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鈴木な太郎君は薔薇の都で戦乙女と輪舞曲を踊れるか?  作者: へたれのゆめ
月曜日 目覚ましの音は閻魔の高笑い
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一時限目 授業です、起きましょう


 注意一 基本的にタイトルはテキトーです。話との関連性はない……かも?


 

 「ん」


 目を覚ましたら、そこは見覚えのある部屋だった。


 コンクリ打ちっぱなしの壁、妙に凝った作りの燭台、赤々と燃える暖炉、その前で本を読むメイドさん……

 

 「……ん、ふあっ」


 「お早う御座います、御主人様」


 欠伸をしながら目を擦っていると、すぐ脇から声が聞こえた。


 驚いて目を向けてみると、さっきまでは暖炉の前に座っていたアルシリアさんがベットのすぐ脇に移動していた。その姿は、何時間もそこに控えていたかのような風格を携えていた。


 ……まあ、つっこまない方が良いんだろうな。


 「お早う、アルシリアさん。また会えて嬉しいよ」


 少し微妙な顔をされたが、直に「私も嬉しく思います」と返してくれた。


 「せっかくまた来られたんだけど、またすぐに起きなくちゃいけないんだ。悪いけど訓練とかはまた今度ってことで」


 不思議なことに、昨日の夜見た夢は全くと言って良いほど明確に覚えていた。それは、いま思い返しても聞いた設定を更で言える位だ。


 「その心配は有りません」


 「?」

 

 また寝なおそうと毛布モドキを被ろうとした所で、そう呼び止められる。


 「……夢と言うものは、現実とは違った時間軸で進む事が多いのです。ですので、こちらでしばらく活動していても、あちらの時間とは比例しません」


 ……まあ、一理あるかな?大体の夢は短かったり長く感じたりするし……


 「それに、時間になればお隣の女性が起こしていただけるのでしょう?」


 確かに、それもある。彼女は真面目だし、きっと一生懸命に起こしてくれることだろう。


 「それに、小迷宮に挑む前に、当面の拠点であるこの部屋ですることもいくらかは有りますので、それだけでも済ませたら良いかと思います」


 んー、そうだね。今回で二回目だったし、もしかしたらこれからも定期的に来られるかもしれないし……ちょっと説明を聞いてワクワクしたってのも否めない。まあ、面白いゲームのテスターか何かになったと思えば……ね?


 「そう、だね。戻って校長の長い話を聞くのもあれだし、準備位はして行ってもいいかもね。アルシリアさん、手伝ってもらって良い?」


 「畏まりました」


 こうして、僕の迷宮探索が始まる?






 「で、まず何をすればいいの?」


 ゲームとかだと、まずはキャラメイクとかステ振りとかだが。


 「はい、ではまずこちらにおいで下さい」


 アルシリアさんに言われるままに、あの燭台の所まで付いて行く。この部屋で、まず一番値が張るだろう物だが、今は蝋燭がくべられていない。


 「では御主人様、まずは…」


 「ちょっと待って」


 「……」


 説明を止めたからか、アルシリアさんは少々不満顔だ。しかし、これだけは先に片づけておきたい。


 「その、ゴシュジンサマって何とかならない? その……ちょっとくすぐったくて」


 考えてみて欲しい、今まで普通に高校生活送ってきて、ゴシュジンサマなんて呼ばれる事なんてまっったくなかった訳で、それをいきなりこんな超絶美人メイドさんに言われるとか……ちょっと、ねぇ?


 「しかし、貴方様は私のマスターですし、あまり不適切な呼び方は好ましくありません」


 「不適切って……そんなでも無いでしょうに。鈴木さんとか、太郎さんとか……って、そう言えばまだ僕から自己紹介してなかったね。ごめんなさい、鈴木太郎と言います。呼び方は好きなように読んでください」


 「では、御主人様と」


 「いやいや」


 その後もこういった問答が続いたが、まったく受け入れてくれる気配さえしない。これから定期的にここに来るのだとしたら、どうにも僕の精神衛生的によろしくない。


 どうする、ここだけは譲りたくないが……ん? そう言えば。

 

