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ライスシャワー物語 『疾走の馬、青嶺の魂となり 天に駆けた孤高のステイヤー』  作者: 風花 香
最終章 6歳 生涯最高のかけがえのないゴール そして……

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刻が止まる瞬間

 宝塚記念のスタートが切って落とされました。


 ライスシャワーはスタートの上手な馬で、出遅れるということはこれまでの全レースを見ても一度もないかもしれません。


 そんなライスシャワーの得意な走りは、好位(中団より前の先行グループ)に付け、勝負所から徐々にペースアップしての直線好位差し、もしくは直線入り口で先頭に立っての押し切りでした。


 ライスシャワーの勝ち鞍は6つありますが、その全てが上記のパターンです。(1995年天皇賞(春)は少し特殊ですが、得意パターンの派系と言っていいと思います)


 そんなライスシャワーの走りを知ってこのレースを見ると、スタート直後から、あれ? と思います。

 前から大きく離れた後方3,4番手辺りを追走していたのです。スタート直後からここまで行きっぷりの悪いライスシャワーは初めての事でした。


 的場騎手は困惑します。普段なら手綱を介さなくとも、心に思うだけで思っただけ走ってくれるライスシャワーが全然動いてくれません。


「どうしたんだ? この辺で頑張らないと追いつけなくなっちゃうぞ」


 そういう思いで気合を入れますが、やはりライスシャワーは沈黙したままです。


 レースの実況にも熱が入り、前の方から順に隊列を紹介していくアナウンサー。

 後方まで紹介が流れていき、再び前の方の争いに目を戻します。


 3コーナーから4コーナーに先頭グループが差し掛かった頃でした。

 京都競馬場に「わあーっ!!」という、大観衆の上げた声が木霊します。


 その声は熾烈な先頭争いに賑わった歓声でも、自分の推している馬の背中を押す応援でもありませんでした。


 大観衆の視線は後ろの方を向いており、そこで1頭の馬がもんどり打って倒れたのです。

 無念の絶叫が響き渡る中、実況席からも狼狽の叫びが上がります。


「あーっと、1頭落馬! 1頭落馬致しました! これは何が落馬したんだ!? ライスシャワーです! ライスシャワー落馬!」


 レースは続いています。

 しかしこの一瞬、間違いなく京都競馬場の刻は止まっていました。

 

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