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30.幕間.うごめく者たち

 暗闇が広がる空間に小さな明かりが灯る。中心に穴が開いている円卓と、五つの席が照らし出された。どうやらどこかの部屋の中のようだ。


 席には色のついたローブを羽織った人物が座っている。白、赤、青、緑、茶。全員その容貌(ようぼう)(うかが)うことはできない。フードを深く被っているためだ。


 そんな中、白いローブを羽織った人物がしわ深い手を円卓に置き、おもむろに口を開く。


「では、戦況報告としよう。『赤』から順といくかの」


 そして、言い終えたところで円卓を指で叩いた。同時に、赤いローブを羽織った人物が、愉快そうに大きな笑い声をあげる。しかし、その声に反応するものはいない。皆一様に口を閉ざしたままだ。


 やがて、笑い声が収まる。


「俺様が失敗するはずねぇだろ。無事『魔将石』を奪い取った。損耗(そんもう)も軽微なもの。むしろ、骨が無さ過ぎて張り合いがねぇ」

「そうか。他に気になったことなどはないか」

「ない」

「ならば『青』。お主はどうだ」


 白いローブを羽織った人物が再び円卓を指で叩く。続いて、青いローブを羽織った人物が、微かに見える唇を妖艶に歪ませた。


「私の方も無事魔将石の回収に成功しました。『白』、貴方が王国の間抜け共を引き付けてくださったおかげで」

「特に問題ないということだな」

「ええ」

「ふむ。では『緑』。お主は」


 芝居がかった動作で、緑のローブを羽織った人物が立ち上がる。そして大きく一礼し、弾むようにして口を開けた。


「ワタクシもも~ちろん成功ですとも~。以下は御二方とおな~じで~すね~」

「なるほど。『茶』。お主の方は」


 茶色のローブを羽織った人物が、機嫌が良さそうに鼻を鳴らす。


「御三方と同じだわ。魔将石の回収に成功し、損耗もほとんどない。いつでも次にステップに移行できるわよ」


 言葉が途切れるとすぐに、白いローブを羽織った人物が小さく頷いた。さらに、しわがれた声で続ける。


「ワシは失敗した。まぁ、計画通りではあるがの」

「ははっ! でも成功していた方がよかったのには違いねぇだろ。それに、中途半端に盗み出したせいで、『魔王石』の在りかがわからねぇ。この失態、どう責任を取るつもりだ」

「『赤』。言葉を慎みなさい」

「なんだ『青』。やる気なら買ってやるが」

「くだらん喧嘩(けんか)はよせ」


 白いローブを羽織った人物が威圧感を放つ。辺りを呑み込むようなそれに怯えたのか、二人が口を(つぐ)んだ。


「……魔王石の封印は厳重なものだ。それに、鍵が無ければ破れまい。とはいえ、在りかがわからぬのはよろしくないからの。こちらで探しておく」

「わかったのだわ。それより、さっさと本題に入ってほしいのだけれど」

「そのと~りで~す。時は有限なのですから」


 言い終わったところで、五人の雰囲気が変わる。張りつめた空気の中に、どこか待ちわびたと言うような歓喜が含まれていた。


「計画を一段階進める。各人、魔将石の封印を解き放ち、(いにしえ)の魔将を解放せよ」


 その言葉に、四人が小さく笑い声を漏らす。


「ハハッ、そうこなくちゃな!」

「ふふ、待ちわびていました」

「やっ~と始まるので~すね~」

「本当に長かったわよ」


 おそらく長い間待たされてきたのだろう。声に悦楽が含まれている。


「解放後は速やかに使役。しばらくは様子を見ることとする。一歩間違えれば計画どころではなくなるからの」

「ハンッ。ここまで来て日和見(ひよりみ)か。そんなことしなくても、一気にやっちまえばいいじゃねぇか」

小童(こわっぱ)は黙っておれ。四魔将がいかに強大な力を持っていたかも知らぬ者が語るな」


 赤いローブを羽織った人物が舌打ちをした。それが気に障ったのか、青いローブを羽織った人物が動き出そうとする。


「ま~ま~お二人共。今日は祝福すべ~き日なのですから、そこまでとしておきましょう。ワタクシは早くこの話し合いを終えて戻りたいのですよ」

「私も一票入れるとするのだわ」


 青いローブを羽織った人物が身を正すようにして座る。そして、四人の人物が、再び白いローブを羽織った人物に注目した。


「悲願を果たす時が来た。各人、健闘を祈る。それでは解散としようか」


 言い終わるとすぐに、緑のローブを羽織った人物が立ち上がる。そして、魔法陣を浮かび上がらせて中に消えていった。


 それにつられるように、他の人物達も姿を消していく。後に残されたのは、白いローブを羽織った人物のみだ。


「テレサ」

「ここにおります」


 まるで浮き出るように、どこからともなく銀髪の女性が現れる。メイド服から伸びる手足は白く透き通るようで――いや、実際に透過して見え、一種の儚さを醸し出していた。


「魔王石を探せ。お前の悲願。ひいてはワシの悲願のために」

「わかりました。それでは失礼いたします」


 テレサと呼ばれたメイドがにっこりと笑う。その後、忽然(こつぜん)と姿を消した。


「……ようやくだ。ようやく……」


 白いローブを羽織った人物が魔法陣を展開し、白い光と共に消える。同時に明かりが消え、暗闇に支配されるのだった。

次回は12/1(火)です。

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