 「じゃあマスター、マスターとか言ったよね? この際それでも良いから、どうかゴシュジンサマだけは許してください」


 「……そこまで仰られるのでしたら…では、これからも宜しくお願いいたします、マスター」


 「うん、よろしくアルシリアさん」


 握手を求めて手を出すと、何か戸惑う素振りが目につく、何か間違っただろうか?握手はコミュニケーションの基本……とか聞いた気がするんだけど…


 「あ、あの、マスター、その代わりと言っては、失礼なのですが……」


 「ん? なに?」


 少し目を泳がして、何か葛藤しているように見える。


 「その、どうかさん付で呼ばないでください。呼び辛ければアルと呼んで頂ければ十分ですので」


 んー? 何だか言葉のニュアンス的にアルって呼んでもらいたいけど誤魔化してる感があるな。


 「解った、じゃあ改めてよろしく、アル」


 「はい、よろしくお願いします、マスター」


 やっと握手に応じてくれたアルは、心なしか嬉しそうに見えた。



 

 「さて、それじゃあ改めて頼むよ、アル」


 「畏まりました。ではマスター、早速ですがこちらの燭台に手を掲げて頂けますか?」


 「こう?」


 言われた通りに燭台に手を掲げる、床から160㎝位の位置にあるのだろうか、丁度僕の目線に蝋燭を置く皿が来ていた。


 ……もし本当に学校の生徒が皆来てるとして、きっとその中にはヒヨコも来ているのだろう。だとすると、手を掲げられなくて涙を浮かべているかもしれない。


 ……まあ、無いだろうけどね。


 「マスター?」


 おっといけない。


 「ごめん、ちょっと思い出し笑い。で? 次は何をするの?」


 「はい、では私の言ったことを復唱してください」


 「了解」


 「我が力を示せ」


 おお、アルがそれっぽい呪文を呟きだした。


 ……って、これって結構恥ずかしくない?


 「マスター?」


 「い、いやなんでもない。えーと、我が力を示せ?」


 変化は直に表れた。


 「うお、」


 燭台の皿から黒い煙が噴出して来たのである。


 黒い煙は、手を放した僕と燭台の間に板状に集まりだして、最終的には2m四方の板として、床から10㎝ほどの所から垂直に浮かんでいた。


 「こちらがこの世界における、人のステータス「能力」を数値として見る魔法になります。本当はもっと小型の魔導具で、迷宮の中でも見られる物なのですが……今回は最初期の能力設定なので大型のスクリーンに映させていただきます」


 なるほど、キャラは出来てるからステ振りからか。最初なのでサポートキャラのアルと一緒に見られるように、と。本当にゲームみたいだな、しかし……


 「……真っ黒なんだけど?」


 黒い煙の板は、黒一色だった。


 「もう一度手を掲げて頂ければステータス一覧に移行できます」


 なるほど、もしかしたらとっさに手を放したのが悪かったなかもしれない。


 大丈夫と解っていても近寄りがたい雰囲気を放つ、黒い塊に手を伸ばしてみると……


 




  鈴木 太郎



 Lv0


 HP 0


 MP 0



 身体 0(1)


 気力 0(1)


 生命 0(1)


 精神 0(1)


 魔力 0(1)


 拒絶 0(1)


 運  0(1)



 称号 なし


 クラス なし


 加護 なし


 スキル なし






 「はい?」


 お、オール、0だと?


 浮かび上がる文字と数字に愕然とする。


 い、いやしかし。Lvだって0だし、これチュートリアルだし、なんかカッコに1とかついてるし……きっとこれからステ振り用のポイントだかLvだか貰える! ……はず。


 「あ、あのー、アル…サン?」


 「? いかが致しましたか?」


 怪訝そうに返された言葉に少なからず安堵する。どうやらこれがデフォらしい、


 「ああ、どうやらマスターには凡そ才能と呼ばれるものは無いようですね」


 とか思った僕は愚かだったようだ。


 「しかし気にする事は有りません。確かに召喚される戦士たちには、初期成長値が予め高い者たちも多少おりますが……マスター?」


 「……いや、解ってたよ? 自分がフツーの人間だって事ぐらいサ。でも、夢の中でくらい少しは良い目を見たって、罰は当たらないんじゃないかとか夢想するわけですよ、ええ」


