第一章2 『お母さんからのたより』
ーお母さん「Re:みち」
映し出された画面には、こう記されていた。
ーリュックの手前のポケット開けてみて。
ん?…と首を傾げお母さんの方を見ながら、
隣の座席に手を伸ばす。
お母さんの顔は何とも言えない顔で、
正直、いつもよりも老けて見える。
ーシュゥー…
お母さんを見ながら、リュックを漁っているうちに
新幹線が発車した。
そして、見てしまった。
お母さん…らしくないくらい
大きく手を振る姿を。
少しばかり驚いたが、
動じていることが悟られないように
リュックに手を突っ込んだまま、お母さんから視線だけは離さなかった。
ーガタンゴトン…
「急ぎじゃなきゃいいけど」
姿がすっかり見えなくなるまでに、秒もかからなかったが
魔法がかかったように時間がゆっくり流れていた。
そうこうしているうちに、
桜ピンクの封筒と茶封筒の2つが出てきた。
茶封筒には、
ー先にピンクの方から開けてください。
と。
桜の押し花が散りばめられた封筒をそっと開く。
みちへ。
今日はいよいよ、東京への出発の日ですね。
緊張しているでしょうか。
今日は、みちが生まれた日と同じくらい
空が晴れていてよかったです。
いつも、みちには厳しくしてしまったね。
ごめんなさい。
ママにとって、みちは可愛くて、素敵で、
一番の憧れで…少し嫉妬していたかも知れません。
みちは、私にはないものをなんでも持っていました。
きっとこれからも持ち続けると思います。
本当は、上京させたくない。
離したくない、のが本音ですが、
母として、応援させてください。
少しばかりお祝いとして、
茶封筒に包ませていただきました。
みち、応援しています。
大好きです。
お母さんより。