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ダンジョンが現れたらしい



とりあえず情報収集と食料調達だ。冷蔵庫に少し余っているが、今日、明日で尽きるだろう。



缶詰めあたりを手に入れておきたい。駅前のスーパーにするか。余っているといいけど。

ここから歩いて15分ほどのところだ。今のステータスならなにもなければ全力で走って5分もかからないだろう。



外のことはまだなにもわからないので「隠密」を発動させる。



家を出て、20メートルほど進んだところで「索敵」に反応があった。ゴブリンの群れだ。少し試すことにしよう。


ゆっくりと気づかれないように近づいて行く。

ゴブリンたちまで5メートルほどになった。



「隠密」を発動させながら「縮地」で一気に接近する。目の前に来てようやく気づいたのか、



「ギャ!」



と驚いたように悲鳴らしき奇声をあげるが、



「遅い」



護身用にと持ってきた料理用の包丁が首を切る寸前で、断末魔をあげることなく緑色の血飛沫を上げて倒れる。あと4体だ。



気づいたゴブリンたちが棍棒で襲いかかってくる。「高速思考」を発動させながら軽々と見切り、ゴブリンたちの背後に回る。

作業のように首を裂いていく。灰色のパーカーを汚さないようにきちんと背後から。最後の一体を倒す。


※レベルが上がりました

※レベルが上がりました


「ふぅ...」



戦闘の終了を知らせるような、レベルアップのアナウンスを聞き安堵の息を吐く。

生き物をむやみに殺すのは反対だが、ゴブリンは全く躊躇なく殺せた。人を食べているのを見たせいなのか、他に理由があるのかは知らないがそれで困ることは無さそうだ。



それはそうとゴブリンを倒してさらに体が軽くなった。これがレベルアップか、と思いステータスを確認する。



名前 カミヤ ハルヤ

職業 執行人Lv.3↑(Lv.30で転職可能)

加護 陰神

Lv.3↑

HP413/413↑

攻撃320↑

体力270↑

敏捷520↑

防御270↑

知力320↑

スキル

殺闘術Lv.2↑、剣術Lv.6↑、恐怖耐性Lv.1、混乱耐性Lv.1、身体操作Lv.1、隠密Lv.2↑、隠蔽Lv.1、暗視Lv.1、縮地Lv.2↑、身体能力強化Lv.1、高速思考Lv.2↑、索敵Lv.3↑

ユニークスキル

急所読み



レベルが上がってステータスも上がっていた。スキルを使うとレベルがあがるらしい。



ある程度、確認も済んだしと先を急ぐ。



駅周辺の被害はほとんどなかった。というか、これまでもほとんど魔物を見ていない。

そして、生きている人もほとんど見ていない。避難しているのか、食べられてしまったのか。わからないが改めてこの世界の異常な変わりぶりを確認出来た。



スーパーにつくと中から反応があった。見張りのような人が2人ほどいたが「隠密」を発動しているので気づかれることはない。見つからないように中に入ると中年くらいの男性4人が話しているのが聞こえた。



「ダンジョンになったのは発電所なんだってよ」

「だから電気が止まってるのか...」

「なんでそんなに詳しいんだよ?ろくに情報来てないってのに」

「市役所に知り合いが居るんだよ。正式な発表があるまで黙っててくれとか言ってたけどな!もうすぐ非常用電源で放送があるって言ってたから大丈夫だろ」



ダンジョン!?ダンジョンがあるのか!なるほど、だから魔物が出てきて...

貴重な情報が聞けたぞ。



缶詰め20個、武器になりそうなサバイバルナイフを買うことにした。店員がいないので代金を置いて店をあとにする。



周りを警戒しながら家に向かっているとまたゴブリンの群れと遭遇した。12体と数が多い。レベリングにちょうどいいだろう。

ゴブリン単体は雑魚そのものなので立ち回りさえ間違えなければ負けることはまず、ない。



さっきと同じように「縮地」で一気に詰め寄り買ったばかりのサバイバルナイフで首を次々と切りつける。

最後に少し大きめのゴブリンの首を切り裂こうとする。少し硬かったが高いステータスでごり押しする。



※レベルが上がりました

※レベルが上がりました

※レベルが上がりました

※レベルが上がりました



おお!結構レベルが上がったようだ。数が多いからな。



ステータスを確認しようとすると

「ピーンポーンパーンポーン」と放送が流れた。

状況を説明するから任意で市役所に来てくれということだった。

当然、行く。



午後5時と言っていたから4時過ぎに家を出るとしても3時間ある。電気もないし、やることがないので、身を守るためにもレベリングをすることにした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


