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ライスシャワー物語 『疾走の馬、青嶺の魂となり 天に駆けた孤高のステイヤー』  作者: 風花 香
最終章 6歳 生涯最高のかけがえのないゴール そして……

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的場均の決断

「もう行こう! 前に出よう!」


 ライスシャワーがそう語りかけているかの様にペースを上げましたが、それに困惑したのが鞍上の的場均騎手です。


 それもそのはず。3200メートルを走らなければならない天皇賞(春)において、向正面の中間、残り1400メートルからの動き出しはいくら何でも早すぎます。


「まだ早い! もう少しこの位置をキープした方がいい!」


 的場騎手は一瞬そう考えました。

 しかし、2年以上も共に戦ってきた戦友が自らの意志で前に行きたいと言っているのです。

 苦難に喘いで苦しんだ相棒が自ら前に出たいと。

 

 それと同時に思いました。このまま無難に好位をキープしたとしても、スローペースで推移した後の直線よーいドンの瞬発力勝負では全盛期を過ぎたライスシャワーに勝ち目はない。

 ならば今この瞬間のライスシャワーの行く気に任せてレースを引っ張り、否応なしに過酷な長距離戦へ巻き込みゴールまでなだれ込む方に勝機はある。


 奇襲も奇襲。敗れれば只の愚策でしかありませんし、ジョッキーは責任を問われかねません。しかし、的場騎手は信じました。ライスシャワーのスタミナを、小さな馬体から溢れでる気力を。的場騎手にライスシャワーを抑える手綱はありませんでした。


「行こう! ライス!」


 3番手、2番手と外からじわじわと上がり、ペースを形成していた逃げ馬をも交わし、坂の手前で既に先頭に立ったライスシャワー。


 場内からどよめきの声が上がります。

 しかしその声はライスシャワーの復活を期待する声ではなく、その勇敢な走りを讃える声でもありません。


 なんて無謀な走りなんだ。そんな落胆とも取れる感情が場内を渦巻きました。


 2番手以下を追走するスタミナ自慢のステイヤーたちは受けて立つと言わんばかりにライスシャワーのペースアップに付いていきます。


 インターライナーが2番手に上がります。

 エアダブリンが内のいい所を追走します。

 ハギノリアルキングが前を捉えられる位置まで上がってきます。

 

 しかし1頭、中団でじっくり脚を溜める馬がいました。

 ライスシャワーの早すぎる仕掛けに乗らず、あくまで冷静に最後の直線で炸裂させる爆発的な末脚を温存していました。


 その馬とは、昨年の日経賞でピタリとライスシャワーをマークし、ゴール直前できっちりハナ差交して優勝したステージチャンプでした。

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