【漫才】最後の晩餐
二人「はい、どうもー○○○○です」
ツッコミ「よく、無人島に何か一つだけ持ってくなら……みたいな話ってあるじゃん?」
ボケ「ああ、あの無駄な話ね」
ツッコミ「無駄って言うなよ」
ボケ「俺が持って行くなら、間違いなくこれだね。折れない心!」
ツッコミ「まさかのメンタルでした。いや、そういうのは普通、料理できるサバイバルナイフとか、火をつけるためのライターとか、そういうのを持って行くんだよ!」
ボケ「文明の利器に頼るな! 道具があっても、心がやられたらそこで終わりなんだぞ? 自然を見くびるなよ!」
ツッコミ「これ、そういうタイプの話じゃないんだけどな……」
ボケ「まず無人島に行かないし、リアリティがない!」
ツッコミ「なら、最後の晩餐はどうする? っていう話はどう?」
ボケ「最後の晩餐?」
ツッコミ「明日、お前が死ぬとする。最後の晩餐何食べる?」
ボケ「その時に食べたいものじゃない? そんな無駄なこと考えても意味ないよ」
ツッコミ「こういうのは先に決めておかないと、最後ジタバタして、お前みたいなのは後悔して死んでしまうぞ?」
ボケ「うーん。なら、お粥とかになるんじゃねーの?」
ツッコミ「なんでだよ!」
ボケ「お前、最後の晩餐だぞ? よく考えろよ? 明日死ぬんだぞ!?」
ツッコミ「そうだよ?」
ボケ「飯なんか喉通るわけねぇだろ! たぶん病院で、鼻とか喉とかに、いっぱい管とかが通されてる状態だよ! だいたい外出許可が出ない! 食べれるものだってマックス病院食が限界だろ!」
ツッコミ「そういう生々しい話じゃないんだよ」
ボケ「リアリティがなきゃ意味ないんだよ! 食えないもの提案して何になるんだ!」
ツッコミ「それは……」
ボケ「うちのばあちゃんみたいに、葬式の時、プリンが好きでしたとか発表されて、そんなもん最後はプリンしか食えなかったんだよ! って成仏しながら叫ぶことになるぞ!」
ツッコミ「分かった、分かった。俺の提案の仕方が悪かったな。なら、明日隕石が落ちてきて、どうあがいても死ぬとする。そしたら、何食べる?」
ボケ「はっ?」
ツッコミ「これは、万が一にもありえるかもしれない話だよ。俺はお袋の作った卵焼きかな? いや、みそ汁がいいかな?」
ボケ「おい、馬鹿なこと言うなよ。隕石が落ちてくるんだぞ? それはお前のお袋にも、隕石と共に最後の晩餐がやって来るってことだ。作らせてる場合か! ママのおまんまそのまま抜きか!」
ツッコミ「あーー、なら、行きつけの店に行くとか? あ、日本人らしく、最後は回転しない寿司を、お金も気にせず食べるとかな」
ボケ「おい、ちゃんと考えろ! その店の店主にも、最後の晩餐が待ち構えてるんだよ! 店主にも家族がいるんだよ! そんなどこの馬の骨か人間の骨か分からない客のために、飯なんて振る舞ってられるかよ!」
ツッコミ「うーん、そう言われるとそうなんだけど……」
ボケ「他人に寿司一貫握ってる間に、一巻の終わりだよ!」
ツッコミ「うまいこと言ってんじゃないよ!」
ボケ「隕石は地球の回転も、回転寿司の回転を止めて、全部回転しない寿司屋にしちまうよ! 隕石が迫る直前には、精々頑張って、3分で作れるカップラーメンを自分で作って食べるのが限界だ」
ツッコミ「なんか、お前つまらないな……」
ボケ「なんだと? ならお前、こういうのはどう思ってんだ? 母親と恋人が海で同時に溺れている。どちらかしか助けられません。どちらを助ける?」
ツッコミ「究極の2択ね。俺はなんだかんだ言って、母親を助けるかもしれない。自分をこの世に産み育ててくれた人はこの世に1人しかいないからね」
ボケ「恋人は何人もいるってか! この浮気野郎が!」
ツッコミ「なんでそんな解釈になるんだよ! なら、お前はどっちを助けるんだ?」
ボケ「そんなもの、誰も助けられるわけないだろ! 海の怖さ見くびるなよ!」
ツッコミ「これ、そういう話じゃないだろ? 仮に助けられるなら、どうするかなんだよ」
ボケ「この問答はな、3人の人間のうち2人が助かってるってところがミソなんだよ!」
ツッコミ「2人助かってる?」
ボケ「(探偵のように)いいか、その場には3人の人物がいる。溺れて助けられるのを待っている人物が2人。溺れている人間を傍観している人物が1人。3人の中で死ぬのは1人だけだ!」
ツッコミ「なるほど」
ボケ「だから、俺は2人を助け、自分が死ぬ」
ツッコミ「とんちか! お前、一休さんなのか!」
ボケ「そして俺は、最後の晩餐を食べられずに、後悔して死ぬ!」
ツッコミ「結局後悔するんかい!」
二人「どうも、ありがとうございました」