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殺しの美学  作者: てぃけ
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オフ会のはじまり

オフ会当日、私はようやく件の洋館へとたどり着いた。腕時計を見るとぎりぎり間に合ったようだ。洋館は森のなかに建っていて、途中橋を渡らなければいけなかった。館までは車などが普通に通れそうな道はあるのだがコンクリートで舗装されているようなものではない。空の青、森の緑、夏色の景色を進みながら、これから洋館で行われるオフ会のことをおもうと胸が踊った。洋館の前へ立ちいざその扉を開けようとするとなんだかドキドキしてきた。意を決して扉を開ける。

「すみませーん! こんにちはー!」

声に反応して向こうから誰かが来るのを感じた。

「あっ、こんにちはー!」

女子高校生だろうか? ショートカットの女の子が現れ、近づいてくる。快活そうなこである。

「はじめまして! 私は離辺空華りべ くうかです」

わたしが自己紹介すると、

「はじめまして。あたしは芽留戸冴めると さえです」

相手の女の子も自己紹介をした。

「もう何人か集まってますよー! 他にも女の子います」

冴さんはそういうとにっこり笑った。参加者は事前にプロフィールなどは明かしていなかったので、下手をすると若い女の子一人をむさいおっさん共が囲む、女の子にとっては「知ってたら来なかったよ」という残念な会になる可能性があったのだ。二人で向こうへと歩き進める。

「あぁー、良かったです。冴さんは高校生ですか?」

言ってからちょっとしまったかなと思った。ネット上では匿名で書き込みしていたし、自分たちのいたスレッドの内容からして、あまり自分の情報は言いたくないかもしれない。

「そうですよ。空華さんもですか?」

良かった。冴さんはあまり気にしていないようだった。

「えぇーっと、そうです。高校生みたいなもんです」

私が答えると冴さんは一瞬変な顔をしたが、すぐに続けた。

「ここですよ」

他の人達が集まっている部屋へと着いたらしい。冴さんは扉を示して開けた。

「案内してきましたー」

扉を開けた冴さんが部屋の中へ向けて言う。中には女性2人と男性3人がいる。

「こんにちはー」

扉を抜けて挨拶すると、部屋の中に集まっていた人達もそれぞれ挨拶に応えた。見た目にはあんなスレッドにいるような人たちには思えない。部屋の中にはソファーや椅子があり、各々が思い思いの場所に座っていた。なんとなく同性同士が固まっているように見える。

「どうも」

私も冴さんと一緒にソファーへ座る女性2人の方へ近づいていって声をかけた。

「どうも」

2人も同じように返した。片方は冴さんよりもいくらか年下の子で、髪を2つに結っている。もう片方は20代後半の女性に見え、肩くらいまで髪を伸ばしている。OLだろうか。私は近くの椅子に座った。

「暑くなりましたねぇ」

ツインテールの小さい女の子が言った。

「確かにね。でも建物の中は割と涼しいようで助かったわ。」

OLっぽい女の人が応える。

「暑い中、汗だらだら流しつつ話すのも大変ですからね」

冴さんが言った。

「そういえばお二人は何とお呼びしたらいいんですか? あっ、私は離辺空華って言います」

冴さん以外の二人に言う。

「後でまたみんなで自己紹介すると思うけど私は別家名護べちや なご

「わ、わたしは瑠珠風子るじゅ ふうこです」

OLっぽい人は別家さんで、小さい方のこは風子ちゃんというらしい。

「別家さんに風子ちゃんですね。私こういうオフ会っていうの初めてで、思ったより人が集まったようで安心しました」

わたしがそう言うと冴さんが反応した。

「あたしも全然集まらないんじゃないかと不安だったんで、安心しました。オフ会って大規模なものだと100人とか超えるらしいですけどね。」

「へぇぇぇ。でもここちょっと変なとこにありますし、私達怪しいスレッドの集まりですから、これだけ集まれば十分ですよね!」

風子ちゃんは大規模オフ会の人数に感心した後、フォローする。なんとなく微笑ましい。その時男性陣側から声が響いた。

「もう時間回ってますし始めますかー!」

声を発したのは30代程の男性だ。誠実で堅実そうにみえる。

「そうですね」

別家さんが賛成すると、みんな中央に気持ちを寄せ、距離が離れていたものはその距離を詰める。

「まずは自己紹介からですかね」

先ほどの男性がそう言うと、みんな納得したような顔をしたので、男性は続けた。

「私は須藤玲兵之すとう れべゆきと言います。土日は終日忙しいことも多いのですが、この時季はそんなことないですし、少し前職場で色々とありまして、暇が取れたので参加いたしました。みなさん今日はよろしくお願いします」

須藤さんが言い終わると、中年の男性が続く。

「俺は羅実素心らじつ すころ。農業をやってる。今日は息子に仕事を押し付けてきた」

羅実さんはハハハと笑った。

「僕は久留呉帝瀬くるご ていせです。作家をやってます。今日は面白い話が聞けそうで楽しみです」

作家さんは20代後半から30代前半くらいに見える。これで男性陣は全てである。女性陣は最初別家さんが自己紹介をするようだ。

「私は別家名護です。普通の会社員です。風邪気味なので今日はちょっと早めに帰らせてもらってゆっくり休もうと思っています。最後までいられないかもしれませんがそれまでよろしくお願いします」

次は冴さんだ。

「芽留戸冴です。高校生です。趣味は運動です。以上です。」

冴さんは簡潔にそう言った。

「瑠珠風子です。ちゅ、中学生です。年上の方ばかりで緊張してます。何か変なことを言っちゃったらすみません」

風子ちゃんはツインテールを揺らしながら言った。次は私の番だ。

「私は離辺空華です。高校生です。今日はみなさんの話を聞いて勉強して自分の考えを深めたいと思います」

これで全員の自己紹介が終わった。これから始まるというところで別家さんが何かに気付いたようにスマートフォンを取り出す。

「そうだ。私掲示板にもう始まるって書き込んでおきます。」

そこで、スマートフォンを取り出した別家さんに風子ちゃんが言う。

「あっ、別家さんここ電波が悪いようで電話とかネットとか使えないみたいですよ」



そうしてオフ会が始まった。

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