王子様〜初音side〜2
王子様〜初音side〜2
「初音!」
神にもすがるような思いが通じたのか、聞き覚えのある声がわたしの名前を呼んだ。
「響!」
何でここに……?
わたしの前に突然現れた響。
助けてくれる……の……?
「何だよ、お前……」
「こいつの連れだけど?」
響が冷ややかな目で一人の男を見る。
「あ? これから遊ぶ約束してるんだよねー帰ってくんない?」
「悪いね……オレ、先約だから……」
そう言って、響が急にわたしを引き寄せた。
えっ……?
「てめぇ……」
「もうすぐ警察来るけど?」
「覚えとけよ!」
二人の男はわたしを放すと、車に乗って逃げ去る。
響がわたしを引き離し、怒ったような表情でわたしを見る。
「お前なぁ……」
「ありがとう……」
掠れるような小さな声が出た自分自身に驚きつつも、本当に響がいてくれて……助けてくれてよかった。
本当、ありがとう……。
男の人の力には到底かなわないんだというのを思い知らされた。
もし、ここで響が来てくれなかったら……。
そう思うといたたまれない気持ちになる。
「……怖かった……」
後になって恐怖心がわたしを襲う。
昔から知ってる響がここにいてくれて……。
恐怖心と少しの安堵感が織り交ざって、わたしは響に寄り添った。
きっと……安心したかったんだと思う。
今の響なら、わたしを突き放さないでいてくれるよね?
そんなわたしの願いを込めて……。
そうしたら、響の大きな腕がわたしの肩を抱き寄せた――。
その瞬間に、ドクンとわたしの胸が大きく鳴った。
な、何?
一気に心拍数が上がる。
ちょっと……嫌な予感がするんだけど……。
異常なまでの心臓の動きにわたしはついていけずにいた。
っていうか、わたし、響の事、嫌いだよね?
今回は助けてもらったけど……嫌いだったよね?
嫌いだった……そう過去形にしている自分にはっと気づく。
わたし……どういうこと……?
自分自身の状況を飲み込めずにわたしは響の腕の中にいる。
響の規則正しい鼓動だけがダイレクトに伝わってきた――。