 視界が、ドナドナ色に染まるのが見えた気がした。




 とまあ、取りあえず気が済むまで部屋の隅で拗ねていた訳だが、そろそろ後ろからの暖かい目線に耐えられなくなって来たので、説明を再開してもらうことにした。


 「すまなかった、ちょっと期待してた分が……ね」


 「いえ、私にも経験のあることですので、お気にならないでください」


 「え?」


 「では説明をさせて頂きます」


 アルが説明を再開する。話を逸らしたようだし、聞かない方が良いのだろう。


 「まず、レベルについてお話します。レベルとは、言うなれば魂の格と言いましょうか、神の加護によって魂を成長させることを言います」


 おお、神の加護と来たか。この場合はさっき言ってたこの世界の主神とかなんだろうな。


 「成長にはいくつかの方法が有りまして、大きく分けて二つございます。まず、魂の材料である生体魔力……俗に経験値とも言いますが、それを吸収すること。そして、蓄えた生体魔力を圧縮・研磨することです」


 「吸収は何となく解るけど、圧縮と研磨って?」


 生体魔力は経験値(まんまRPG……)……溜めれば強くなる。しかしそれをさらに加工するってのか? 今一解らん。


 「はい、圧縮は文字どおり魂を圧縮することです。」


 アルは少し考える素振りを見せてから、再び説明を開始する。


 「生物の体とは、魂を入れる器のようなものです。それは体の大きさに関係せず、種族によって大体の容量が決まっています。そして、その容量に一定の生体魔力が注がれる事によって、魂はその生体魔力を材料に成長していきます。まずはこれが吸収の概念だと思ってください」


 大体考えていた通りの経験値の溜まり方だ。頷きで理解を示す。


 「そして、魂の成長にも種族ごとに上限が有ります。確かガイアの人間族の場合は、レベルにして平均30程が成長限界だったと記憶しています」


 「え、意外と少ないんだね?」


 RPGとかだったら、大体が上限50とか100だと思うんだけど……


 「とんでもないです、そんな事を言っては平均3の人間族の戦士に襲われてしまいますよ?」


 「はい?」


 さん、だと?


 「本気?」


 「ええ。元来、人間族は他の人族に比べてとても非力で、レベル上限も総じて低いのです。大体平均として10に届くか、と言った所ですか……行っても15辺りが最高と聞いています」


 す、すごいじゃないか、ガイア人。一般的な上限の倍とか、どこのチートさんですか?


 「すごいんだね?」


 「ええ、人間族としては例外的です。少し話が反れましたね、種族ごとの魂の成長限界ですが、実はこの世界ではさして問題ではありません」


 はい?


 「魂は成長すると少しずつ大きくなっていきます。しかし先ほども言った通り、魂は体と言う器に入る分しか大きくなれません。ですので、その上限が成長限界といえます」


 「じゃあ問題じゃないか、それなら成長限界? って言う上限が高い方がいいに決まってる」


 3と30だったら馬鹿に出来ない差だと思うんだが……十倍ですよ?


 「はい、そこで圧縮の出番です。圧縮は大きくなった魂を初期の魂の大きさにまで圧し固めます。この時、魂に溜まった力も一緒に圧し固まりますので、引き続けてレベルを上げる事が出来ます」


 ……なるほど、それなら確かに問題は無いんだろうな。圧縮ってのがどうやってするのかは解らないが、その方法なら最終的な上限は変わらないだろうし。


 「ふーん、それじゃあ確かに僕に旨味はあまりないな。因みにその圧縮はどうやってするの?」


 「はい、基本的には神殿で神に祈りを捧げて加護を受けます。受ける者によって掛かる時間は違いますが、大体半日から一週間と言った所です」


 「圧縮する量によっての時間の差は?」


 「特に無いかと思われます」


 なるほど、圧縮するための時間的な効率が良いってアドバンテージがあるわけだ。あまり魅力を感じられないのが残念だけど、ここまで来たら欲張りになるのもいかがな物かとも思うし、取りあえず納得しておこう。


 「じゃあ、研磨は?」


 「はい、研磨とは文字通り魂を研ぎ澄まし、磨き上げる事を言います」


 まあ、まんまだね。


 「吸収・圧縮は、やり様によってはあまり戦闘や鍛錬を行わなくとも出来なくは無いのですが、研磨はそうも行きません。これは、後に説明するスキルの熟練度にも関係して来るので、簡単に説明させていただきますが。研磨とは、魂に練りこんだスキルを磨くことによって、魂自体の形を整え、より洗練した力を引き出す作業です」


