はじまり〜初音side〜2
「……お前、そこなの?」
ものすごく機嫌が悪そうに響がわたしを見た。
「……そうだけど……あんたこそ、そこ?」
思っている返事が返ってこないことを願いながら聞いたんだけど……。
「おお」
響はわたしの予想通りの返事をし、予想通りの態度をとる。
だから、あからさまなんだって!
まぁ、わたしも負けちゃいないけどさ……。
ああっ……やっぱり、神はわたしのを見捨ててるのね……。
わたし、大きくため息をひとつつくと、窓の外を見た。
何だって、こいつが隣なわけ?
こいつが隣なら、一番前の席のほうがマシだったかも……。
だって、黒板を……前を見る度に視界に入るわけでしょ?
うわっ。そんなの、考えるだけで寒気がする。
ありえない。
響とわたしはいわゆる幼なじみってやつで、昔は仲が良かったんだ。
小学校までは登下校も一緒で、遊んだり勉強も一緒にしてたんだ。
それまでは普通に仲が良かったんだ。
中学に入ってからだった。わたしと響が一切、口を利かなくなったのは……。
まぁ、よくあるパターンなのかもしれないけど……。
誰かがうわさを立てたんだ。
――初音は響の事が好きなんだって……。
正直、響のことは好きだったけど、恋愛感情はなかった。
だから、すごく迷惑なうわさで……わたしは思いっきり否定をしたんだけど、その否定の仕方が、最終的には響を傷つけ、自分にも跳ね返ってきた。
結局のところ、自分でボロクソ響のこと、言ったくせに、倍にもなってわたしの事を言われたから、それに腹を立てたわたし。
筋違いだとは思うけど、自分の中の変なプライドを捨てきれず、謝る事も出来なかった。
それは、わたしも反省すべき点。
分かってるんだけど、きっかけを逃してしまった以上、どうする事も出来ずに怒りだけが残ってしまった。
もちろん、それ以来、響は怒ったままで、わたしを見ると、露骨に嫌な顔をする。
また、それが気持ちいい位露骨にされるもんだから、視界に入るだけでもムカムカしてくる。
ま、それは響も同じなんだろうけどね……。
にしても、一番長い2学期にこの席はキツイなぁ……。
これからわたしはどうしていったらいいんだろう……。
冬まで持つのだろうか……?
そんな事が頭を霞めても、新学期が始まってしまった今日、初音と響にとって、新しい1ページが始まった。