるに足る御仁であることがよくわかるエピソードだなぁ、と。 今の玉座にある王も風格がありますが、王子であった頃のナーセリ王も、これまたカッコ…
[一言] 伝聞の体をとった直後に討伐メンバーとして向かったこと書いてるw ぼかしきれてないよ、リランさん。 これを目にする人の多くは真実を知ってるか薄々推測しつつ公言はしないような立場の人なんでしょう…
[良い点] 本人の名誉のためとはいえ、公にはラクレウスは北風に敗れたことになるんですよね…。真実を知る人がいるのがせめてもの救いです。 [一言] 出来の良い悲劇というのは酷いものです。クソッタレと毒づ…
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