表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/53

この方……桜子とありますし、女性ですよね?

 なにかこう……納得いかないものがあるが、本当にこいつらのためになるのなら、多少の出費は我慢するべきか?


 などと自己葛藤していたら、いきなりイヴが大声を出した。


「お兄様のTwitterに、フォロワーが増えていますわっ。しかも、鍵付き!」

「えぇえええええっ」


 あっという間にマリアが、俺の両足の上で俯せになるようにして、イヴのスマホを覗き込む。


「本当だっ。にーちゃん、フォロワーが増えてるじゃん! しかも相互だしっ。これ、どういうことっ!?」


 ……なぜ半分喧嘩腰なんだ、こいつは。


 あと、フォロワーが一人増えただけで、ここまで大問題だと思われる俺って。そんなに、ボッチ指数高いように思われてんのか?





「いや、たまたま図書館で仲良くなった子だよ。読書の傾向が合っててな」

「そんなことはどうでもいいです」


 イヴが低い声でとんでもないことを言う。


「この方……桜子とありますし、女性ですよね?」

「ま、まあな。特に選んだわけじゃないけど」


 ああ、声が言い訳がましくなった。

 俺自身がそう思うくらいだから、もちろんマリアもイヴもすげー険悪な表情になったりして。


「にーちゃん、あたしらを捨てる気なのぉおおお、裏切りものぉおお!」


 もう早速、金切り声上げたマリアが俺に飛びかかり、組み伏せて足技を掛けてきやがった。

しかも、どこで練習したのか、モロに決まって痛いっ。


「いたたっ。四の字固めとか、いつの時代だよっ。放せ、足が折れるっ」

「本当は浮気じゃないんですかっ。図書館とか言ってぇ!」


 イヴまで俺にのしかかり、首を絞めてくるしっ。

 昔の子供時代に戻ったような案配だが、今と昔じゃ筋力が違うので、本気でヤバい。


「ば、ばなぜぇえええ」


 昼間から、なにやってんだかな、俺!

 まあ、他人から見りゃ、女の子二人にのしかかられて、羨ましいかもしれんが、俺は本気で死の恐怖を感じたぞっ。





 ようやく放してもらえてからも、二人の目つきは剣呑なままだった。


「だいたいさ、事情はどうあれ、鍵付きってのがいやっ」


 元の位置に戻ってポテトチップをやけ食いしているマリアが、すげー不満そうに言う。


「何をやりとりしてるか、あたし達が見られないじゃん!」

「そうですそうですっ。密かに睦言むつごとのような会話してても、わからないのは業腹ですわっ」

「む、むつごとっておまえ……意味わかってんだろうな」


 いや、もちろんわかった上での発言だろうが。


「相手は高二だとか言ってたぞ。そんな若い子が、俺みたいなオジサン間際の奴を、本気で相手にするかって」

「あたし達なんて、中学生だけど!」


 マリアが即、反論してくれた。


「それにこの子、フォロワー数少ないから、遊びじゃフォローしないと思うっ。ねえっ」


 いきなりイヴに振ったが、イヴは顔をしかめて何事か考えていた。


「……どしたん?」


 マリアの問いかけに、首を振って答えた。


「桜子というお名前、どこかで聞いた気がするのですけど……どうも思い出せません」

「そうなの? にーちゃん、この子ってなにしてる子?」

「いや、知らんよ!」


 俺は慌てて手を振った。


「初対面で、そこまで訊くか。女子高生としか聞いてないわい」

「本当かなあ」

「本当だって!」


 俺は強く否定し、それから大声で話を戻した。


「それより、本当に宝くじ買うのか、俺っ」

「もちろん! あ、そういえば夢の中で見た時間帯って何時頃? 買うのも、時刻合わせた方がいいよっ」


 なかなか鋭い突っ込みを入れるマリアである。

 なるほど……そりゃ、夢の中で見た光景と一致しないと駄目だわな。


 考えつつ、話が逸れたことにほっとしていたんだが……あいにく、イヴだけは、その後もしきりに首を傾げていた。


 桜子なんて名前、割と多いと思うのに。

 ……まあ、後でTwitterのメッセージで、密かに本人に訊くかね。


 この時の俺は、呑気にそう考えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