転生者の母も考える
大往生だった前世を思い出したのは、出産の激痛時。前世ではRPGゲーム大好きな婆さんだったから現世の記憶と違和感なく馴染んだわ。
ここは和洋折衷RPG世界って感じで、服装は上下に別れてる二部式着物や袴に作り帯。そして髪や目の色がカラフルで顔の造形や体格的に人種がない。あと重力とか前世の物理法則が当て嵌まらない。「身体強化」で高くジャンプしても着地で足が地面にめり込まない。地球じゃあり得ない、まさに異世界。
人種はないけど外国はあって、言葉が違うから外国人はすぐわかる。この世界の全員が持つスキル『自動翻訳』で言葉も文章もわかるから、副音声や文字で外国人だとわかるのよね。外国語や外来語を悩まなくていいから有難いわぁ。
この世界にはオーラを重視して王侯貴族とする国と魔力を重視して王侯貴族とする国がある。オーラを重視する国はハーレム制で魔力を重視する国は基本的に一夫一妻制。オーラも魔力も両親からの遺伝だけど、ランクが高いオーラ持ちは妊娠しにくいからハーレムという制度が生まれたんじゃないかしら。今のところ外国は全て魔力やオーラで身分制度があるけど、我が日ノ出皇国は百年ほど前に完全に身分制度がなくなった唯一の国で、オーラと魔力のどっちを重視するかは家によるみたい。
で、相手によって性別の役割と認識が変わるってのが、未だに馴染めないのよね。別に前世を思い出したからじゃなく、この世界でも生まれつきの性別認識のまま変わらない人も多いし、私も女として産まれて認識が変わらないってだけ。
元夫が出て行く時の一番の衝撃は、息子を捨てるのに躊躇しなかった事。この世界でオーラ持ちは、特に子供を大事にするって言われてるのに。
私達は下級オーラで、オーラ無しの「只人」とたいして変わりないから元夫は親としての愛が芽生えなかったのか。それとも同ランクの私と違い「真実の愛」の相手には強烈な恋愛感情と性別認識が芽生えて、一人息子さえどうでもよくなったのか。
前世は終戦後に見合い結婚して夫とは家族という最小単位の社会を穏やかに円滑に営めたと思う。前世の感覚だと「夫婦」って相棒だと思うのよね。
前世は見合い、現世は同じ村の幼馴染で、恋愛を経験せず結婚したからなのかもしれないけど、恋の情熱ってずっと続かないんじゃない?一緒に生活するようになると互いの存在が日常な訳でしょ。当たり前の存在に新婚のままの情熱が変わらず続くの?妊娠中や互いに老いたら身体を重ねるのなんて無理よ。夫婦関係が継続する秘訣って感謝と信頼だと思うのよ、私はね。
だから「真実の愛」とかいって恋愛至上主義を掲げてる人は、性欲をコントロールできないのを見栄張って誤魔化してるだけじゃないの?って私は思ってるんだけど。