終わった。



「死ぬかと思った...」



ゴブリンと戦ってたらいつのまにか発電所の近くに来ていて、魔物で溢れかえっていたのだ。

逃げようにも囲まれていて抜け出すしかない状況で、初めて劣勢の1対多の戦闘。リスクは高かったが得るものも大きかった。



名前 カミヤ ハルヤ

職業 執行人Lv.18↑(Lv.30で転職可能)

加護 陰神

Lv.18↑

HP418/632↑

攻撃470↑

体力420↑

敏捷670↑

防御420↑

知力470↑

スキル

殺闘術Lv.4↑、剣術Lv.7↑、恐怖耐性Lv.5↑、混乱耐性Lv.5↑、身体操作Lv.5↑、隠密Lv.4↑、隠蔽Lv.3↑、暗視Lv.1、縮地Lv.3↑、身体能力強化Lv.3↑、高速思考Lv.5↑、気配察知Lv.3New、観察Lv.5New

ユニークスキル

急所読み




オークみたいな俺の2倍くらいの魔物や狼型の魔物も出てきたが難なく殺せたし、「気配察知」を手に入れて後ろからの攻撃も手に取るようにわかるようになった。何よりレベルも上がったからな。これならひとまず戦闘に関しては安心だ。



家に帰って早めの夕食をとる。朝、昼と食べていなかったので腹が減っていたのだ。説明が長くなるかも知れないからな。炊飯器のご飯は冷めていたがうまかった。



時間より少し早いが先に市役所に向かうことにした。かつかつだと混むかもしれない。



動きやすい服に着替えてナイフを内ポケットに入れる。水の入ったペットボトルやメモ帳、ペンなどを入れた小さめのリュックを持っていく。



「隠密」を発動させ、「索敵」、「気配察知」を使い警戒しながらいく。

道中、トラブルや魔物と遭遇することはなく、一時間前に着いた。まだ一時間前だというのにかなりの人が集まっている。



そわそわしているのか、妙に静かだ。誰も話せるような雰囲気ではないので、少し前の方に行き、静かに待っていることにした。

30分前にもなると人で埋め尽くされた。ここに来るまでリスクもあったろうに、情報は欲しいということか。



時間になり、説明会が始まった。

「まず、説明を円滑に進めるため、質問などは説明が終わり次第受け付けることとします。現在、世界各地でダンジョンと呼ばれる迷宮が突如出現しました。中には魔物と呼ばれる危険な生き物が住んでおり、その魔物が出てきて町に被害をもたらしているのです」



聞いている人たちの中でどよめきが起こる。そりゃそうだ。いきなりそんなファンタジーのようなことを言われて驚かない訳がない。



「続けます。ダンジョンは国民に危険を及ぼすとし、アメリカはダンジョンの破壊を試みましたが、失敗に終わったと報告がありました。また、原因はわかっていませんが魔物は普通に殺すだけではすぐに再生し、元に戻ります。魔物を倒せるのはステータスという、自分の能力の数値やスキル、レベルなどが透明な窓で見える人だけです。この中にもおそらくいるでしょう」



ちょっとまてーーーい!!!

ステータスは全員に見える訳ではない!?

さらっと衝撃的なこと言ってきたな!!



「この町、この世界の安全にはあなた方「視える人」の協力が不可欠なのです!どうか、私たちにお力をお貸し下さい!」


と言って頭を下げる。



「............」



沈黙が流れる。



「今のところ上空からの確認では魔物は町にいるという情報はありません。現在も警察官や自衛隊の中で「視える人」たちがダンジョンに潜って魔物を間引きしてくれています。被害を受けた方についてはこの後こちらに報告をお願いします。我々も復興に精一杯頑張ります。一緒に乗り越えて行きましょう!

質問のある方は挙手し、当てられた方は発言してください」



少しの沈黙のあと一人の女性が手を上げた。



「亡くなった方々の葬式はどうするんですか」

「復興に伴い行います」



これに火が着いたのか次々と上がっていく。



「電気はどうするんですか」

「復興の目処はついていますのであと数日で復旧する予定です」

「家を無くした方は?」

「報告の際にお伝えします」

「仕事や食事は?」

「明日以降、安全が確認が取れ次第、こちらから連絡いたします。この後食料を配布します」

...

...


うんぬんうんぬん。



「これにて説明を終了をします。ステータス持ち以外は解散してください」



と言われるとぞろぞろと食料を持って帰っていった。



3千人くらいいたのに残っていたのはたったの50人くらい。これが全員という訳ではないだろうが、少ないな...



