集いしステイヤーたち
勝つチャンスはどの馬にもある。
GⅠレースの勝利こそないものの、この天皇賞(春)だけは逃さない! と息巻く馬たちが出走表に名を連ねました。
それにしてもこの年の天皇賞(春)は時代遅れの、と言うと聞こえは悪いですが、ステイヤーという存在が淘汰されつつある時代の流れの中で、負けじと逆流するような存在。つまりは中距離では実績は残せない、長距離だけが得意なんだ! という本当のステイヤーたちばかりが出揃いました。
1番人気はナリタブライアンの同期で、日本ダービー2着、菊花賞3着、年が明けて3000メートルを超える重賞競走を連勝しているエアダブリン。
2番人気にGⅡレース日経新春杯を2着、日経賞を勝利と順調なステップを踏んできたインターライナー。
3番人気に目黒記念1着、阪神大賞典をナリタブライアンの2着と纏めてきたハギノリアルキング。
そして4番人気がライスシャワーです。
GⅠ2勝の実績は出走馬の中では断トツで輝かしいものでしたが、近走の不甲斐ない結果では、ここまでの支持が精一杯です。
その他にも昨年の日経賞でライスシャワーにハナ差勝利し、長距離レースで安定した実績を持つステージチャンプなど、圧倒的主役は不在でしたが当時の長距離戦線にその名あり、という馬たちが出揃いました。
そしてこの大一番に向けてライスシャワーを走る気にさせようと必死の努力をしてきた陣営。
すると普段優しげな眼差しをしているライスシャワーの目が徐々に釣り上がって行きました。
「この目は!」
と、的場騎手も驚きます。
その鋭さを増した眼光は2年前にメジロマックイーンを破った時に近いものでした。
「ライス、今日は負けられないんだな?」
ライスシャワーの不屈の闘志が燃え上がってきたのです。
時代を代表する強敵を倒し、世代のトップとして活躍するはずだったライスシャワー。
幾多の苦難を乗り越え、再び舞い戻ってきた春の淀。
この頃には悪役を通り越し、もはや憐れみに近い感情で見られるようになっていた屈辱。
「俺を倒しておいてこのまま只の悪役で終わるなよ」
そんなライスシャワーをかつての戦友ミホノブルボンもメジロマックイーンも応援していたと思います。
そして遂に運命のレースのスタートが切られます。




