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閑話 生徒会は作業中

「いやぁ…ルシア君てさ、えっちだよね」


「は?」


 何を言ってるんだこいつは。と、ギルバートを睨みつけるが、周りで作業をしている一部の生徒会員がこくりと頷いて同意していた。


「わかるぜ。制服着てるとき、首から足まで露出が全く無いのが、逆に良いんだよな〜」


「うんうん、あそこまで着込んでるのに、腕とか耳とか時折見せる白い肌っていうのが良いよな。見えないけど見えるっていうのが最高だと思います」


「お〜、アレックス君もメルタ君もわかってるぅ。運動してる時のうなじとか、あれは卑怯だよねぇ」


 などと言っている。全く意味がわからない。


 確かにルシアさんは男にしては線が細い。それに女装をしている為に身体の男らしいところを隠すように着込んでいる。だがそれが一体何だというのか。


 学園の広報誌を確認する作業をしている生徒会。そこで始まった会話に、僕は頭が痛くなる。


「貴方達はそんな話をする為に僕を呼んだんですか?」


 僕の言葉にギルバートとアレックスは顔を背けた。


「いやまあ……ただちょっとぉ、その着こなしって〜……スレイ君がやらせてるんだよなぁって思っただけで」


 ギルバートは照れながらそう言った。僕はため息をつく。どうせこの男は僕の事を羨んでいるのだろう。


「貴方達は相変わらずですね。そういうところが嫌だと以前言いましたよ」


「だって仕方ねぇよ〜。お嬢様ぶってない時のルシア、本ッ当に無防備なのはお前が一番良く知ってるだろ?」


 アレックスが手元にある付箋紙を貼りながらそう言うと、周りの皆がうんうんと首を縦に振る。


「それは、まあ…そう…ですけど」


 確かに、人目につかない所でのルシアさんは無防備過ぎる。あの格好なのに、風紀委員室や馬車の中などでは男だとバレているのをいい事に最近はダラけていることが多い。目のやり場に困る事もしばしばある。


「というか、なんでそんな事を知ってるんですか」


「そりゃ最近生徒会室にも遊びに来てくれるも〜ん!ルシアくん!」


 ギルバートは自慢げに答える。


「は?何ですかそれ。聞いてませんけど」


「あれぇ?そうだっけぇ?でも最近は僕とも仲良くしてくれるんだよぉ?スレイくんのことも色々教えてくれるしぃ〜」


 ギルバートはニヤつきながら話を続ける。なんだこいつ。ムカつくし、殺意が湧く。


「この間なんて機嫌悪そうに『俺のことは放っといてくれ』とか言ってたのにさぁ〜。お菓子あげたらすぐに嬉しそうにしてたんだよねぇ」


「……へえ?」


 僕は静かに怒りを燃やす。僕の知らないところで、ルシアさんはギルバートと接触していたのか。後でちゃんと聞かなくては。


「確かに、なんだかんだで甘いですよね、ルシア先輩。口では乱暴ぶってますけど、優しいですし……」


 メルタが少し頬を赤らめてそう言うと、男達はうんうんと頷く。


「それに最近暑いからって、スレイ君が見てない隙に生徒会室でタイツ脱いだりしてますもんね」


 資料に書き込みを入れていたアリステアが一言言うと、一部の男達が一斉に声を上げる。


「アリステア!余計なことを言うな!」


「先輩!しー!しー!」


 我関せずとしていたネルス王子が顔を真っ赤に染めて慌てて立ち上がる。メルタもアリステアの口を抑えこんで、彼は口をもがもがとさせていた。


「へぇ?それはそれは……?」


 僕は思わず口を挟んでしまう。アリステアの発言でルシアさんの肌を見たことのある人物がこの場にいるということが分かったからだ。


 生徒会室を見渡せば、こちらから目を逸らしているのはネルス王子と、メルタ辺りか。あと告発したアリステアも有罪だ。ギルバートとアレックスは「えぇ…何それ聞いてない」としょぼくれている。懐からナイフを取り出す辺りで、メルタに抑え込まれているアリステアが首を傾げた。


「ふむ?彼は男ですし、同性に素肌を見せた所で特に問題は無いのでは?」


 その発言に周りの男達がピクリと反応する。確かにそうだ。ルシアさんは男だし、今は夏真っ盛りだ。彼から素足を見せたどころで特に問題になることはない。まぁそれは、女装していない普通の男子生徒ならばの話だが。


「いやその辺りは……今更じゃないか?」


「……」


 そう言ってアレックスや周りの生徒会員はすとんと着席する。


「……うん、深く考えるだけ無駄だと思う……皆、作業に戻ろうか」


 そう言ってネルス王子は、しょぼくれているギルバートを引きずりながら生徒会の仕事に戻った。

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