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ライスシャワー物語 『疾走の馬、青嶺の魂となり 天に駆けた孤高のステイヤー』  作者: 風花 香
最終章 6歳 生涯最高のかけがえのないゴール そして……

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悲劇

 正直、この宝塚記念はライスシャワーのレースの中で1番見た回数が少ないかもしれません。

 淡々と書き連ねるのも辛いものがありますが、私はライスシャワーの全てを読んでくださる皆さんには知ってほしいので、書かせていただきます。

 もちろん、私の知るライスシャワーが全てではありませんが、私の知り得るこの馬の最期に至るまで。

 



 3コーナーに差し掛かるまで走る気を見せていなかったライスシャワーでしたが、そこで急にペースを上げようとしました。


 この思い出の地を走る事で再び闘志に火が付いたかのように、前方への進出を始めようとしたのです。


 ですが、その矢先に悲劇は待っていました。


「あっ!」


 的場騎手はライスシャワーの脚元に異常を感じました。かなりひどい骨折だと直感したと、後に語っています。


「馬を止めなければ。なんとかバランスをとらなきゃ。ライスシャワーが倒れないように、なんとか、無事に、止めなければ……」


 しかし、つんのめるようにバランスを崩したライスシャワーは、一度上体を起こそうとしましたが立て直すことが出来ず、ターフ状を転げました。


 的場騎手もターフに激しく叩きつけられます。転げたライスシャワーは痛みにもがき苦しむようにのたうっていました。


 京都競馬場が凍り付きます。そのライスシャワーの痛ましい姿に競馬ファンの方々なら事の重大さに気がついたことでしょう。


 左前脚の粉砕骨折。この言葉の示す意味はレースの無情さ残酷さを物語ります。


 ライスシャワーは己の運命を悟ったかのように、大人しく動かなくなりました。


 診療所まで運ぶことすらできないライスシャワーは、誰よりも愛した淀のターフの上で幔幕に覆われました。


 その意味を理解したくない思いで、皆が見つめていたでしょう。



 苦楽を共にしてきた川島厩務員が、ライスシャワーの手綱を握り締め泣き崩れていました。

 馬場に叩きつけられながらも打撲で済んだ的場騎手は、ライスシャワーをターフ上から運ぶ馬運車を最敬礼を以て見送っていました。

 

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