~第二の錦織圭たちに贈る言葉(7)~ 『考え方が変われば結果が変わる』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(7)〜
『考え方が変われば結果が変わる』
1. まえがき;
女子卓球の平野美宇選手が2017年4月に中国で行われた2017年アジア選手権大会で世界ランキング1位、2位、5位の中国選手を破り優勝者になった。
2016年のリオ・オリンピックの代表選手の補欠としてリオへ行き、玉拾いや代表選手の試合を応援するだけで悔しい思いをし、『守りの卓球では中国選手に勝てない。攻撃型の卓球を目指す。』と決意をし、2016年11月に中国スパーリーグに1カ月間参戦し、中国選手のボールの速さを体感して帰国した。そして2017年1月の全日本選手権で世界ランキング4位の石川選手に勝ち、優勝している。
卓球スタイルを『守備型』から『攻撃型』に変える決断をすることにより練習方法が変わり、その結果も変わった訳である。
その得たものは『心・体・技』の向上による大会優勝であった。
2. 贈る言葉;
2017年の1月、本年度のテニスツアー大会の全豪オープンが始まる前、錦織選手はメディアのインタビューに対して『何も変えるものはない。』と語っていた。
昨年は『サーブなどの改善が必要。』と語っていたのから思うと、考え方が変わったと云える。
プレーヤーにとって『何も変えるものはない。』とは、改善すべき技術は無いが、『技術の精度を高める練習はする。』と云う意味ではあるが・・・・。
さて、このような考え方で2017年のテニスツアー大会に参戦した錦織選手であるが、5月現在、某大会でベストエイトになったが最高の成績である。
『何も変えるものはない。』と云う考え方が正しい選択であったのだろうか・・・。
剣豪・宮本武蔵の著した『五輪書』の「水の巻」によると、
「いつくは しぬる手也。いつかざるは いきる手也。」と書かれている。
「いつく」とは、「何も変えないでいる」ことである。
「流れる水は腐らない。」と表現する人もいる。
『孫氏の兵法』の「兵勢第五」には、
勝利する要因は『勢』と『節』にあると述べられている。
「激水の疾くして 石を漂わすに至る者は『勢』なり。」
(激流が岩を押し流すことができるのは水に勢いがあるからである。)
「鷙鳥の撃ちて 毀折するに至る者は『節』なり。」
(鷲や鷹などの肉食猛鳥は襲う獲物の首の骨を砕き、翼を折って打ち倒すことができるのは襲うタイミングが絶妙だからである。)
「よく戦う者は その『勢』は険にして その『節』は短なり。」
実力が対戦相手より上だから勝てるのではないのである。
すなわち、試合中に自分の動きに『勢い』を呼び込み、打ちこむべき短いタイミング(拍子)である『節』を逃さず捉えた者が勝利するのである。
テニスの試合における『勢』とは試合中に『心→体→技→心』の上昇スパイラルに入ることであり、『節』とは『相手が返球に窮する球を相手コートに打ち込むべきタイミング』のことである。
『勢』を自分で造り出す能力を養い、『節』を感じ取る能力を養う練習をしなければならないと云うことです。
では、どのような練習をすれば良いのかである。
それぞれの実力に応じて技術を向上させる鍛錬を意識して行うことを継続することである。
技術を向上させようとする意志が働く練習によって心を強化されると同時に技術、体力も向上していく。
すなわち、『心→体→技→心』の上昇スパイラルが養われ、『勢』パターンが体得されていくのである。
「流れる水(鍛錬すること)は腐らず、水(心・体・技)をダム(体内)に貯え、ダムから一気に放水する勢いで相手を破壊するのである。」
女子卓球の平野美宇選手は国際卓球連盟から『ハリケーン・平野』の異名で呼ばれています。「疾風の如く駆け抜け、相手を撃破する」と云う意味であろうか・・・。
第二の錦織圭たちは「疾風の勢いを放出する能力を養う練習」を心がけて、東京オリンピックでの硬式テニス『金メダル』を目指してください。
その為には常に『心』『体力』『技術』の改善・向上をめざす練習をくりかえすことが『勢』と『節』を得る能力を身に着けることに繋がるのです。
常に、『正しい考え方』を持って練習する習慣をつけることです。
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2017年5月5日
参考文献:
宮本武蔵五輪書 神子侃訳 徳間書店 1963年8月 発行
宮本武蔵五輪書入門 桑田忠親著 日本文芸社 昭和55年4月 発行
孫氏の兵法 安藤亮著 日本文芸社 昭和55年8月 発行
孫氏の兵法入門 高畠穣著 日本文芸社 昭和55年4月 発行