「皆さんにはこれから個別に話をしていただきます。それではこちらへ」



と俺を含めた20人くらいを一人ひとり案内される。少し狭めの取調室とは違う感じの個室に案内された。



「このような事態になっても淡々とことが進んでいるのは凄いですね」

「上からの指示がかなり的確なもので。大臣がラノベ愛読者だったのかもしれませんね」



他愛ない話から切り出してみるとユーモアで返された。見ためは堅い、仕事が出来るクールビューティーな感じの綺麗な女性だが意外と気さくな人なのかもしれない。



「それで、今回はどのような話を?」

「はい、このような事態となりまして、500人に一人にステータスが視えるようになる、という異常な事態となりました。現在日本には100個のダンジョンが確認されていて、警察官や自衛隊にいるステータス持ちだけでは間引きが追いつかないようになっています。そこで、この度国が設けることになった組織、「サルバドール」に入って欲しいのです」

「話はわかりました。出来る限りの協力はしようと思っています。サルバドールの活動内容など、詳細を教えていただけますか?」

「ええ、もちろんです。主な活動はダンジョンに入って魔物を倒すことですね。あと、ステータスを悪用する強力な犯罪者を捕らえることですが、これは警察官や自衛隊が主となってやりますので、万が一の応援という感じですね。身の安全こそ保証しかねますが、組織に入って頂ければ衣食住は確実に保証いたします。社会的地位も国が認めたものとなりますし、給金もかなり多くもらえる上、討伐によるボーナスももらえます。まあ、冒険者ギルドと似たような感じですね」



ハイリスクだがハイリターンだ。リスクはレベルが高くなれば減るし、衣食住も約束してくれる上、第一にあのブラック企業を辞められるというのは大きい。



「怪我等をして活動が難しくなったらどうなるんですか?」

「それまでの功績にもよりますが最低でも5000万円は退職金として出されます。これまで通りの衣食住の保証は出来かねますが」



うーん。アフターサービスはそんなに良くないけどまたブラック生活に戻るのもなー。

それに、入らなかったらステータス持ちってだけで周囲から怖がられそうだ。社会的地位にはそういうことを無くす意図もあるんだろう。



「わかりました。入ることにします」

「ありがとうございます!一緒にこの町を守りましょう!」



所属する意志があることを言うと満面の笑みで手を握ってきた。こんな美人にいきなり手を握られると男なら誰でも照れるだろう。

俺もその単純な男の一人だ。



「あ、すみません!」



我に返ったのか恥ずかしそうに手を離した。可愛い。そういえば名前聞いてなかったな。



「自己紹介が遅れてしまいました。俺あ、私は神谷春哉と申します。春哉でも神谷でも好きなように呼んでください」

「こちらこそ、自己紹介が遅れてしまって!遠山時雨と申します。おそらく、春哉さんの専属のサポーターになると思いますのでそのときはよろしくお願いします。それと、話し方は崩して」

「サポーター、ですか。どんな感じなんですか?」

「サポーターといってもダンジョンに潜る際の記録付けや必要なもの、情報を提供したりとかですね。功績をあげると体調管理を任されたりしますよ」



そこまでされるのか。サポーター、ありがたいな。というかそこまでいくと...



「そこまでいくと人生のパートナーって感じですね。」



思ったことを口にすると恥ずかしそうに黙りこんでしまった。

これはまずかったかもしれない。急いで謝る。



「すみません。無神経でした」

「いえ、気にしないでください。わかっていてこの仕事を引き受けましたから」



「......」



少し気まずい。



「き、今日は勧誘ということでしたのでこれで帰っていただいて結構です。明日、専属サポーターとなる者が家に向かいますので改めてお返事を聞かせてください。住所はこれで間違っていませんか?」

「はい。間違いないです。何時頃にこられますか?」

「一時頃に伺う予定です。時間がかかるかもしれませんので食事を済ませておいてください」

「わかりました。じゃあ、俺はこれで」

「今日はありがとうございました」



外はもう暗闇だ。遠くに明かりが見えるが、隣街の光だ。



家に帰って軽く食事を済ませる。

今日はいろいろなことがありすぎてすぐには寝つけずに、考えを張り巡らせる。

事態に対して対応が早すぎることや、これからの生活のこと、時雨さんの顔を思い浮かべていた。



ファンタジーの世界に来たみたいでどこか楽しんでる自分がいるが、それに嫌悪感はない。

この異常な世界を楽しんでやろうと、そう決めた。



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