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鈴木な太郎君は薔薇の都で戦乙女と輪舞曲を踊れるか?  作者: へたれのゆめ
火曜日 諦め二割絶望三割世界への呪詛五割半
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三時限目 アラゴジン


 「すいません、城の受付ってここで良いんですか?」


 城に入ってすぐの所に在ったカウンター(何だか城の玄関ホールって言うよりホテルとかのロビーみたいな広間だった)で訪ねる。三人詰めているが、どうやら三人ともヴァルキュリーみたいだった。


 「はい、こちらで間違えないですよ。本日はどのようなご用でしょうか」


 話しかけるまでは何かしらの話をしていたようだが、近づくとキチンと営業スマイルを向けてくれた。


 「あ、えっと、一昨日迷宮から出て来たんですけど、ここで何とかの登録をするそうで?」


 城での用事その一、城で試練終了の手続きをする。


 何でもここで試練の評価を受け取って、正式な戦士としての登録を行うらしい。その際、この世界での生活の諸説明を受けるらしいが、殆どの戦士は付人に説明を受けるため、説明は抜かして登録と評価を受け取るだけらしい。僕もそのつもりだ。


 「一昨日……承っています。召集番号206番の鈴木太郎様、付人はアルシリア・S・28でよろしいですか?」


 何かの資料を流し見ながら確認をする受付嬢。召集番号は知らないが、他の情報から僕の事だと判断できる。


 「間違いないです」


 「はい、では右手を出して頂けますか?」


 「?」


 言われた通り右手を出す。こんな説明は受けていないけど……


  ブゥオン


 「ヌエットゥッツ!?」


 何か出た、右の掌から、カード……みたいなのが。


 「……こちらは戦士の識別証になります。今後はこのカードがあなたの身分を証明する物になりますので、覚えておいてください。これ以降は出るように念じるだけで出せるようになりますし、破損すれば霧散して再び手から出せるようになります」


 そう言って出した識別証を銀色の鉄板に当てて何かを確認する。その後、一つ頷いて返してくれた。


 「はい、結構ですよ。今後は本人確認の際は必ず提示して頂く事になります。紛失の危険は有りませんが、予め覚えておいてください」


 「……分かりました」


 なるほど、何気に近代的だなヴァルハラ。


 その後何だか紙束を捲ったり書き物をしている様なので、手元のカードを弄りながら待つ。


 何だかよく解らない素材で出来たカードで、色は薄茶色っぽかった。表には僕の名前とアルの名前、僕たちの世界で有るらしいガイアの文字と、後はよく解らない数字が三つくらい書いてあった。その内の一つが206だったので、何かしらの番号とかIDとかそんな感じの物かと思う。


 「あっ」


 結構簡単にしなる事からそこまでの強度は無いみたいで、端と端がくっ付くまで曲げると、ついに折れてしまい、瞬間解けるように霧散した。


 最後まで触っていた指先を擦りつつ、先ほどのカードが出るように念じると、またしても掌からニョキッと出て来るカード。何だかマジックみたいで楽しかった。


 「お待たせしました、ではこちらが太郎様の成績になります」


 そう言って手渡された紙には、達成時間や討伐数、種類ごとの討伐平均時間など、ざっと七十項目くらいの項目が設けられていた。


 ハッキリと言って、どれが良くてどれが悪いのかよく解らないが、一番下の総合評価っぽいのがSになっている事から、おそらく良いのだろう。


 「太郎様は入界試練を最高成績で達成されましたので、勲章・初期訓練上位成績者が授与されます。集団イベントの中で手に入る勲章は、戦士の評価に直結する物なので、なるべく手放さないようにお願いいたします」


