日本ダービー ミホノブルボンの遥か後方で
日本ダービー当日、東京競馬場には無敗の二冠馬誕生の瞬間を目の当たりにしようと、詰め掛けた大観衆で溢れ返っていました。
それでも少なからずミホノブルボンの敗北に期待する穴党の人々もいたのは事実です。
皐月賞では単勝オッズが1.4倍だったのに対し、この日のミホノブルボンの単勝は2.3倍。
無敗のままクラシック一冠を圧倒的な強さで制しているにも関わらず支持を下げたのは、やはり2400メートルという距離に対する不安を表したものだったかもしれません。
そして大観衆が見守る中、日本ダービーは始まりました。
スタート直後からスピードに乗ったミホノブルボンは外枠から一気に加速し、いつも通りに先頭に立ちます。先頭に立てば一度もそこを譲ることなくゴールする。それが筋肉の鎧を纏った最強馬の走りです。
ライスシャワーはというと、こちらも好スタートを切り前方に取り付きます。それは好位というよりは2番手といった方がしっくりくるほどでした。
ミホノブルボンとの先頭争いに突っ掛ける馬は居らず、他の馬に跨る騎手達の思惑は一致していたと言っていいでしょう。
「ミホノブルボンは後半バテる。バテてもらわなければ困る! バテた最強馬を捉えればダービーの栄冠は……」
そう睨んだ彼らの目に、2番手を行く小柄な黒鹿毛の馬は映っていなかったかもしれません。
そしてレースは佳境を迎え、大欅を先頭で越えたミホノブルボンが府中の直線500メートルに入ります。
やはり無敵のこの馬に距離の壁は存在しませんでした。直線に入り、追い上げるはずの後続たちとの差はむしろ広がっていきます。
追い上げに掛かった16頭に跨る騎手達は疑問に思ったことでしょう。
「ミホノブルボンはわかる。だが、2番手を行くあの黒い馬は何だ!?」
前に述べましたが、この日のライスシャワーの人気は18頭中の16番目です。冗談ではなく、本当になんの馬だかわからなかった可能性もあります。
ライスシャワーの血が、ステイヤーとしての素質が、この日本ダービーの舞台で覚醒し始めた瞬間でした。
ミホノブルボンはライスシャワーの4馬身も前でゴールし無敗の二冠馬に輝きました。
一方ライスシャワーは後方から追い上げて来たマヤノペトリュースと激戦を繰り広げていました。
一度は差され3位に順位を下げましたが、そこから驚異的な粘りをみせ、最後にはマヤノペトリュースの方がバテたのかヨレる場面もあり、再び差し返して2着を死守したのです。
ライスシャワー陣営の人々にとって、この結果は大きな驚きとともに、最後の一冠に淡い期待を抱かせるには十分なものでした。