魔人“震え歌” “のっぽ(上)” “のっぽ(下)”
魔人“震え歌”
魔人“震え歌”は、ナーセリとシエラの国境付近の村に出現した魔人のうちの一体だ。
瘴気の沼より現れた当初から、遥か遠くまで響き渡る奇怪な歌を歌っていたそうだ。恐怖に陥った村の住民たちの付けた名が、“震え歌”というわけだ。
実際にその姿も奇怪なものであった。体にいくつもの小さな口が付いていて、それが同時に歌を発するという、実に気味の悪い魔人だったが、ユリウス、コキアス、ロサムの三人の騎士と対峙し、討ち取られた。
何か能力は持っていたのであろうが、それを発揮する暇すら与えられなかった。手練れの騎士三人といっぺんに戦ったのであれば、当然の結果といったところか。
魔人“のっぽ”(上)
魔人“のっぽ”は国境付近の村に現れた強大な魔人だ。
木々の枝よりもはるかに高い長身を誇りながら、その身体はまるで棒のように細かったという。
この魔人は非常に珍しく、実は二体の魔人が上半身と下半身をそれぞれ構成して一人の魔人の形をとっていたのだ。
ユリウスら三人の騎士に包囲された際に、突如分離した“のっぽ”に、コキアスとロサムは完全に不意を衝かれた。
“のっぽ”の上半身を構成していた、長い腕と短い足を持つ魔人は、その剛力にものを言わせた死の抱擁でロサムを締め上げ、コキアスにも手傷を負わせた。
二対一の状況を最大限に生かした騎士側が何とか仕留めたものの、彼ら二人のそれ以上の討伐行は不可能となってしまった。
魔人“のっぽ”(下)
“のっぽ”の下半身を構成していたのは、長い脚と短い胴体をした魔人で、上半身の魔人と合体して一体化するときには腕と頭を体内に収納することができた。
ユリウスらと戦ったときは、不意に腕を出現させて殴りかかったが、歴戦の騎士の勘で異変に気付いたユリウスに防がれた。
ユリウスが、「石のように硬い拳」と形容したように、その拳をまともに食らえば騎士といえどもひとたまりもなかったであろう。
だが、上半身との分離の瞬間という最大の好機を生かせなかったこの魔人には、もうユリウスに勝つ術は残されていなかった。
それでもずいぶんと善戦したようで、ユリウスはコキアスたちの救援に行くことはできず、二人は討伐行から脱落することとなった。