 そう言って薄い箱を手渡された。大きさは大体オーソドックスな折り紙位の大きさだろうか、留め金を外して中を見ると、美しい紋章が刻まれた勲章が収められていた。


 「……ありがとうございます。あのー、一つ良いですか?」


 「はい」


 箱を閉めて成績表と一緒に小脇に抱えてから続きを聞く。


 「この勲章って、今まで何人もらいました?」


 最高成績とか、自分が一番とか有り得ないから。あの幼馴染達や生徒会長とか置いといて一番とか有り得ないから。だって所要時間とか評価Eだし。


 「現在七百八十名が試練を達成している中で、九名が授与されています。太郎様で十個目の授与になります」


 「それはどんな基準で?」


 「総合評価がSだった方に送られています」


 やっぱりか。それはまあ、あれだよ? 各モンスターの平均討伐時間が多くて三秒、少なくてコンマ五秒くらいなので、問題なくすべてS評価。その他も、達成時間以外は大体B~Sなので、確かに総合はよくなるかもしれない。まあ、細分化するのなら、他がS+なら、僕はS-って感じだと思う。


 「ありがとうございます。話を遮ってすみません、続きをお願いします」


 「はい、では続いて地上での生活についての説明になりますが、こちらは受けていただかなくても構いません。いかが致しますか?」


 「付人から聞いているので大丈夫です」


 「分かりました、ではこちらは説明内容のマニュアルになります。原則として配っている物なので、お受け取りください」


 そう言って電話帳サイズの冊子を渡される。


 ……こんなに聞いたっけか?


 「それでは以上で登録を終了します。未来を戦う戦士に戦神の加護を」


 そう言って頭を下げる受付三人。小市民な僕としては、総じて美人な三人に頭を下げられる場面とかついていけません。


 と、言う訳で逃亡するように挨拶をして次の用事に向かうのだった。


 ……その十分後に、二階に上がる階段すら見つけられず、トボトボと会議室の場所を聞きに戻って来ることになるのだが……それはまた別の話。






 今僕がいるのは、通称学生会室……正確には戦士相互扶助協会本部、らしい。


 城での用事その二、戦士相互扶助組織の会合に顔を出す事。


 なんだか物々しいが、簡単に言えばこの異常事態に際して立ちあがった生徒たちの集まりであり、そのまま各学校の生徒会役員が運営している場所らしい。


 その役割は、ザックリというと言うと入界門から出てきた生徒の名簿作りと生徒同士の情報の共有を管理すること。戦士をサポートする場所が無い訳ではないのだが、そこはあくまで戦士の成長を支援する場所であり、こちら個人の精神的なサポートまでは請け負ってはくれないらしい。


 と言うわけで、今は二年と三年が持ち回りで当番を組んで入界門を見張り、出てきた生徒を確保してはここに連行してくるらしい。


 とは言え生徒会役員も戦士、迷宮に潜らないとならないので、ここに役員が居るのは夕方から夜にかけた約三時間だけらしく、朝方や昼ごろに出てきた奴らは待たなければならず、彼らが帰った後に出てき奴は先に受付に行って、後日出直しらしい。


 もちろん僕はちょうど彼らが帰ってくる時間に合わせて来たので、待つなんて事はせず、どうも長い時間待たされたであろう生徒二人とともに学生会の役員たちと面会をすることになった。




 「皆さんお待たせして申し訳ありません。私が戦士相互扶助協会会長……なんだかくすぐったいですね、緑野茶市立深野高等学校生徒会長の火口蓮花(ひぐちれんか)です。ここに来る前にギリギリで生徒会長挨拶をしたので、深野高校の生徒で校長先生のお話でも寝ていなければ、おそらくは一年生でも知っているとは思いますが……ふふっ、そんなに慌てなくてもいいですよ? あの方のお話は少々長いですからね。それに今まで知らなくてもこれから知ってもらえれば問題はありません。この過酷で辛い生活を共に支えあえたらと思っていますので、どうか生徒会に協力してくださいね」


 「「……」」


 長い黒髪を背中に流した美少女だ。すっきりとした目鼻立ち、透き通るような肌の色、バランスの取れた完璧なプロポーション……きっと世の男共の理想を平均して二段階くらいバージョンアップすればこんな風になるだろう。


 深野高校生徒会会長


 嘘か真かは知らないが、どこぞの華族の出身らしく品行方正を絵に描いたような人柄で、それでいて人とのコミュニケーションに秀でていて、先ほどのような茶目っ気のあるフォローもしっかりとできる人物だ。一言で言い表すならヤマトナデシコ……だろうか?