 「えーと……つまりは力を溜めこむだけじゃなくて、使いやすくしろってこと?」


 「御明察です」


 うん、よく解らない。でもまあ、必要になったらまた聞けばいいか。


 「レベルについては、今はこの位で良いでしょう。続いて能力値の説明に入ってよろしいでしょうか?」


 「あー、まった。なんかまだ長くなりそうだし、座らない? ソファー引っ張ってきてさ」


 別に疲れる事もないんだが、なんとなく立ち話って感じで落ち着かない。


 「気が利かなくて申し訳ありません、ではお茶も入れましょう」


 深々と頭を下げられるのも落ち着かないんだけど……丁度喉も乾いてきたので、礼だけ言って僕はテーブルとソファーを燭台の元まで運んだ。




 さて、お茶を飲みながら説明を再開する事になった。


 「では改めて、続いては能力値についてご説明いたします」


 「お願いします」


 寂しいステータス表の前にテーブルとソファーを引っ張ってきただけでは有るが、やはりこちらの方が落ち着ける。


 「まず、このステータス表にはマスターの今の能力値は含まれておりません。これからのマスターの成長を示していく物だと考えてください」


 なるほど、確かに身体0とか体力0とかじゃこうやって動き回れないからな。納得と言ったら納得だ。頷きで理解を示す。


 「はい、では各ステータスの説明をいたします」


 何だか色々と説明してくれたが、レベルの時の比ではないくらいに専門用語的なのが飛び交ったので、僕なりにまとめてみると……




 身体…身体能力のこと。接近戦、物理的な遠距離攻撃に必要で、また足の速さなどにも適応。


 気力…体力に近い。一般的なスタミナと考えて良い、またスキルの持続力などにも影響。


 生命…生命力。傷の治りや回復系のスキルに関係する。


 精神…心の強さ。魔法の威力などに必要らしい。


 魔力…気力の精神版。魔法系のスキルで消費する。


 拒絶…魔力障壁の強さ。身体と気力と拒絶を合わせた値で物理攻撃を、精神と魔力と拒絶を合わせた値で魔法攻撃を軽減・無効化する魔力障壁を展開するらしい。


 運…運。格率に作用する事に適応されるとか、よく解らん。




 てな感じだった。

 

 「取りあえず、各ステータスのおもな説明はこれくらいです。では、次に成長値の説明を……マスター?」


 「はひ?」


 しまった、噛み殺した欠伸を見咎められたようだ。


 「マスター、確かに説明を聞くのは退屈でしょうし眠くなるでしょう。しかし、これからのマスターには必要な説明です。どうかもう少しだけ私の説明をお聞きください」


 「う、ゴメン。退屈ってわけじゃないんだ。本当にすまなかった」


 「はい。では改めて成長値の説明に入ります」


 うう、夢だってのに微妙な眠気があるってどういうことだよ。


 妙なリアル感に苛まれながら、アルの説明を再び聞く。


 「こちらはそこまで難しい話ではございません。ただ各ステータスの隣のカッコ内が、次のレベルになった時に成長するステータス値である、と言う事です。たとえば、今のままマスターのレベルが上がると、各ステータスが一律1になります。」


 へー、次のレベルに上がるステータス値が解るのか、便利だな。


 「こちらの数値は、マスターの成長の過程で上がり方が変わります。称号やクラス、加護の有無でも増えたり減ったりしますし、ステータス値が一定の値を超えたりしても増えます。また、特別なアイテムを使っても上がる様です」


 私はまだ見たことは有りませんが、と言うセリフと共に、ステータスの説明は終わった。


 そこからは眠気が深刻になってきて、本当に流し聞きになってしまった。


 称号は、一定の功績を成す事で、ヴァルハラ側から勲章と共に貰えて、勲章を付けることで様々な特典がある。


 クラスは、その戦士の行いや強さなどの要素を合わせて導き出した二つ名の様な物で、これも種類によって違った特典がある。


 加護は、神や特定の精霊などから貰えることのあるもので、中々貰う事は出来ないが、貰えたならば、物によっては称号やクラスよりも凄い特典があるかもしれない、と言ったものだった。


 この後スキルの設定の話になったが、限界だったようで、どうにか断りの言葉を口にしてから、僕は睡魔に身を任せた。











 願わくば、校長の話が終わっていますように。



 説明って難しい><

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