星の涙の謎
ある夜の事だ。
月明かりに照らされた公園で、見たことがある人が泣いていた。
その人が流した涙は、流れた途端に星になっていき、キラキラと光り輝きながら足元に落ちていった。
足元に落ちた星は少しの間鈍く光ってから消えていく。
あれから一日たったけれど、あの幻想的な風景は現実だったのだろうか、それとも幻だったのだろうか。
その時の僕にはその涙がとても美しく、神聖なものに見えて仕方がなくて、そんな事を考える暇がなかったけれど。
今の僕にはそれが謎で謎で仕様がない。
だから僕は、彼女を泣かせることにしたのだ。
彼女が泣いているのをもう一度見て、彼女の涙が星に見えたなら、あの時見た風景は本当で、逆ならば幻。
そうはっきり分かるだろうから。
そうと決めた僕は、最初に彼女に挨拶をすることから始めることにした。
そう。 彼女と僕は同じクラスだったというだけで、大したかかわりはなかったのだ。
彼女を泣かして、彼女が泣く姿を間近で見る為には少なくとも顔見知りでなければと僕は思ったのである。
かといって、クラスの中で突然挨拶を始めれば、彼女だけでなく、クラスの皆に怪しまれてしまう。
そう考えた僕は、朝早くに彼女の下駄箱に手紙を入れ、放課後の屋上に呼ぶことに決め、布団に入った。
次の日、僕は計画通りに朝早く学校に行き彼女の下駄箱に手紙を入れた。
その後は授業を受け、昼休みに友人とどうでもいいような話をしていつもの様に過ごし、放課後を待つ。
放課後になった後、僕は友人の遊びに行こうといった誘いを断り屋上に真っ直ぐに向かった。
まだ彼女は来ていないようだったので、僕はどう挨拶するか考えながら、彼女を待つことにする。
そうして、僕はあることに気が付いた。
あれ? これって告白だと思われるのでは? と。
ボッと、火が付くように一気に顔が熱くなり、思考がまとまらなくなる。
なんてことをしたのだろうか。そもそもあまり知らない奴からの呼び出しなんかに答えてくれるのだろうか。
頭の中には考えていた挨拶の言葉など一つも残っていなかった。
そんな時。
ギィ……という音を立てながら、彼女は入って来た。
彼女は僕の赤くなった顔を見て、少しびっくりしたような顔をした後に、困ったように笑った。
「こんにちは。あまり貴方と話したことないと思うのだけど、何の御用かしら?」
あまりにも僕の頭は真っ白過ぎて、一瞬彼女が何を言っているのか分からなかった。
その所為で変な間が空いたからだろう。彼女が怪訝な顔でこちらを見ていたので、僕は焦って口を開いた。
「あ、あの! ぼ、僕と、友達になって下さい!」
その言葉に、彼女は一瞬きょとんとした顔をした後、口に手を当てて小さな声で笑った。
「ふ、ふふふ……。その為に私を呼びだしたの?」
「そ、そうです。いや、厳密に言えば違うんだけど……。あ、いやでも。同じと言えば同じだから……」
もう僕は、混乱しっぱなしでとても怪しい言動をしていたと思う。
しどろもどろで、何も言っているか分からなくなってもいたから。
それでも彼女は、笑って僕に手を差し出した。
「いいわ。友達になりましょう。趣味や好きな事、嫌いな事。色んなことを話しましょう」
僕はその手を取って、握手をしながら思った。
彼女の笑顔が、あまりにも綺麗で、可愛くて、幸せそうな顔だったから。
彼女を泣かせようとするのは止めよう。
謎は謎のままがいい、と。