 そのパーフェクトぶりから一年の時からファンクラブがあったらしく、今では学校内外問わずに数百のファンが居るとか居ないとか……多分いるんだろうな。



 

 彼女の後ろには、おそらく各学校の生徒会長やそのほかの生徒会役員が控えていた。見たところ各委員会の委員長もいるように見えるが、ここに居を構えるにあたって合併でもしたのかもしれない。その中にはとても顔なじみの人もいたのだが、挨拶は次の機会にでも回しておいた方が良いだろう。


 「所で……皆さんはこれからの身の振り方を決めていらっしゃいますか?」


  ふりふり


 「「え?」」


 せっかく気を利かせてこの場を流そうとしているこちらの配慮を、控えめながらも手を振るという暴挙で台無しにしてくれた先輩は置いておくことにして……僕以外の二人がとぼけた声を出して固まっていた。まあ、今の流れでその言葉が出るとは思わないだろうから仕方ないと思うけど。


 「身の振り方です。こんな状況ですので、できれば集団行動……生徒会の管理のもとで、クラス単位で行動してくれたら嬉しいのですが……事が今までの常識からかけ離れた状況なので、今は各自での意思で行動してもらっています。友人のグループから部活動単位、四つほどは丸ままクラス単で行動しているようですが、個人で行動している人も多くいます。皆さんに頼る当てや個人での行動を望む気持ちがあるのなら別ですが……もし当面の予定がなく、迷うようでしたら、生徒会で運営しているギルドに加盟していただければと思いまして」


 どうやら勧誘の様だった。


 ギルドとは、戦士同士が集まったグループで、ギルド専用のクエストや来月に控えた抗争戦などで用いる単位らしい。


 本当は互いを認め合った仲で組まれる、戦士の間では中々に神聖な間柄らしいが、生徒会は集団行動を推奨しており、一人で行動するには余りに行き成り来てしまったため、皆まとまりと繋がりを求めてギルドが乱立。今では五十以上のギルドが在るらしい。


 その中で最大のギルドが、生徒会運営のギルド、《トライデント》らしい。何という厨二……とも思うが、こんな中だ、多少は厨二臭く無ければやって行けないだろう。ちなみに命名基準は三校でまとまったからとかその辺だと思われる。


 ちなみに幼馴染達が作ったギルドは《スクエア》と言う名だったりする。


 ……あいつら、僕が入る事前提で作ったよな、絶対。




 その後、僕以外の二人は考える時間が欲しいと言う事で返事を保留し、僕はすでに誘われていると言う事で丁重に断った。


 その回答に何人か表情が動いたが、殆どはもうそう言った約束をしたと言う辺りで驚いたのだろう。反応としては彼ら二人の方が正しい。


 話自体はそれだけで、後は談合と言う名のお茶会にしばらく付き合ってから場を辞した。緊張でお茶を七杯もお替りした二人に気を使ったと言うのもあるが、何だかんだで出たばかりの生徒には聞かせられない話もあるのだろう。なんだか段々と居心地が悪くなってきたのでそそくさと退散するに至ったという話だ。


 その後、その二人と一緒に外に出ようとして再び城の中を迷い、一時間ほどして先ほどの受付嬢に保護されたのもまた別の話。と言うか黒歴史の浅い層に安置する運びになると思う。












 「彼があの人たちの待ち人ですか……面白そうですね?」


 飛ばすつもりの場面でしたけど、なんだか筆が進んだので掲載。いくつかの説明も含めてお送りしました。

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