菊花賞
迎えた菊花賞。
圧倒的1番人気は当然ミホノブルボン。かつて無敗で三冠を制した『皇帝』【シンボリルドルフ】に次ぐ史上2頭目の快挙を目撃しようと、集った観衆の支持を一身に背負っていました。
距離適正の不安があろうと、その偉大な記録を目前に控えたミホノブルボンへの期待はその不安を凌駕していたのでしょう。
一方のライスシャワーはといえば、日本ダービーから直近2レースで好走していることが評価され、打倒ミホノブルボンの最右翼となる2番人気。
しかし2番人気と言ってもミホノブルボンとの人気の差は歴然としており、立ち位置的にはミホノブルボンのライバルではなく、その他大勢の筆頭と言ったほうがしっくりくるものだったかもしれません。
そしてその時を迎え、菊花賞のファンファーレが高らかに京都競馬場に鳴り響き、各馬ゲートに収まり三冠レース最後の一冠。菊花賞のスタートは切られました。
好スタートを切ったのはミホノブルボン。例の如くポンと前に飛び出しそのまま先頭に立つかと思われましたがこの日は違いました。
外から気合いを入れられ押し出された【キョウエイボーガン】がハナを奪い、ミホノブルボンに3馬身ほどの差を付け逃げを打ったのです。
ミホノブルボン陣営や跨る騎手にしてみれば、キョウエイボーガンが出走を決めた時点でこの展開は予想できたことです。
ミホノブルボンの鞍上小島貞博騎手は素早く手綱を絞り2番手の位置をキープしようとしました。
ですが、ミホノブルボンは納得しません。
「なぜ俺の前を走っているやつがいる!?」とでも言わんばかりにキョウエイボーガンに突っかけようと口を割って追おうとするのです。
それを必死になだめようとする小島騎手との呼吸は明らかに乱れており、その姿をライスシャワーの鞍上的場均騎手は、冷静にも場内ターフビジョンで確認していました。
ぽつんぽつんぽつんと縦長な展開の中でライスシャワーは5番手に位置取り、静かな水面に波紋を広げることなく狙う、ハンターの如く鋭い4つの眼光は折り合いを欠く2冠馬を虎視眈々と見据えていたのです。




