怨
ケタケタと笑っていた。
そうだ。奴は楽しそうにケタケタと笑っていたのだ。
早朝の教室、奴は口を大きく開けたまま操り人形の様に笑っていた。
教室中によくわからない術式やら頭蓋骨など呪いのグッズが散らばていた。
あまりの異様さに俺は扉の前で立ち尽くしていた。
しばらくすると奴はこっちに気が付いたようだった。
「呪い……。君の部屋に置いておいたよ。」
「…え?それって……」
そして、呪いを確実に残す様に言った。
「3日後の丑三つ時が楽しみだな。」
そこまで言うと奴は教室の窓から飛び降りて死んだ。
俺の心に呪いを残して死んだ。
奴の死は驚くほど事務的に簡単に片付けられ、精神に異常を抱えたものの自殺と判断された。
「何だよあいつ!」
家に帰ると俺は吐き捨てる様に言った。
奴とは同じオカルト趣味が合う仲間だと思っていた。
奴がいじめられた時、力になれなかった側面はある。
しかし、俺に何が出来たというのか。クラスの中心人物に目を付けられた奴が悪い。
『なんで俺にだけ』
そんな気持ちが過った。
なんでいじめた奴ではなく、俺にだけなんだよ。
考えるほどに腹が立つ。
しかし、そんな気持ちもその日の深夜までだった。
「なんで。なんで。なんで。」
無数のうめき声の様な何かが部屋中のいたるところから聞こえてくる。
オカルトに興味があり今まで心霊現象も何度か感じたことがあったがここまでのものは初めてだった。
そして、本当の恐怖はここからだった。
結局、寝れないで過ごした俺は疲れ切っていた。
学校に行く気が起きない中、母親が珍しく俺の部屋に入ってきた。
「おはよう。」
「うん。」
「今日、学校休みだって。」
「休み?」
「そう。昨日の事もあるしなんかまた別の死者が出たらしいよ。」
「え?」
「なんか〇〇って子だって。」
「え?」
その名前は奴をいじめていた人間の名前だった。
俺はその言葉を聞いて必死に家中を探した。
奴は何回か家に来たことがある。
親に変な顔をされながらも必死に探した。
しかし、徹夜した疲れてというのは知らぬ間に溜まっていたようで気が付かないうちに眠ってしまっていた。
「ナンデ。なんで。ナンデ。」
部屋中に響くうめき声で目が覚めた。昨日より激しいうめき声だった。
部屋のベットに連れてきた親を恨んだ。
結局、その日も一睡も出来なかった。
救いの様な朝日と共にうめき声は止んだが、それと同時に親が部屋に入ってきた。
「体調、大丈夫?」
「うん。」
「ちょっと、この後病院行こう。」
「病院?」
「クラスがすごい事になっているんだよ。」
「すごい事」
親が言うには、うちのクラスに不審死が続出しているらしい。
呪いが拡大している事を感じた。
部屋にあるオカルトグッズのおかげでまだ何とかなっているだけで奴が仕組んだ命がけのかくれんぼが始まった。
いち早く家に帰りたかったが、親はそれを許してくれなかった。
結局家に帰れたのは22時頃。
俺は慌てて部屋の中をひっくり返す勢いで奴の痕跡のあったものを探した。
「あ。」
疲れ切ってへたり込んだ時、目の前に木彫りの人形が目に付いた。
これは確かあいつの人形だ。そう思った瞬間には人形をへし折っていた。
「ケタケタケタ」
耳元で何かの笑い声が聞こえた。
その瞬間、思い出した。
これは奴がくれた呪い除けの人形。
そして、これをへし折った時から感じる悪寒は……