はじまり〜響side〜1
――きっといいことあるって、一番前でも。
オレは虹羽のその声を聞き逃さなかった。
2学期初めの席替え。
今ままでの席が、一番後ろだったこともあり、これほどっていいほど心地よかった。
新学期に担任が席替えは学期ごとにするというから、この長い2学期を乗り越える為には、真ん中より後ろじゃないとオレは落ち着かないのも自分で分かっていた。
でも、くじで引いた席は大ハズレの一番前。
一瞬、目の前が真っ暗になる。
最悪にも程がある。
そして、飛び込んできた虹羽の声。
虹羽の言葉は親友の初音に向けたものだった。
あいつも一番前なのか? 冗談じゃねぇ!
隣になる確率、高すぎる!
勉強もしたくないのに一番前の席で、大ッ嫌いな初音の隣……そう考えただけで悪寒が走る。
それだけは避けたい!
どうしてもムリだ。オレ、登校拒否になるって!
誰かかわってくれそうなやつ……。
悪友の神楽に声を掛けようとしたら、大声で叫んでいた。
「はぁ? 何で前から2番目なんだよ!」
……ありえねぇ。
神楽と代えたところで何も変わらねーな……。
どうするよ?
目を皿のようにして教室中を見回す……発見!
クラス一頭のいい雅紀のところにオレは駆けつけた。
「なぁ、席、どこ?」
「えっ? 後ろから2番目……微妙なところ……」
「オレ、一番前なんだけど、代わらねー?」
後ろから2番目なんて、いい席じゃん。
微妙って言う雅紀の考えが理解できない。
まぁ、代わってもらえるのならオレ的には問題ないんだけど……。
「でも、交換はしたらダメって……」
「んなの、しちまえば分かんねーって! な、頼む!」
雅紀の目の前で手を合わせる。
にしても、何でこいつはこんなに真面目なんだ?
先生の言った事を、全て鵜呑みにする必要なんかねーのに……。