朝起きたらステータスがありました
拙い文章ですが、お楽しみ頂けると幸いです。
久しぶりに夢を見た。働き始めて1年が経ったが仕事が忙しくて寝ても寝た気分になれない日が続いていた。
特にやりたいこともなく適当に決めて入った会社だったが、絶賛後悔中である。サービス残業当たり前の今どき珍しい真っ黒な会社なのだ。本当に、これでもっているのが不思議なくらいに。
夢の内容はというと、子供に戻って父が風呂上がりに牛乳を半裸で飲んでいるのをただただ眺めているだけの最低な夢なのだが。
現実逃避はもう、いいだろう。朝起きたらステータス画面があった。そう。あの、ステータス画面だ。怖いよねー。ブラック企業にいるとこんなことになるんだよー。
普通なら寝ぼけているかと思うだろう。でも
ね、もう信じられなくて、三度寝した後なんだよ。幸い今日は日曜日。そして、まだ午前だ。
もう一回寝てみるか?
「いや、もういいだろ...」
流石にもう寝れない。
というか、自分でももうほとんど信じかけている。これは現実に起こっていることなんだと。
とりあえずテレビでも見ながらステータスでも確認するか。とリモコンの電源ボタンを押すがつかない。電池切れかと思い本体の電源を押しても反応がない。そういえば、昨晩つけて寝たはずのエアコンも止まっている。電気自体が止まっているのか
ん?待てよ。
突然現れたステータス画面に止まった電気。
これは家ごと異世界転移した的なあれじゃないのか?
俺の中で不安と期待が入り交じる。
カーテンを開けて外を確認するとそこには間違いなく見覚えのある場所で、その風景は明らかに崩壊していた。
「は?」
それは全く予想もしていなかった光景で、ステータス画面よりもさらに受け入れがたい事実がそこにあった。
50メートルほど離れたところでゴブリンのような生物が人を食べていたのだ。
「うぷっ!」
あまりの描写に吐きそうになる。胃から込み上げてくるモノを手で押さえながらトイレに走る。
「おえっ...うっ、おえっ」
意味がわからない。意味がわからない。
恐怖という感情が一気に込み上げてくる。
※スキル「恐怖耐性」を獲得しました
※スキル「混乱耐性」を獲得しました
アナウンスが脳内で流れた。その瞬間頭を埋め尽くしていた恐怖が薄まり、思考が晴れた。
明らかに現実。
突きつけられた、異常と言わざるを得ないこの現実で何が起こっているのか頭の中で整理する。
まず、ここは現実世界。にも関わらず、ステータス画面があり、魔物のような生物がいる。
まるで、この世界が書きかえられたかのように...
「考えろ。受け入れろ。」
自分に言い聞かせるように呟いて、ステータスと念じる。目の前にステータス画面が表示された。
名前 カミネ ハルヤ
職業 なし(転職可能)
加護 陰神
Lv.1
HP362/362
攻撃200
体力200
敏捷200
防御200
知力200
スキル
格闘術Lv.7、剣術Lv.5、恐怖耐性Lv.1、混乱耐性Lv.1
格闘術は、自衛隊だった父から教えてもらっていたからだろう。剣術は高校時代の剣道か。
ステータス値のことはわからない。
それに、加護「陰神」とはなんだ?この世界に神がいるのか?
それと職業のところ、転職可能?
色々と疑問が残る。
とりあえずタップしてみる。するとステータス画面に被さるようにして、新たな画面が表示された。
選択可能職業
格闘家、剣士、戦士、拳闘士、忍者、仙人、暗殺者、狩人、漁師、医者、教師、大工
結構よくわからないものもあるな。忍者とか仙人とか。妥当なのでは戦士か暗殺者だろうか。
戦士は外にある魔物を倒すために役にたつかもしれない。
暗殺者は気づかれずに倒せそうなのは大きい。面と向かって魔物を殺せるか、わからないからな。
「うーん、暗殺者にするか。」
そう言って暗殺者をタップして、転職する。
※職業が「暗殺者」に設定されました
※スキル「暗殺術」を獲得しました
※スキル「身体操作」を獲得しました
※スキル「隠密」を獲得しました
※スキル「隠蔽」を獲得しました
※スキル「暗視」を獲得しました
※スキル「縮地」を獲得しました
※スキル「索敵」を獲得しました
※「格闘術」が一定のレベルを越えているため、「暗殺術」と統合し、上位スキル「殺闘術」を獲得しました
※「殺闘術」の獲得を確認しました。職業「暗殺者」が限定上位職業「執行人」に進化します。
進化しました。
※スキル「身体能力強化」を獲得しました
※スキル「高速思考」を獲得しました
※ユニークスキル「急所読み」を獲得しました
「うおっっ!!」
ビックリした。一気にアナウンスが脳内で流れた。いきなり職業が変化したり、ユニークスキル?を獲得したり。
確認のためにもう一度ステータスを開く。
名前 カミネ ハルヤ
職業 執行人Lv.1(Lv.30で転職可能)
加護 陰神
Lv.1
HP362/362
攻撃300
体力250
敏捷500
防御250
知力300
スキル
殺闘術Lv.1、剣術Lv.5、恐怖耐性Lv.1、混乱耐性Lv.1、身体操作Lv.1、隠密Lv.1、隠蔽Lv.1、暗視Lv.1、縮地Lv.1、身体能力強化Lv.1、高速思考Lv.1
ユニークスキル
急所読み
うん、強くなった。ステータスも職業を変更して上がっている。数値だけではなく、本当に体が軽い。軽く100メートル5秒とかで走れそうだ。あくまで感覚では、だが。
ステータスがあるだけでこんなに差がある。これが逆に怖く感じた。ステータスに自分の体を弄られているような気がして...
考えていてもらちが明かない。少し怖いけど外に出て情報収集をしよう思う。
なにせ電気が通っていない。食品も調達すべきだろう。
俺は一人暮らしで他の人の情報も得られそうにない。ここはアパートだが自分以外の住人を見たことすらない。管理人は見るには見るが漫画のように庭を箒ではいてるような真面目な人ではなく、酒を飲んでいるところしか見たことがない。
ともかく、現状を何もわかってない以上、ここにいるのが逆に怖い。半分、得たスキルを使ってみたい気持ちもあるが。
これからどうなるのか。考えると少し不安がよぎるが、この変わってしまった世界にどこか期待を寄せている自分がいることも否定できないでいる。